「“It's you, MARIO!!”」ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
“It's you, MARIO!!”
アーロン・ホーバス監督、マイケル・ジェレニック監督作品は初見。スーパーマリオ 魔界帝国の女神観賞済。
マリオシリーズはマリオブラザーズ、スーパーマリオブラザーズ、スーパーマリオブラザーズ3、スーパーマリオランド、スーパーマリオワールド、スーパーマリオランド2 6つの金貨、ドクターマリオ、マリオのピクロス、マリオのスーパーピクロス、スーパーマリオRPG、スーパーマリオカート、スーパーマリオ64、マリオパーティ、マリオカート64、スーパーマリオサンシャイン、スーパーマリオギャラクシー、マリオカート8 デラックスはプレイ済。
その他のシリーズはドンキーコング、ドンキーコングJR.、スーパードンキーコング、ディディーコングレーシング、スーパーマリオ ヨッシーアイランドプレイ済。
スーパーマリオUSA、ルイージマンション、New スーパーマリオブラザーズ Wii、進め! キノピオ隊長、スーパーマリオ オデッセイはPVくらいの知識はある。
あのスーパーマリオブラザーズが3DCGとして久々に映画化すると聞き、任天堂が最新ゲームソフト情報を直接届けるNintendo Directで生みの親の宮本茂さんが制作状況を伝えてくれるのを見て期待値がどんどん上がり、先行で公開された北米での評判や興行成績がうなぎ上りなのを知り、こんなにハードルが上がった状態で名作映画だと思って観に行くよりも全年齢楽しめるエンターテイメントムービーとして観に行こうと思い、普段はあまり行かない日曜日の昼帯に観に行った。
観に行った結果、想像通りの全年齢楽しめるエンターテイメントムービーでありながら、ここからマリオシリーズのどの作品に入ってもすんなりプレイ出来る入門作としての出来の良さと想像以上の任天堂愛の詰まった、ゲーム原作映画の一種の成功例でありながらマリオシリーズだからこそ出来た特殊例にも思えた。
ストーリー的にはシンプルでありながら様々な舞台を巡っていくことや、背景に散りばめられたマリオシリーズに限らない任天堂作品のイースターエッグの数々を探せる楽しみ方があることで、94分という短めの上映時間ながらゲーム一本分プレイしているような盛沢山な印象になってたと思った。
マリオのゲーム性は”何度も死んで覚えていく死に覚えゲー”(主に初期が多め)で、ゲームではマリオにプレイヤーの分身としての存在を担わせるけれど、この作品ではマリオが”幾度失敗しても諦めない”ことで観客がその分身なんだ(上映前の特別映像のような“It's you, MARIO!!”)と思わせるような、ゲームでのマリオにそこまで背景が無いからこそのこの作品の作り方に感じた。
個人的にはその部分はその部分で主人公であるマリオ自身の動機付けをどうするか気になってたけど、血の分けた弟であるとともに既に定職に就いていたルイージを巻き込んで会社を興したって一本筋が通った動機が出来ていて、子供は気にしないだろうけど大人も共感出来るものになっていたと思う。
自分だけかも知れないけれど、マリオの両親や親戚はゲームでは見たことなかったのでマリオの父親と叔父さんが『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』でのマリオとルイージに見えて、過去の実写作品もリスペクトしてるように思えた。
個人的にはスタッフロールでは劇中挿入歌だったり制作会社などのロゴが出てくると(そろそろ終わりかな…)と思うけど、この作品ではタイムアップが近い時に入るゲームでの演出を取り入れてるのが最後まで面白かった。
最近は開場時間にフードを買いに行っても上映開始に余裕で間に合うような状況ばかりだったけれど、この作品は開場時間から買いに行くと上映開始に間に合わないくらいの大行列が久々に出来てて『トップガン マーヴェリック』のような劇場に人を戻す作品のひとつとして今後語られるんじゃないかとも思った。
劇場でおそらく映画を観るのが初めてであろう子供たちがキャラクターたちにリアクションを取り、歓声を上げているのを聞いていて、この映画が映画の原体験になることで今後配信まで待つんじゃなく積極的に映画を観に行くようになってほしいなと思いながら、自分の原体験だった『ゴジラ VS モスラ』を観に行った時の事を思い出した。
監督が宮本茂さんや他のゲームクリエイター、マリオシリーズや任天堂の作品に最大限のリスペクトをしてくれてるからこそストーリー性よりもゲームの手触りを重視した出来上がりになってる気がしますね。
また、全体の構成バランスの巧みさや昨今の社会事情もさりげなく取り上げている部分など、後々アカデミー賞受賞作を作れる手腕があるんじゃないかと期待しています。