劇場公開日 2023年1月13日

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「声にならない声を伝えるのがジャーナリズムの役目。」SHE SAID シー・セッド その名を暴け レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5声にならない声を伝えるのがジャーナリズムの役目。

2023年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

かつてハリウッドでその強大な権力を誇った大プロデューサーのハーベイ・ワインシュタイン、彼はその権力を利用し傍若無人に多くの女性に性的暴行を繰り返した。
「権力は腐敗する」をまさに絵に描いたような人物。その犯した罪が二人の女性記者によって白日のものとされる。

全編にわたって息苦しさを覚えるほどの緊張感が漂う作品。まるで被害を訴えることができずに苦しんできた被害者の気持ちが作品全体ににじみ出ているかのような。

主人公の記者たちが取材をしても被害者たちの口は重く、なかなか取材は進展しない。しかし、やがて彼女らの熱意が伝わり、実名での告白も得られるようになる。
遂には記事は公のものとなり、これを機にワインシュタインは告発され、またこの記事がきっかけとなりミートゥー運動が世界に波及することとなる。

二人の記者と勇気を振り絞り告発した被害者たちの開けた小さな穴からこぼれる水流がやがて巨大なうねりとなって世界を変えてゆく様を見て溜飲が下がるとともに、強い意志があれば未来を切り開くことができるのだと希望も与えてくれる。

ハーベイはこの世にいったい何人いるのかと劇中では語られる。このように腐敗した権力による被害は氷山の一角に過ぎない。
日本にも多くのハーベイが存在する。腐敗した権力が特に顕著なのは政治の世界だ。

昨年奇しくも一発の凶弾によって政界とカルト教団との癒着が白日のものとされた。本来それはジャーナリズムの仕事だったが、それがほとんど機能しないこの国ではかような悲劇でしか成し遂げられなかったのかと思うと残念でならない。
ジャーナリストが自分たちの役目を怠らなければあのような悲劇は避けられたのではないだろうか。
報道の自由度ランキングが世界で71位の日本。その順位の低さに驚かされるが、さらに深刻なのはその理由が報道人による自粛であるというのがなんとも嘆かわしい。ロシアや中国のように権力に抗う報道をしたからといって命の危険までは及ばないこの日本で。

ちなみに本作の記事で全世界にミートゥー運動が広がったが、日本で起きた女性ジャーナリストレイプ事件の犯人とされる人物はいまだ逮捕には至っていない。

レント
琥珀糖さんのコメント
2023年12月20日

2度目の共感、ありがとうございます。

最初載せたレビューは、翌日削除されました。
コメントも削除されていますね。
多分、書いてはいけないのだろうと思った部分を
消して再投稿したのが、このレビューなんです。

琥珀糖
talismanさんのコメント
2023年1月21日

レントさん、コメントありがとうございます。この映画を見て思ったこと、日本のマスコミは何やってるんだ!でした

talisman