「彼女のダンス」あしたの少女 にょいりんさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女のダンス
この映画は前半の高校生ソヒと後半の刑事ユジンの2パートで構成されている。
映画はソヒが一人でダンスをひたすら練習する場面から始まる。
イヤホンで音楽を聴きながら汗だくで必死に踊り、失敗して少しイラついてもすぐに立ち上がって踊り続ける姿に静かな迫力があり、そこから一気に引き込まれる。
前半パートのソヒが実習に行くコールセンターがありえないぐらいのブラックぷりで、そんなのありえないだろうと思っていたら実際の事件を忠実に再現しているとの事だったので驚いた。ソヒは数値と競争が何よりも優先される韓国社会の構造に追い詰められていく。その要因の一つがソヒの芯の強さと短気さで、違和感を訴える重要だけど、その方法としての怒りだけでは問題を解決できないと感じた。
後半パートは刑事ユジンがソヒの死を社会構造の問題として糾弾しようと苦闘する姿が描かれる。ユジンが死んだソヒの周辺の人々に話を聞き取りする事によって、前半パートのソヒの存在が重層的に浮かび上がってゆく。
そして、ユジンはソヒという存在を押し潰した構造への怒りと、その構造の巨大さに絶望を感じ始める。この感じはドラマ「エルピス」を少し思い出した。
最後まで気分がスッキリする映画ではないけれど、ラストシーンのソヒが生きたという輝きに一筋の希望を感じて泣いてしまった。
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