「社長の坊やから孤児に転落」パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女 ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
社長の坊やから孤児に転落
タイトルや予告編映像から韓国版ベイビー・ドライバーを期待していたのだが、派手なカーチェイスはおもに冒頭ぐらいで、田中裕子似のパク・ソダムが年がら年じゅう運転しているというわけではなく、以降のドライビング場面もけっこう小ぢんまり感はある。しかし、あっちはロックに載せてオシャレなエドガーがライトに作ってる(でもすごい好きなんで)一方、こっちは次第次第にボッコボコ、ドッロドロの韓国映画の味付けが濃くなっていって、十二分におもしろかった。
華奢なからだで軽口をペラペラと叩き続けいやらしく残忍にふるまう悪徳刑事役のソン・セビョクは、観てるこっちがマイナスドライバーで突き刺してぶっ殺したくなるほどの好印象。予算がもっとあればファン・ジョンミンがやっていそうな感じ。警察がこんなクソ組織として描かれるのって、自らの不勉強もあって近年の日本映画じゃあまり知らないのだけど、やはりお上には盾突かない我が国と軍事独裁政権から民主化した隣国との国民性の違いなのだろうか。
エンタメ作品であっても、戦時中なんだからマストでしょと言わんばかりに脱北者設定を突っ込んできていて、日本国内じゃ絶対撮れないカーアクションはもちろん、終盤の事務所内での格闘シーンも緊迫感があり、概ねよくある展開のなかで予定通りの人物が死んでお定まりのラストを迎えるとはいえ、これを109分でまとめる韓国映画のクオリティはやはり高い。
原題の英語タイトル、スペシャル・デリバリー⇒パーフェクト・ドライバーはともかく、成功確率100%の女って副題はさすがにダサすぎ・余分すぎだろう。