「オリジナルが名作ならば、今回は傑作」西部戦線異状なし とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
オリジナルが名作ならば、今回は傑作
開戦から終戦まで膠着状態だったわずか数百メートルの陣地を得るために命を落とした300万人の1人="一兵卒"として経験する戦場の混沌とした残酷さ、戦争の不毛さ
名著の再映画化は --- その2作の間に一度テレビ映画化されらしいものは未見ながら --- オリジナルと同じように他の兵士のものがいかに別の兵士へと渡るかという流れから始まり、大まかなあらすじを知っていても掴まれて、改めて引き込まれるものがあった。あれだけ親の反対を押し切ってまで普通の学生が兵士となって、戦場を体験する中で見た景色。家に帰れるという夢を見て、いもしない女の幻影を愛した。幻の女を追いかけた。夢も見れないで、若者らしいこともできないで。
戦闘シーンの迫力が増したことで、戦争の凄惨さが際立つ作りが恐ろしかった。"戦場のリアル"などと今を生きる僕たち私たちが易易と言えないが、戦車や火炎放射器、四肢のもげた仲間の死など、例えば『炎628』『プライベート・ライアン』方向の遠慮のない描写。そして、本来なんの恨みもなく、戦時中でなければもしかすると分かり合えて友達になれた可能性すらある --- それぞれに家族もいる --- 敵国の兵士の命を奪う。そうしないと自分が殺されてしまうから。
俺たちは生きてる!これは熱病だ、こんなの誰も望んじゃいない。神は見てるだけ。だけど俺は一兵卒だ、何も分からん。…明日が怖い。手の感覚がなくなるほど冷たいときは下着の中に手を入れろ。今じゃもうズボンが緩くて落ちる。カット!人を殺しただけ、称賛されるようなことじゃない。上層部のエゴ見栄と傲慢で使い捨てられる膨大な命、あまりに大きすぎる犠牲。自身の息子も喪ったことで一刻も早く戦争を終わらせようと動くダニエル・ブリュール。署名。
言わずもがなロシアによるウクライナ侵攻など今日でも通ずる。
勝手に関連作品『彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』『1917』
11月11日午前11時