劇場公開日 2023年1月13日

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「倒すべき強敵が映像として描かれないのは物足りない」SHE SAID シー・セッド その名を暴け tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5倒すべき強敵が映像として描かれないのは物足りない

2023年1月18日
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スキャンダルを暴露しようとする記者たちの物語だが、「真相の究明」というよりも「口を閉ざしている被害者に、いかに証言してもらうか」というところが、最大の見どころとなっている。
その点、記者たちが「女性」でなければ、被害者は重い口を開こうとはしなかったのではないかと思われる。
被害者に共感し、寄り添おうとする女性記者の姿もさることながら、セクハラによって心に深い傷を負い、人生を狂わされてしまった被害者の姿もしっかりと描かれていて、女性監督ならではの視点を感じ取ることができた。
その一方で、証言者を獲得していく過程が、同じような展開の繰り返しで、中盤以降、もたついた感じになってしまったのは惜しまれる。
記事を出す決め手となる「LOC」の手記の入手や、アシュレイ・ジャッド等の実名公表のいきさつも、どこか淡々としていて「一発逆転」のような面白さがない。実話ベースなので、演出過剰になることを避けたのであろうが、もう少しカタルシスがあってもよかったのではないだろうか。
そして、何よりも、肝心のワインスタインがしっかりと映像で描かれず、「顔出し」すらないのは物足りない。
劇中の台詞にもあるように、ワインスタイン個人の犯罪よりも、加害者をのさばらせる「示談」という制度の問題点を指摘したかったのかもしれないが、「憎むべき強大な敵」が明示されないことで、物語の構造が弱まってしまったように思えるのである。

tomato
tomatoさんのコメント
2023年1月22日

コメント、ありがとうございます。
「敵」については、本当におっしゃるとおりだと思います。
ただ、映画としては、「スキャンダル」でジョン・リスゴーが演じたような憎々しい悪役がいた方が、もっとインパクトのある作品になったのではないかと思った次第です。

tomato
いぱねまさんのコメント
2023年1月21日

失礼します
「憎むべき強大な敵」とは、プロデューサーを利用していた連中、つまり映画産業そのものです 若しくは全ての産業です 残念ですが功罪の"罪"に頬被りする人類そのものではないでしょうか?
僭越で申し訳ございません

いぱねま