劇場公開日 2023年8月11日

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「故郷とは遠くにありて想うもの」ソウルに帰る かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5故郷とは遠くにありて想うもの

2024年2月10日
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韓国人のソウル・フードがキムチならば、日本人は味噌汁といったところだろうか。韓国系アメリカ人のスティーブン・ユアン曰く、イ・チャンドン監督『バーニング』に出演したことで、自分が“恨(ハン)の民族”であることを再認識したらしい。何を言いたいのかというと、この映画韓国の首都“ソウル”と魂の“ソウル”をかけた映画タイトルになっている気がするのだ。

本作を監督したダヴィ・シューはカンボジア系フランス人の40歳、悪名高いクメール・ルージュの虐殺を逃れてフランスに連れて来られたという。本作が映画初出演となる主役のフレディを演じたパク・ジミンは、子供の頃家族でフランスに移住したという。お二人とも、朝鮮戦争から疎開するためフランス人夫婦に養子縁組された主人公フレディとは、若干異なったプロフィールの持ち主で、監督のお友達がフレディのモデルロールになっているらしいのだ。

やたらたと“○年後”のクレジット表示が出るせいで映画のリズムが非常に悪くなっているのだが、フレディの成長に合わせて一応の3部構成になっている。第一部では、日本行きの飛行機が台風でキャンセルになったせいで急遽ソウル行きに変更したフレディが、新しい家族をもった父親宅に招かれる。それから数年後、第二部では武器メーカーに就職したフレディが出張でソウルを再び訪れる。頑なに面会を拒否していた母親が態度を急変し涙の面会を果たすのが第三部である。

な~んだ『国際市場で会いましょう』と同じお涙頂戴映画じゃない、と早とちりしてはいけない。このフレディ、血の繋がった肉親特にやたらと涙脆い父親を目茶苦茶毛嫌いし、「韓国に戻って一緒にすまないか」と父から提案を受けても、「私はフランス人よ💢」と怒声を発してこれを拒否するのである。涙の再会を果たしたはずの母親とも予想に反する別離を経験し、なんのための韓国訪問だったのかがちと観客にはわかりづらいのだ。

韓国に一度も住んだことのないスティーブン・ユアンが、ハリウッドにいると韓国人であることを痛切に感じさせられたように、現地を訪れたフレディは(血縁とはまた別の)韓国人としての“ソウル”を、何かしら肌で感じ取ったからではないだろうか。具体的には、韓国の懐メロであったり、韓国男の肌であったり、隣家のばあちゃんが作ってくれた大根キムチだったりするのだが、劇中ハッキリとした説明は特にない。

ラスト、バックパッカーとして一人東欧のどこかを旅するフレディが、宿泊先のホテルでふとピアノを奏でる。韓国にいた頃の小さい時の思い出なんか何一つ憶えちゃいないし、滞在中はウザイことばっかりで全てをぶっ壊してやりたかったけれど、いざこうして離れてみると強烈な郷愁にかられるのはなぜなのかしら。故郷とは遠くにありて想うもの、なのである。

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かなり悪いオヤジ