「隣国の話ってわけじゃなし」あしたの少女 ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
隣国の話ってわけじゃなし
ブラック労働現場の闇は調べてみれば一企業の話に留まらず、世の中の制度や構造全体へと広がっていく。高校生なのに酒飲みすぎのソヒの心の傷みはアルコールに漬けたぐらいじゃ止まらない。
組織や社会の側がさまざまに個人を抑圧し、人の命を前にしてもことなかれ主義は貫かれ、目標やら成果やら「漁師とビジネスマン」のジョークのように、みんながなんのために数字を追いかけているのかよくわからなくなる。ペ・ドゥナが本庁の事務方から所轄警察の刑事課に異動させられたのは、警察内部の同様の何かが理由であり、それゆえ執拗に事件を追いかけているのだろう。
読んだばかりの太田愛の新作『未明の砦』も労働問題の話で、希望をもって物語は終わる。本作は残念ながらファンタジーとはならず、ダンスのキメで必ず失敗していたソヒが完璧に踊っているのが過去の動画の中というのが悲しい。
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