ピンク・クラウドのレビュー・感想・評価
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ここ2、3年の現実がすっかりフィクションを超越してしまったことを逆説的に痛感させられる
空にピンク色の雲がふんわりと浮かぶ。その光景だけ切り取るとポップなファンタジーのようにも見えるが、しかし人はそれに触れると、ものの10秒で死ぬという。かくも不条理なギャップをたたえつつ本作は、ピンク色の陽光に包まれながら淡々としたタッチの室内ドラマを紡いでいく。実際のパンデミックを経験済みの我々はきっと作品の端々にデジャブを抱くはず。ロックダウンが続く中、徐々に家族の形や関係性は変化し、その人の個性や考え方まで変わっていく苦しみも共感できる。驚くべきことに本作の脚本は2017年に書かれ、撮影そのものも19年に行われたとか。つまりかなり予言めいた作品なのである。それはそれで凄いことだが、「そうそう!」と思えるリアリティはあっても、物語に欠かせない斬新な驚きやビジョンがやや足りない気も。我々の暮らす現実の方が、この数年でフィクションの域を遥かに飛び越えてしまったことを痛感させられる一作である。
コロナ禍の前に作られたロックダウン映画。今注目されるのは吉か凶か
謎めいたピンク色の雲が発生し、その強い毒性はわずか10秒で人を死に至らしめる。運悪く外に出ていた大勢が命を落とし、室内にいた残りの人々は窓を閉め切って閉じこもる生活を強いられる。2023年にいる誰もが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に伴うロックダウン生活を思わずにはいられないが、本作の脚本は2017年に書かれ、2019年に製作されたものだという。
ストーリーは、出会ってすぐに一夜を共にし、翌日にピンク雲により閉じ込められた男女を中心に進む。閉じられた空間で長い年月を過ごすことを強いられた他者同士が、どのように状況と折り合いをつけていくのかを描くことに重きが置かれている。
相対的に、実際にそのような状況になったらインフラは維持できるのかとか、ガスマスクや防護スーツが大量生産されて外出できる人々が増えていく可能性など、科学的な観点での検討や掘り下げが足りないように感じられた。設定だけ聞くとSF作品のような印象を受けるが、フィクションが優勢でサイエンスの要素が弱いのだ。
製作は2019年と書いたが、初上映は2021年1月のサンダンス映画祭とのこと。つまり、パンデミックがなければ注目されないままお蔵入りになっていた可能性もあった。5月にコロナの位置づけが2類相当からインフルエンザと同じ5類に下げられるなど、ようやくアフターコロナの局面に向かいつつある日本に限って言えば、公開時期はやや不運だった気がする。気ままに出かけたり人に会ったりできない暮らしが延々と続いた後で、お金を出して映画館で閉塞感を追体験したいとはなかなか思えないのではなかろうか。
【触れると10秒で死ぬピンクの雲に依るロックダウンの中、人々の適応力と現実逃避や絆を求める姿を、現況下の状況と重ね合わせて観てしまう作品。】
ー 冒頭、”本作は2017年に構想され、2019年に撮影されたというテロップが流れる。
だが、今作はどう見ても製作側の意図ではないにしろ、現況下を想起させる。
そして、明日からマスク装着の緩和が始まる・・。-
■物語は一夜を共にしたばかりのジョヴァナとヤーゴのカップルの生活にほぼ限定されて、映し出される。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・ジョヴァナは向かいのマンションの男が、窓に”ピンクの雲には殺されない”と書き、窓を開け自ら身を投げるシーンを見る。
・当初はジョバナは子供は要らないと言っていたが、長引くロックダウンの中、男児リノが誕生する。
ー ジョヴァナとヤーゴは、生きる望みを得たかったのだろうか。それとも、2人だけの閉鎖された空間での生活に、危機感を抱いたのであろうか。-
・二人はそれぞれの家族、知り合いとはビデオ通話となり、必要物資はドローンで届けられる事になる。
ー 正に生活スタイルの激変である。今作と20年春からの現況下との相似性に驚く。-
・リノはどんどん成長し(7歳くらいだろうか・・。)、ジョヴァナの誕生日に、ヤーゴとVRヘッドセットを送るが、ジョヴァナは仮想現実の世界にのめり込んでいく。
・一方、ヤーゴは現状に諦観を持ちながらも適応していく。
ー 認知症になった父親とのビデオ通話は辛いが、彼はそれを受け入れ父とのビデオ通話を止めるのである。-
<今作は、イウリ、ジェルバーゼ監督が、ロックダウンの中で生きる人々の姿を抑制したトーンで描いている点が、奏功している。
ラストのジョヴァナの行動には、私は賛同しかねるが、あの行動に至る心境はコロナ禍を経験しているからこそ理解できるのである。
今作の作品設定と20年春からの現況下との相似性に驚いた作品である。>
<2023年3月12日 刈谷日劇にて鑑賞>
奇跡の映画
コロナという現実が起こってしまったことで、その現実との類似点や相違点を鑑賞者は意識せざるを得ません。そうした語り口の俎上にあげられることになるとは、制作の時点では誰も思いもしなかったことでしょう。現実の世界との予期せぬシンクロを余儀なくされた、奇跡の映画と言えましょう。コロナの現実がなかったとしたら、この映画はどう観られることになったのか。それを想像すろのも、この映画の味わい方のひとつかもしれません。
閉塞、絶望感を追体験
家屋は完全に密閉ではないだろうし、インフラのメンテナンス、ゴミ処理なんかはどうしているんだろう?会社か工場に缶詰なんだろうか いろいろツッコミどころ満載。ケジメないまま一緒になったので、その後の生活も余計にダラダラ感が...他にやる事無いの?この人達と思ってしまいました 子供はやっぱり適応良いですね ラスト呆気ない
コロナ前に制作とのことでそこは評価
ブラジル映画は初鑑賞!?
そう言えばコロナ禍をテーマにした作品はまだタブーなのか?10秒で死んだら草木は枯れ穀物 動植物 魚もみな死を遂げさあ残った人はどうする的な緊張感あるサスペンス劇場かと思ったがそっちでは無く引きこもり生活をする人々の物語で個別に話は繋がっておらず中途半端で観てて退屈 普通の作品で色々なブラジル映画を観てみたい❗
考え切れていない想像の産物
コロナ禍の前に、こういう閉じ籠り生活を考えたのはよし、その試みは買うが、実際のロックダウンの生活を体験した我々は、こういう場合は誰が食料を作り、誰がそれを運ぶんだとディテールまで設定を求めてしまう。霜や霧ならともかく雲ならかなり上空だろうとか、コロナより厳重な密封は無理だろうとか、宇宙服みたいのが開発されないかとか色々考えてしまう。結末もそれしかストーリーの終わり方はないだろうという残念なエンディング。どうせやるなら、滅茶苦茶ヒステリーを起こしたり、滅茶苦茶エロエロにしたほうがまだ面白かったかもしれない。
23-016
コロナ禍の緊急事態宣言下の境遇を思い出すとヒロインの心の崩壊は理解できる。
ましてや7年以上も外出できないストレスと苦悩は尚更のこと。
現実を平穏にゆっくりと鈍感に受け入れられる心と、敏感に些細まで見たい知りたいと思う気持ちは相容れない。
どちらも素晴らしいが、悲しい選択だけはして欲しくない。
メリバじゃないかな
単純で淡々と進んでく。SFスリラーというには…うーん…って感じ。色々ツッコミたい所があったかな。
ヤーゴとリノが雲世界に適応していくのに対して、ジョヴァナだけずっと元の世界に拘り適応出来ずにいたのがコロナの時との既視感を感じた。だからこその最初の説明だろうけど。
映像がお洒落で撮り方にセンスは感じた。
To be hanged on a fair gallows.
真綿で首を絞められるって言葉のそのもののような…。
残された道は現実に殺されるか空想に狂うか、か。
例えば結婚して関係が変わるなんか話があるけど、
結局は人との関わり方や価値観の違いを理解できるか、共感できるかを考える。
理解と共感って近いようで全く違うくて、
自分の現実に起こったら死んでも1人になりたい気がする。
映像がとても綺麗で、
特に窓の外の景色はマグリットの絵画みたいに静寂で現実味が無く美しくて。だからこそ残酷で。
冒頭、静寂から始まる残酷さと音楽の入り方がとてもかっこよくて好きだった。
To be hanged on a fair gallows.
美しい絞首台で縛り首にされる。
23-016
コロナ禍の緊急事態宣言下の境遇を思い出すとヒロインの心の崩壊は理解できる。
ましてや7年以上も外出できないストレスと苦悩は尚更のこと。
現実を平穏にゆっくりと鈍感に受け入れられる心と、敏感に些細まで見たい知りたいと思う気持ちは相容れない。
どちらも素晴らしいが、悲しい選択だけはして欲しくない。
ロックダウン生活の疑似体験
紹介サイトで興味をもったものの、公開初日のレビューは芳しくなく、不安なまま鑑賞してきました。そして、その不安は的中しました。
ストーリーは、触れた人間をわずか10秒で死に至らしめる強い毒性をもつピンク色の雲が突如発生し、そのとき一緒にいたヤーゴとジョヴァナはそのままロックダウン生活を強いられることになり、それが一向に解除されないまま何年もの月日が流れる中、二人の関係がしだいに変化していくというもの。
序盤は、得体の知れない雲のせいで、自宅から一歩も出られなくなった生活が描かれます。食料や必要な生活物資は、窓に開けた専用のダクトから配送されるという、新たなインフラ整備がされる様子が描かれ、以降の生活が成立する舞台設定を整えていきます。確かに、今の世の中、ネットショッピングで入手できるものだけで、外出せずともたいていは事足ります。
とはいえ、そもそも商品の製造元はどうなっているのか、ピンクの雲はこの一帯だけの問題なのか、状況を伝えるニュース番組のスタッフはどこにいるのか、窓を閉めた程度で生活できるのなら防毒マスクがあれば問題ないのではないか、などと次々とツッコミたくなる気持ちが湧き上がります。しかし、そこに触れると作品が成立しなくなるので、考えないことにしました。
その後も、ヤーゴとジョヴァナの二人の生活が描かれますが、子どもが産まれることぐらいしか大きな変化がなく、映像も自宅以外の場所は映らないので変わり映えがなく、観ている観客もロックダウン生活の閉塞感と退屈さを味わうことになります。ひょっとしたら、これが制作側の意図だったのかもしれません。
最後にはきっとピンク色の雲の原因やそこに隠された意味が明らかになり、「そういうことか!」と納得させられるのだろうと思っていましたが、本作はそういう作品ではありませんでした。自宅という檻から出られなくなった人間はどうなるのか、根源的欲求やエゴがあぶり出されるのか、潔く全てを受け入れて前向きに生きるのか、現実逃避や自暴自棄に走るのか…。そこに明確な答えはなく、「あなたならどうする?」と問い続けているような作品でした。
今となってはつっこみどころ満載になってしまった
企画、撮影時にはこんなことになるとは思わなかっただろうなあ。
パンデミックがなければ、SF風暗喩の哲学的映画だったろうに。
コロナ禍で社会がどういう風に変化したか、人々のストレスはどう表れるか、私たちは見てしまったから。こうはならんだろ、これはもっと深刻だろ、みたいな問題点、見てる側の方が詳しいので、どうしてもつっこみたくなる映画になってしまった。
映像はきれいだし、構成も、こうなるかこうくるか、と面白いんだけど。残念
パンデミックが生んだ作品
SFでもミステリーでもホラーでもなく新型コロナのパンデミックによる外出規制や自粛生活=ピンククラウドとして描いたドキュメンタリーに近い。
あえてモキュメンタリーと書かないのはモキュメンタリーのような展開の驚きやドラマ性などがなく淡々と人々の生活を描いているから。
良くも悪くもパンデミックがあったからこそ誕生した映画。
タイムリーとは思うけど。
偏見だけどブラジルのニュースとかみるともっと激情的な展開かと思った。リアルな展開と思うけどもう少しフィクションらしい描き方もあったんじゃないかなー。閉じ込められた大人達とロックダウン下に生まれた子供の対比ももっとくっきり表現してたら面白かったかも。淡々過ぎて物足らず。
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