「標的は札束で全てを揉み消してきた淫奔の悪魔... 遅過ぎる救援の手に憤る被害者たちのトラウマを糾合した報道に己が叫びを託した映画」SHE SAID シー・セッド その名を暴け O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
標的は札束で全てを揉み消してきた淫奔の悪魔... 遅過ぎる救援の手に憤る被害者たちのトラウマを糾合した報道に己が叫びを託した映画
数年前に世界的な拡がりを見せた#MeToo運動の大きなきっかけとなった、ニューヨーク・タイムズ紙による映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏の性暴力報道を世に出した二人の女性記者の闘いの物語。
ハリウッド大作ではあるものの相手巨悪からの此方の命を狙った妨害工作のような派手なスペクタクル展開は極力排されており、無数の関係者たちの自己保身と無関心の連なりによって長年野放しにされてきた裸の王様の性暴力を根絶するため、累積した悪行を丹念に取材して詳らかにする地味で堅実な一本です。
記者たちがその被害者たちの声を掬い上げに行くことで彼女らは封印していた自らのトラウマに己を曝すことになるのですが、力無き普通の人々がなけなしの勇気を振り絞って巨大な不条理に立ち向かう姿は実話ベースゆえの凄みを感じさせます。
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