劇場公開日 2023年8月25日

  • 予告編を見る

「カタルシスを感じられない社会派サスペンスの醍醐味」あしたの少女 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0カタルシスを感じられない社会派サスペンスの醍醐味

2024年2月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

怖い

監督と脚本は『私の少女』のチョン・ジュリ

二部構成
前半キム・ソヒ視点
後半オ・ユジン視点

実話が元になっているらしい

粗筋
担当教師の勧めで職場実習は始めた高校生ソヒ
勤務先は大手通信企業の下請けコールセンター運営会社
あの手この手と顧客の契約解消をおもいとどまらせる業務
ブラック企業だった
上司のチーム長が自殺した
ソヒは職場環境や仕事内容が辛くなり会社を無断欠勤
学校と会社の板挟みで自殺した

すっかりクールな刑事役が板についてきたペ・ドゥナ
自分は『吠える犬は噛まない』や韓国版『ドラゴン桜』のようなコミカルな芝居の方が好きなんだが
叱る上司に激しく熱く反論するシーンは好き
でも頭に来たからと言って捜査中に教師を殴ってはいけない
あれはマイナス演出
じっと耐えるべきだった

2人は同じダンスサークルに所属していた

主人公は高校生だが堂々と飲酒をしている
大人は誰も注意しないし普通に提供する
韓国では19歳からOKで高校生でも最上級生で誕生日を迎えると19歳になるらしい
お国の事情が違う
海外の作品は予備知識がないといろいろと強い違和感を感じてしまう

韓国の映画やTVドラマをよく見る人たちにはすっかりお馴染みの「チーム長」という表現だがそれが大きな言葉の壁になっていてわかりにくい
細かい理屈はもういいからそろそろ部長か課長と表現するべきだろう
韓国語の翻訳家は戸田奈津子と違い変な拘りを持っているようだが翻訳を職する者なら「チーム長」こそ誤訳であり誤魔化しである

韓国作品であるよく見かける「クソアマ」っていうのもなんだかなあ
誤訳じゃないのかな
現代の日常的な日本語に訳さないと

自殺を自死と表現しろというと遺族側?の動きも正直かなりの抵抗感はある
言葉をいくら変えてみたところで世間一般の「命を粗末にした」からそれでもって「社会の犠牲者」とか「尊い選択」などに変換されることはないはず
遺族からすれば「なぜ死んだ!馬鹿野郎」が本音だろう
「自死」という言葉を持って特にネット民に釘を刺すつもりかもしれないがそれで遺族が少しでも救われるとは到底思えない
映画.comや映画会社はそっち側のようだ
申し訳ないが自分は協力できない
子供の頃から今でも言葉狩りは嫌いだ
言葉狩りする側が優等生でそれに抵抗する者が劣等生だとしても
抗議する側が必ずしも正しいとは思えない
いまだにベイスターズを大洋ホエールズと言ったりヤクルトスワローズのことを国鉄という人は少なからずいるがそれとは違う

ソヒの母が娘の死に文字通り泣き崩れる芝居が印象的
まさしく泣き崩れた
あまりのショックに腰が抜けてとても立ってられない
彼女のあれだけで涙が溢れた
日本の女性俳優がああいう芝居をしているところをあまり観たことがない
シチュエーションとかいろいろと違うが『家なき子 希望の歌声』でバルブランママを演じたリュディビーヌ・サニエの熱演を思い出した

配役
自殺した女子高生キム・ソヒにキム・シウン
ソヒの自殺を捜査する刑事のオ・ユジンにペ・ドゥナ

野川新栄