「板の上」アイアム・ア・コメディアン ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
板の上
連休最終日ということもあって、劇場は超満員。持ってた鑑賞券が窓口でしか使えないやつだったのでギリギリ滑り込みでなんとか座席確保での鑑賞。
コメディアンの生き様をまざまざと見せつけられました。体感3時間くらいの密度と熱を持った最高のドキュメンタリーで、この作品がこの世に放たれたという喜びに浸りっぱなしでした。
年間通してTHE MANZAIの舞台でしかTVで見れないというのはなんとなく知っていましたが、それ故にTHE MANZAIのステージが本当に楽しみで、リアルタイムのネタを時事ネタという形ではなく、心の叫びを爆発させるその姿がカッコよくて、両手で震えながらサンパチマイクを握りしめ、終わったら速攻でステージを去るというの込みで、どの年のTHE MANZAIもウーマン面白かった〜ってなっていました(他だとチンチンの掴みで持っていってくれるテンダラーも好きです)。
今作でも流れていた欲しくない物資ランキングというネタもめちゃくちゃ笑ったので、心の中でこう思ってる自分が確実にいるんだよなともなりましたし、千羽鶴に関しては当時何故か作りましたけど、これの意味は?と思っていたので、代弁してくれた時にはそうそう!と強く頷いたのを覚えています。
政治的なネタを取り込んだきっかけが東日本大震災の現地の現場を知ってから、お笑いを通して伝えていこうとなったのは知っていましたが、表面的だけ映していたTVとは違い、映画では現地に訪れて現地の人と喋ったり、在日コリアンの方々と喋ったり、実際に韓国に行ってみてトークしてみたりと、とにかく行動に移すまでが速く、現地の方々の話を聞くだけではなく、ぶつかり合って分かり合うという交流を軸に活動しているのが凄すぎるよなと思いました。
アメリカでの活動は、初期に立ち返ったように場数を踏んで進んでいく努力がこれでもかってくらい映されていますし、ちょっとダメージ食らいながらも、立ち上がってアメリカ式を覚えていく姿は尊敬しかありません。
元々持っている毒をアレンジして、それが日本では新鮮と言われるけど、アメリカでは至って普通という文化の違いにも驚きました。
元の人となりが優しいというのは、過去の映像たちで滲み出ていましたが、お母さんと合って嬉しそうにしていたところが本当に良いなとなりました。
最初に軽ーく悪口を言ってみたり、密着してるよとボソッと言ったのをお母さん笑って良いよ〜と言ってくれる関係性も良いですし、子供の頃の写真だったり、芸人になってからの雑誌の切り取りだったりと、お母さんも村本さんを大切に思ってるんだなぁというのが滲み出ていて素敵でそこで泣きそうになりました。
帰る時も寂しそうにして涙ぐんでいたのも、気持ちが分かりすぎるっとなって胸がキュッとなりました。
自分も母に会う時は本当に嬉しいですし、実家から帰る時なんかはまだまだ寂しいという感情が強いですし、手をブンブンするくらいにはバイバイしっぱなしなので、両親を大切に思う気持ちがある人は本当に素敵だよなと思いました。
お父さんとの電話で誕生日プレゼントで揉めている話も、2人で怒鳴りながら愛し合っていたという終着点が見事すぎて腹抱えて笑いました。
最後のライブシーンが最初から最後まで本当にカッコよくて、板の上マイク一本でオンステージしてお客さんの笑いを掻っ攫っていく姿はまさに"コメディアン"という職業の輝きを放っていました。
お父さんが亡くなった翌日も舞台に立ち、父親へかけた言葉ですらお笑いに昇華してるんですから、本当に強い人だなと再認識させられました。
パラダイスの役割はこうですと差し込んでいくあたり隙が無いわ〜と唸ってしまいました。
村本さんは今作以上の毒と熱をたくさん持っている方だと思うので、映画としてチューニングされたのが今作だと思うんですが、それでもこの世の問題から真っ向勝負で立ち向かっていくその心意気にはやはり惚れ惚れしっぱなしでした。
グッダグダだった都知事選とかも、どこかでぶちまけてくれすはずだろうと期待してますし、自分たちの心の代弁を強い言葉でマイクに乗っけてくれるという信頼感が今作でもより増していきました。
講演会やウーマンの漫才もタイミング合えば行ってみたいんですが、今作が公開された事によって、こういう講演会が開かれなさそう…待ってます。
鑑賞日 7/15
鑑賞時間 16:10〜18:05
座席 B-10