「8×12くらい」SHE SAID シー・セッド その名を暴け サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
8×12くらい
性被害にあった女性が立ち向かう作品、「スキャンダル」「プロミシング・ヤングウーマン」を鑑賞してきたが、どれもどうも好きになれなかった。本作は、公開時点ではチェックインしておらず、評価が高かったがために急遽鑑賞することになったのだが、あまりハマらなかった過去2作の影響でそこまで期待していなかった。しかし、これが凄かった。素晴らしい作品だった。
実際に起こった事件であることは知っていたのだが、この事件に関しては完全に無知であった。映画業界の重鎮が、数多くの女優やスタッフに対し性暴力を加え、更に被害者には多額の示談金を支払う対価として、性被害にあった事を口にしないよう、書類にサインをさせる。映画を見ていく中で、このような衝撃の事実を知ることとなり、体の底から憎しみと悲しみが込み上げ、彼女らへの思いが募る。
日本でも近年、問題となっている映画業界の性被害。名前は伏せるが、映画監督や俳優による女優やスタッフに対する性暴力が明らかとなりつつあり、また、女性監督によるスタッフへの暴力・暴言も記憶に新しい。ようやく、このようにして告発が行われるようになったのだが、作中でもあるように、明るみとなっているのはほんの一部でしかない。大半は隠されたままなのである。この映画は、そんな被害を受けた全ての人に希望の光を与える、すごく意義のある素晴らしい作品だと思う。
シンプルな作りなのだが、それがいい。
彼女らが誠心誠意、真剣に事件や被害者に対して向き合っているのが伝わり、感情が揺さぶられる。そのシンプルさが故に、絵は弱く、映画と言うよりもドラマに近しいように感じるのは難点。しかしながら、実際に起こった事件をドキュメンタリー的に追いかけるこの真面目さが、作品に緊張感と迫力を出していた。
まだ8本しか新作を見ていないのに言うのはなんだが、今年一見応えのある作品でした。恐らく、この衝撃は年末になっても忘れないかと。多くの人に見て頂きたい、力作。女性、男性関係なしに、ぜひ。