次元を超える

劇場公開日:2025年10月17日

解説・あらすじ

豊田利晃監督が、長編フィクション映画としては「泣き虫しょったんの奇跡」以来7年ぶりに手がけた作品。2019年に発表した短編「狼煙が呼ぶ」にはじまり、「破壊の日」「全員切腹」など近年の「狼蘇山シリーズ」と呼ばれる作品群の集大成となる長編で、窪塚洋介と松田龍平を主演に、行方不明になった修行者とその捜索を依頼された暗殺者が繰り広げる、時空を超える壮大な追跡劇を描く。

孤高の修行者・山中狼介が、危険な宗教家・阿闍梨の家に赴いたのを最後に消息を絶つ。暗殺者・新野風は、山中の恋人・野々花から捜索を依頼され、山中の行方を追う。やがて2人は法螺貝に導かれて狼蘇山で対面し、次元を超えて鏡の洞窟で対峙する。過去から現在、そして未来を駆けめぐる2人は、日本から地球、さらに宇宙へとたどり着く。

修行者・山中役を窪塚、暗殺者・新野役を松田、阿闍梨役を千原ジュニア、野々花役を芋生悠がそれぞれ演じるほか、渋川清彦、東出昌大、板尾創路、祷キララらが顔をそろえる。

2025年製作/96分/PG12/日本
配給:スターサンズ
劇場公開日:2025年10月17日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

監督
豊田利晃
脚本
豊田利晃
エグゼクティブプロデューサー
豊田利晃
プロデューサー
村岡伸一郎
行実良
アソシエイトプロデューサー
市山尚三
長井龍
撮影
槇憲治
照明
野村直樹
録音
島津未来介
小松将人
音響演出
北田雅也
美術
佐々木尚
衣装デザイン
澤田石和寛
キャラクターデザイン
澤田石和寛
惑星ケルマンデザイン
YOSHIROTTEN
惑星ケルマンCG
敷山未来
宇宙船デザイン
マイケル・アリアス
特殊相談役
樋口真嗣
VFX スーパーバイザー
道木伸隆
編集
村上雅樹
音楽
Sons of Kemet
Mars89
中込健太
住吉佑太
ヤマジカズヒデ
エンディングテーマ
The Birthday
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(C)次元超越体/DIMENSIONS

映画レビュー

3.5 サイキック密教×「アルタード・ステーツ」的な奇作

2025年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

豊田利晃監督56歳、波乱に満ちた経歴の持ち主だ。十代で将棋棋士を志すも断念し、二十代から映画業界入り。30歳のとき「ポルノスター」で監督デビューするが、7年後に覚醒剤所持で有罪、執行猶予。2018年に「泣き虫しょったんの奇跡」が公開されるも、翌年には銃砲刀剣類所持等取締法違反(拳銃の所持)で逮捕され、不起訴処分。以降は「「狼蘇山(おおかみよみがえりやま)シリーズ」と呼ぶ短編群を自主制作で発表してきた。この最新作「次元を超える」は同シリーズの集大成だという。

サイキックパワーを操る密教僧たち(千原ジュニア、渋川清彦)のバトルがあったり、修行者(窪塚洋介)が精神的な高みを求めて宇宙空間を旅したりと、スピリチュアルな題材が好きな人に向きそう。60年代後半から70年代のヒッピー文化の影響を受けた「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」に似た感じもある。逆に言えば、精神世界や哲学に興味がないと、なにやら荒唐無稽な法螺話に思えるかも。

豊田監督の波乱万丈な経歴を思い起こすなら、ある種の開き直りさえ感じさせる自由奔放な奇作と言えるだろう。警察沙汰を二度起こした危うさはあれど、才能に惚れ込む俳優も多いのか、先述の3人のほかに松田龍平、芋生悠、東出昌大、板尾創路、祷キララとキャストもなかなかに豪華。万人受けしないのは確かだが、こんな尖った映画が劇場公開されるのも豊かさなのだろうと思う。

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高森郁哉

3.5 世界の果てを追求した怪作

2025年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

驚く

斬新

 人はどこから来てどこへ行くのか?というテーマをスピリチュアルな映像と独特のユーモアで綴った怪作。

 時空を超越した世界観で繰り広げられる死生のドラマだが、如何せんスケールのわりに映像やドラマがチープで壮大さは余り感じられない。しかし、このチープさが一周回って味わい深かったりするのも事実で、個人的には中々楽しく観ることが出来た。

 それにしても、銀河の遥か彼方や摩訶不思議な万華鏡の空間、呪術による幻覚といったシュールで超然としたシーンが断続的に登場するので取っつきにくい作品であることは間違いない。

 また、説明不足で意味不明な個所が多々あるため、いわゆる難解な映画でもある。
 例えば、どうして阿闍梨は小指に固執するのか?トイレの便座を全裸で温めていた女性が意味する所は?なぜ法螺貝を吹くことで次元の扉が開くのか?極彩色の惑星ケルマンやミスター・ケルマンとは何だったのか?
 おそらく夫々に何かしら意味はあるのだろう。しかし、これらを一々理屈を考えながら観るとかなりフラストレーションが溜まる映画である。したがって、軽く受け流すくらいの感じで観るのが丁度いいのかもしれない。それでもドラマの核となる部分は、ある程度理解できるようになっている。

 実際、物語の主軸は意外にシンプルで、いわゆる失踪者を捜索する探偵物のようなプロットになっている。
 現世から解き放たれようと次元の果てを目指して失踪した狼介。そんな狼介を死して尚、引き戻そうとする恋人・野々花。死んだ野々花から狼介の捜索を依頼される殺し屋・風。そして、次元の果ての謎を解き明かそうと、狼介と風を”けしかける”カルトの教祖・阿闍梨。夫々の思惑が現実と幻想、時空を超えて交錯する。

 まるでキツネにつままれたようなラストが面白い。観た人によって様々に解釈できるエンディングで、個人的には阿闍梨が言うように風は狼介の呪術にまんまとハマった…と解釈した。

 製作、監督、脚本は「PORNOSTAR ポルノスター」、「青い春」、「ナイン・ソウルズ」、「空中庭園」の豊田利晃。自分はこの辺りで作品を観るのが止まってしまったが、その後、氏はプライベートで色々な問題を起こして暫く活動休止の状態に追い込まれてしまった。ようやく最近になってドキュメンタリーや自主製作という形で短編を発表し、今回の長編製作に至ったということである。ちなみに、その短編はシリーズ物となっていて本作はその集大成ということらしい。もしかしたら、そちらを観れば本作の理解は更に深まるのかもしれない。

 最も印象に残ったシーンは、狼介が過去を振り返りながら雨の中を歩く場面である。「PORNOSTAR ポルノスター」のナイフの雨、「空中庭園」の血の雨等、やはり雨のシーンを印象深く撮るのが豊田監督は上手い。

 キャスト陣は、いわゆる豊田組の常連で固められている。狼介を演じた窪塚洋介、風を演じた松田龍平、阿闍梨を演じた千原ジュニア、鉄平を演じた渋川清彦等、アクの強い俳優陣が夫々に存在感を見せている。他に、マメ山田、板尾創路も常連組と言えるだろう。また、東出昌大が信者の一人で登場するが、ぱっと見て彼と分からない風貌で後になって判明した次第である。

 エンディングはThe Birthdayの「抱きしめたい」。フロントマンの故・チバユウスケ繋がりで言えば、ミッシェル・ガン・エレファントを全面的にフィーチャーした「青い春」が想起された。

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ありの

4.0 好みは分かれると思うけれども

2025年12月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

斬新

「青い春」の豊田監督の新作とのことで、興味を引かれて鑑賞しました。万人受けする作品ではないでしょうが、個人的には満足。

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MH

3.0 次元を超えた体験…

2025年11月30日
iPhoneアプリから投稿

存在感ある役者陣が出演していることと「人はどこから来て、どこへ行くのか」というキャッチコピーに惹かれ鑑賞。千原ジュニアによるクレイジーな宗教家のインパクトまでは良かったが、、、

退屈、、、早く終わらないかな、、、序盤でそんな風に感じる映画はたま〜にあるが、おおむね中盤以降はストーリーの面白さや共感ポイント、心に響くメッセージ等に引き込まれ、最後は「やっぱり観てよかった〜」となる、、、のだが、、、

本作に関してはラストシーンを見終わった瞬間、ため息と「うそでしょ…」という心の声しか出てこなかった、、、。
観る人によっては面白い作品なんだろうが、、、私にとっては、観たことを後悔する作品に初めて出会うという、まさに次元を超えた映画体験でした。

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ひげしっぽ