劇場公開日 2023年8月25日

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「前半と後半で物語の視点が変わる」あしたの少女 shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前半と後半で物語の視点が変わる

2023年8月20日
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鑑賞方法:試写会

「あれ?これドキュメンタリーだっけ?」と錯覚するようなファーストシーンから、心情を煽る音楽を極力抑えた演出で、じっくりと主人公にフォーカスしていきます。

センターの成績が…
みんなのノルマが…
学校の信用が…
あたかも自分が周りに迷惑をかけている異分子のような扱いを受け、かと言って
黙ってお金の為と割り切ることすら出来ない、八方塞がりの状況。
でも、そんな同調圧力を仕掛けてくる奴らは、たいがい自分の保身の為だったりする。結局は汚い大人たちによる搾取に他ならない。

後半は思わぬ社会の闇へと、芋づる式に繋がっていきます。
本来ならセーフティーネットになる筈の仕組みが機能していない現実が暴かれていき、これでもかという負の連鎖に、どこか一つでもストッパーになれていたら…と思わずにはいられませんでした。
そして、刑事が介入することに批判的な組織も闇が深いです。。。
最後の砦まで腐ってることに戦慄しました。

私にとってペ・ドゥナちゃんは永遠の少女なんですよね。
刑事役もすっかり板についた女優さんに対して失礼かもしれませんが、どうにも当時の少女が見え隠れする。
でも、やっぱりそこが彼女の強みというか魅力だと思うんですよね。
くたびれた大人になってしまってはいても、心の内にかつての少女を宿している。
ユジン刑事がソヒの思いを辿るように、同じ足跡を辿るシーンが印象的です。
かつて同じ光に誘われた側の人間であることが伝わる演出が素晴らしい。
ラストは涙なくして見られませんでした。

“ヒヤリハット”という言葉をご存知の方も多いかと思いますが、ついうっかりしていて「ヒヤリ」となったり、ミスに気づいて「ハッ」としたりするイメージで、事件や事故の一歩手前だった状況を表しています。
「1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件の異常が存在する」と言われておりまして、“異常”にあたるのがヒヤリハットなのですが、これを「事故にならずに良かったね。」で終わらせず、きちんと分析して再発防止に努めることが本当の事故の防止につながるという考え方です。
前置きが長くなりましたが、つまりソヒの後ろには300人の見えないソヒがいるのだと感じました。
みんな何かしら心に歪みを抱えている。
ソヒの友達だってソヒを心配していたけれど、いつソヒ側になってもおかしくない。
みんな自分のことで精一杯で、両親ですらソヒと向き合う余裕がない。
少しずつ悪いタイミングが合ってしまって、最悪のことが起きてしまった。
既に事故は起きていたのだから、絶対に「無事で良かった」で終わらせてはいけなかったのだ。
実際にあった事件が基なので『トガニ』を思い出しますが、社会派だけどきっちりエンタメなところが本当にすごい。
『あしたの少女』も社会派ですが、刑事モノとしても楽しめます!

shiron
shironさんのコメント
2023年9月2日

Mさん、コメントありがとうございます。

実話と言うと語弊があるかもしれませんが
2017年に起きた事件をモチーフに作られたようです。

shiron
shironさんのコメント
2023年9月2日

chikuhouさん、コメントありがとうございます。

ご覧になったのですね。安心しました。

一人でも多くの方に映画を見て欲しい一心でレビューを書いていますが、実際に私のレビューを読んで映画を観る方を前にすると「大丈夫だったかしら?」と、とても不安になります。小心者なんで。笑

shiron
Mさんのコメント
2023年8月26日

実際にあった話なのですか?

M
Mさんのコメント
2023年8月26日

ペ・ドゥナさん。「リンダ・リンダ・リンダ」のソンさんのイメージが未だに抜けません。
いい俳優さんですね。

M
chikuhouさんのコメント
2023年8月25日

いよいよ公開、を待ち望んでいました
ぺドゥナさん、この監督とのコンビだった「私の少女」とタイトルが似ているところに、日本の関係者の思いがあるのでは、と勝手に想像しています
「私の少女」は警官役で、封建的な「伝統」に苦しむ話でしたが、本作の背景も、産業界の悪しき「伝統」といえるものでしょうか
隣国でありながら知らない事も多く、また自国の悲痛なことを伝えようとする監督の勇気にに脱帽です  Shironさんのコメントを読んで、楽しみになりました

chikuhou