「寄り添う力と立ち向かう勇気」SHE SAID シー・セッド その名を暴け kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
寄り添う力と立ち向かう勇気
絶対権力者のセクハラ行為(本作はそんな生やさしいものではないが)を、周りの人間が止めるのはとても難しい。権力をカサにどんな報復をされるかわからないからだ。
映画業界の超大物が行ってきた性犯罪を調査し、暴く記事を書いた記者たちを描いた本作。登場人物が実名であることに驚いてしまう。実際に本人が出演していた役もいくつかあった。アメリカってこういうところがすごいよな。記事が発表されるときもそうだが、名前を公表することを決断した人たちには尊敬の念しかない。様々な圧力やいやがらせを受けることも想定できる中での決断。彼女たちに共通しているのが、自分だけでなく他の女性たちが同じような目にあってほしくないという思いだ。だからこそ自分がつらい目にあってもいいからこんなことをやめさせたいと。彼女たちの言動には感動してしまう。
2人の記者が母親として子育てに苦労しながら仕事する姿を描くのがまたいい。ワインスタインの醜悪な行為となんと対象的なことか。
正月にフェミニズムの名著を各界の論客や有名人が紹介する番組を観たのだが、冒頭でフェミニズムの歴史で4つの大きな動きがあって、そのうち一番最近のが「#MeToo」運動だったと紹介していた。あの運動の始まりがこの記者たちの取材だということになる。まさに歴史が動く瞬間の映画化だ。観る価値のある、見応えのある力作だった。
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