「まるでゴミのように…」西部戦線異状なし iroiromanさんの映画レビュー(感想・評価)
まるでゴミのように…
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戦争映画でよくある、英雄や勝利についての話ではない。
ただの殺し合いでしかなく、そこに大義はない。
人間が人間を殺すという行為が、ゲームのように現実に行われているという異常性。
文字通りまるでゴミのように命を落としてゆく若人たち。
冒頭から先んじて死んでいったものたちの軍服を知らずに着せられる様が痛烈だった。
友人とともに誇りを胸に赴いた戦地で待っている地獄。
無謀な突撃をしては殺され、攻め込まれては殺されて。
ただただ屍が積み重なっていく様が見るに耐えない。
泥と血と雨に塗れて、砂とともにパンを頬張る描写。
極限状態での仲間との絆と、それが無惨に失われる現実。
殺し殺される敵もただの不幸な人間であるという事実。
終盤、盗みを働いた農家の子供に撃たれ死んでしまう戦友のカット、終戦まであと15分で最後の突撃を命じられるドイツ兵たち、銃剣で致命傷を負った直後に終戦命令が出るラスト、本当に救いがない。。
美しい自然描写との対比がよりそれを際立たせていて、当時の若者たちの無駄死にが本当に丁寧に描かれている。
舞台は第一次世界大戦だが、今も利権や国のくだらないプライドのため、ウクライナやイスラエル、ガザで同じように多くの命が失われていて、どんなに悲しい歴史を繰り返してもやはり国同士の交渉手段は戦争になり、どれだけ死者が出たかが材料の一つになるんだなと。
重くのしかかる必見の反戦映画です。
1930年代版を観てみたくなった。
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