「今を精一杯生きる」春に散る ココヤシさんの映画レビュー(感想・評価)
今を精一杯生きる
原作未読で、ボクシング映画も格別好みではないが、評価の高さに惹かれて鑑賞。大変感動した。
ボクサーとして鳴らし、渡米したが、不公平な判定に納得できず引退した広岡仁一(佐藤浩市)。ホテル業に転身して成功するが、心臓疾患が判明して事業を譲渡し、帰国してかつてのボクシング仲間と一緒に静かに余生を送りたいと望む。
一方、母子家庭に育ち、母親(坂井真紀)を守りたい一心でボクシングを始めた黒木翔吾(横浜流星)。やはり不公平な判定に納得できず、半引退生活を送る。そんなとき、酒場で騒ぐ若者たちをたしなめた仁一が、逆恨みされて襲われるものの、これを簡単にノックアウトするのを目撃して、弟子入りを志願する――といったストーリー。
試合に勝ち続けてタイトル戦をつかみ取る翔吾だが、直前に網膜剥離の症状が判明。仁一は試合の辞退を説得するが、「今しかないんだ!」という翔吾に押し切られてしまう。たぶん仁一自身、翔吾の雄姿をその目に収める最後のチャンスだと悟ったのだろう。「今を精一杯生きる」というのが本作のテーマだと思う。
流星さんはプロ・ボクサーとしてまったく違和感のない鍛え上げた肉体とキレを見せてくれた。窪田正孝さんも自分のなかでは線の細いイメージがあったが、本作でふてぶてしいチャンプ・中西利夫を見事に演じている。予算に限りのある邦画でも脚本次第で十分に勝負できると感じさせてくれる作品。
ただ、平日とはいえ観客が自分を含めて4~5人だったのは気になる。
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