劇場公開日 2023年1月13日

  • 予告編を見る

「この映画を作ったすべての人々に100億点!!」SHE SAID シー・セッド その名を暴け 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0この映画を作ったすべての人々に100億点!!

2023年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

あのTwitter上で一大ムーブメントとなった
#me too 運動の発端となった
ニューヨーク・タイムズ紙の報道が
如何に困難な取材のもと実現したのか?

ハーベイ・ワインスタイン氏の悪業だけでなく
レイプや性的暴行に対する法律や社会システムの理不尽さにも
言及した本作!

選挙の前にトランプのパワハやセクハラの実態を報道することで
社会問題にしようとしてきた女性新聞記者に
新たなる取材対象としてハリウッドでの
セクハラ事件の噂が飛び込んでくる。

調べて行くうちに、ワインスタイン氏の
セクハラ事件をもみ消すために多額の賠償金を
ミラ・マックスと言う会社の金で払い
その見返りとして事件の一切を他言しないと言う
誓約書を書かされていた被害女性たち。
それはセクハラの上にパワハラを上乗せする様な許し難い事実。

何をしようが金さえ払えば無いことに出来る!

そんな間違った解決作を男性達が常套手段として
使っていることこそが全女性に対する不敬だとして
告発する女性記者たちと、
立場上、はっきりした事は言えないが
「女性」としてその怒りに共感する名もなき女性たちの、
できる範囲での協力と言う、か細い糸の繋がりが
大手メディアの記事となり、
やがてTwitterの大きなウネリとなって
ハーべイ・ワインスタイン氏を追い込み
世界中に女性の権利を守る動きとなった事。

そんな重大な事実を
ここまでエンタメとして面白く観せてくれる今作!
まるで一級のサスペンスのように、主人公や証人達を
ちょっと後ろから追うようなカメラワークや、
なんだか不穏に車が近寄ってくるシーンなど
ハラハラ〜〜が止まらない!上手いね〜〜!!。

兎に角、現代を生きる人間なら絶対観て欲しい。

で、月に8回ほど映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては

この映画、中心になった新聞記者達が
子育て中の一番大変な時期の女性達であること。
所々にその記者達の夫が子育てに協力しているシーンがあって
旦那さん偉いな〜〜と感じたけど
よく考えると、ちょっと前までは
同じように頑張ってる男性の映画で
奥さんが家で頑張ってるシーンなど、
ほとんど描かれていなかったよな〜〜。

それとこれは脚色だと思うけど
20年程前に被害に遭った女性が今は娘を持つ普通の主婦として、
子供達とテレビで映画を観ているところに
ワインスタインの事件を取材する新聞記者から
電話が掛かって来る。
電話の直前に何気なくテレビにむかって子供達と
「ペッパー・ポッツだ」と会話するシーンがあった。
それだけで、ワインスタインの被害者の1人が
誰の事か映画ファンなら直ぐに解る。
ドキッとするよね。

最後の最後、時代だな〜〜と思ったのは
やっとの思いで書き上げた新聞の記事を電子版として
PCの画面で確認して「アップロード」に当たるクリックを
皆で息を飲んで見つめるシーン。
これが数十年前が舞台の
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密」では
新聞の輪転機が周りだすシーンだったけど、
どちらも、調査報道の大事さとそれを行なう記者達への
エールと鼓舞を込めて描かれたシーンだと思うわ。
記者の皆さん!どうか、この世の不正を
諦めずに伝えてくださいね。

最後にキャリー・マリガン!
「プロシング・ヤング・ウーマン」に続き、お見事!!
(これも↑ぜひ観てね!)

1/26 追記
米アカデミー賞の運営がこの映画を一切無視した!!
もう許し難い!!
自分たちの悪行を反省する気持ちが全く無いと感じた。
米のアカデミー賞の運営は偏りを解消するために
世界の多様な層の会員を増やした!と豪語しているが
この映画を無視した現実を見たら本当とは思えない。

日本のマスコミはもう、米アカデミー賞をこれ
以上宣伝するべきで無いと思う。
米アカデミー賞は、作品を評価する賞ではなく
あくまでも仲間内での人気投票だということを
もっと強調するべきだ!
権威でも何でも無いのだから!!!

星のナターシャnova
近大さんのコメント
2023年4月19日

全く同感です。
興行不発やアカデミー賞ノミネート落選は、変わろうとしているのか変わらないままでいるのか、ハリウッドの問題をそのまま提示しているようでした。
業界人やアカデミーはこの映画を観て、何も思わなかったんでしょうか…?

近大