フェイブルマンズのレビュー・感想・評価
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地平線はどこにある…⁈
昨日の『エブエブ』に続き、アカデミー賞・ノミネート作品の鑑賞。映画ファンならずとも、世界中が誰もが知る、数多くの名作映画を生み出してきた、映画監督・スティーブン・スピルバーグの幼少期からハリウッドへの第一歩を踏み出すまでの生い立ちを描いた自伝的作品。
スピルバーグが、この世に残してきた業績は、計り知れないものがある。『ジョーズ』や『ジュラシック・パーク』では、ハラハラ感や恐怖を、『E.T』や『未知との遭遇』では、宇宙との親睦的なコンテクトを、また『シンドラーのリスト』や『プライベート・ライアン』では、人類の黒歴史としての戦争の悲惨さを、他にも『インディ・ジョーンズ』『レディ・プレイヤー1』、最近では、『ウエスト・サイド・ストーリー』もリメイクしたし、挙げればきりがない。そして、「彼が作った映画はぜひ観たい」と思わせるだけの期待を抱かせ、多く人を映画館に足を運ばせてきた。勿論、自分も初めて『激突』を劇場で観て以来、殆どの作品を鑑賞し、自分の人生の様々な場面に、彼の作品はリンクしてくる。
本作では、そんなスピルバーグ監督の誕生秘話を、初めて両親に連れられて観にいった映画に魅了されるシーンから始まる。そして、母親の買ってもらった8mmカメラで、自分なりに作品を撮り始め、それを観る人が笑顔になることで、益々映画作りの魅力の虜となっていく、少年の姿が描かれていく。
しかし、彼の映画作りには、ユダヤ人差別による苛め、父親が映画作りへの無理解、母親の浮気からの両親の離婚、若気の至れの失恋、等、様々な試練が立ち塞がっていく。その中で、やはり家族愛と言うものを、彼自身がずっと欲していたのだ、と感じとれた。彼の作品を今一度思い返してみると、その作品の根底に流れているのは、やはり彼が求め続けてきた信頼や家族愛が流れている、と感じた。
また、本作の中で、友人と連れ立って自転車で走り抜けるシーンや、冒頭の列車が脱線衝突するシーンは、それぞれ『E.T.』や『スーパーエイト』にもあったと思う。彼の幼少期から刻まれた様々な記憶の断片が、各作品の印象的なシーンの原点となって描かれているのかもしれない。
彼自身、何度かアカデミー賞には輝いているが、その偉大な監督・スピルバーグが、ハリウッドに辿り着くまでの若かりし頃の紆余曲折を、ヒューマンタッチに描いている。映画界に多大な業績を残してきた彼だからこそ、再度、オスカーを手にするに相応しい作品でもあると感じた。
映像とは?
地味目な作品ですが、これがスピルバーグが育った環境なのかと思えば、2時間半もそれほど長くは感じません。
お話とは別のところでスピルバーグにありがちな場面転換前に顔がアップになっていくカットの起源や青年団との自転車、そしてクローゼットの中など後に作る映画のシーンを想起させてかなり興味深く進んでいきます。
ストーリー自体はユダヤ人のスピルバーグ家の話。
そして
「映像を編集することの重要性」
がテーマの1つだと思うのですが、
それによって知ってしまった知りたくない事実、
ペンな剣よりも強し、じゃないけど映像と編集と観客が相まった時、いわゆる映画は人を変えてしまう可能性がえるという怖さ。スピルバーグの体験を通していろんなことを教えてくれます。
なんといっても大ラス、大物監督の発言「!!!!」
あれだけでもこの映画を見る価値はあります。
アートの呪い
業が深く、呪いにも似た生き様の映画でした。
映画以外に生きる場所がない人間が、夢を追うことの孤独や葛藤、苦しみを延々と描いていました。
監督としてのいわゆるサクセスストーリーとは程遠く。
また、複数形が示すように、ばらばらにそれぞれの道を選んで歩いていく家族の姿でもあり。
そういう歩みが、スピルバーグを作ったという明示でもあり。
そして、その映画作りの撮影技術が見抜いてしまった、母の裏切り…
スピルバーグにとって、両親の離婚はショックだったんだなぁとか、子ども時代のユダヤ人差別は酷かったんだなとか、月並みな感想しか出てきませんでしたが……
まぁ、私はキリスト教ってやっぱカルトで、差別主義者の吹き溜まりだなって感想が一番強かったです。
これがわたしの生きる道
スピルバーグ監督の自伝的作品ですが、全体の印象は家族の物語です。ユダヤ系の優秀な科学者である父親、ピアノの才能があり奔放な母親、映画に魅せられた長男と妹3人、それぞれが自分の生き方を模索する話です。
論理的で理性的な夫は感性のままに自由に生きる妻を愛するが、二人は歩み寄ることは出来ない。それを敏感に感じ取る母親似の息子、という所は吉田秋生さんの「カリフォルニア物語」(漫画)を思い出しました。
初めて映画を観て列車事故のシーンに衝撃を受けたサミーが、模型を使って再現し、異常なくらい何度も繰り返すシーンは、スピルバーグ監督なんだなあ、と感心します。
成長して自主映画を作る時の様々なアイディアが面白いですが、それだけでなく、カメラは対象をリアルに映し出すという特徴ゆえに、残酷でもあるし、作り手の意図で受け手の印象を変えることが出来るという両面を持っているというメッセージもありました。
ゲスト出演者に注目してください。
フェイブルマン一家(家族)の話
心のままならなさ
心のままならなさを描いた映画と感じた。
主人公サミーは映画に、母親は恋に、父親は仕事に、どうしようもなく惹かれている。
そのままならなさは母親のエピソードがわかりやすいと感じる。
母親は、惹かれすぎて家庭が壊れそうになり、一悶着後、壊れないように努力した結果、逆に自分の心が壊れそうになり、結局、家庭を壊す決断をする。
主人公サミーは映画に惹かれ、映画の魅力と同時に怖さを経験しながら、映画の道を進んでゆく。
本作は、サミーが社会人として映画業界に足を踏み入れたところで終了するが、彼がスピルバーグの代替である以上、その後も映画に携わり、今も携わり続けているとわかる。
彼がその後、具体的にどういうままならなさを経験したかは映画からは不明だが、今も魅了されているのだろう。
本作はそういう話を物語に落とし込み、そういう話に興味がない者も退屈させないように、最後には明るく前向きな気持ちになれるように、観る者に多大な配慮をして作られているように感じた。
多大な配慮がされているのはどの映画もそうだろうが、本作は、興味深く、最後には心に晴れ間を作ってくれるような映画と感じた。
スピルバーグができるまで
今作は映画に魅入られた少年が青年になるまでのエピソード。
あの作品が出来上がる過程が…とかは無く、映画愛に溢れた作品ってよりかはいかにしてスピルバーグが出来上がったかに主眼が置かれている。だからちょっと退屈だなぁと思った。
ただ、所々ユーモアがあって最後なんかは好き。
家族との関係であったり、学友との恋と衝突であったり、なかなか辛いことが多めではあったが、それらが名作を生み出した背景にもあるのかぁと関心。
スピルバーグがシンドラーのリストを作った理由も伝わってきた。
それぞれの形で子供への愛情を表現する母父のミシェルウィリアムズとポールダノの好演が良い。
それと子供の時観た映画で気持ちがいっぱいになって、ずっとシーンを反芻する…自分だとハリーポッターがそんな作品だったなぁ。普通はそこで止まるけど、そこからシーンを再現して映画を撮り始める。やっぱりその原動力って大切だよなぁと思った。
寓話男
出来事には全て意味がある
世界で最も愛される映画監督がその半生から教えてくれるストーリーを選び取ること。
ストリーミングサービスの台頭で劇場体験はもとより"映画の魔法"が消えつつある昨今の映画界を取り巻く流れだからこそ。Netflixオリジナル映画などが賞レースを賑わせ始めた当初、「映画じゃない」という旨の発言が取り沙汰されていたスピルバーグ。
そりゃ映画一本一本、鑑賞一回一回の重みがまるで違って特別だった昔を懐かしんで…。見た目は大人でも心は映画少年のままなスピルバーグ御大=フェイブルマン少年の半自伝的ドラマは流石に見応えがあった映画の力と家族のルーツ。芸術ジャンキーについて説く伯父→編集→演出の流れで完璧にやられた、心掴まれた。胸引き裂かれるような映画はいつだって"地上最大のショウ"だ!
科学 vs 芸術?サミーじゃなくてサムの母親譲りな性格(頑固&芸術好き)。自分でコントロールできるもの"衝突"を追い求めて、ジョン・フォードなど偉大なる先人たちが映画に魅せられて…。プロム辺りからはサムがスピルバーグに見えて仕方なかった。地平線が下にあれば面白い絵になる。地平線が上にあっても面白い絵になる。地平線が真ん中にあると死ぬほどつまらん。こちらこそ。最後の最後まで初心忘れない映画少年っぷりにニヤリ!
P.S. だからスピルバーグが、『トップガンマーヴェリック』はじめ映画の可能性と限界を追い続ける寝ても覚めても映画製作夢中男トム・クルーズを、戦友として「君が映画を救った」とハグするのも無理のない話なのだ。
※晩年自伝でも書くようにある種集大成的な本作を作ってもスピルバーグは引退しません。何より芸術ジャンキーなので!(ex. 宮崎駿?)
勝手に関連作品『ワイルドライフ』『Boyhood 6才のボクが大人になるまで』
ファン以外にはウケない?
スピルバーグが自身のルーツとなる体験を描いた自伝的作品。タイトルは主人公の姓由来である。
ぼくは『ジョーズ』を劇場公開時(10歳?)に鑑賞して以来のファンなので絶対に見逃せない作品だと思ったが、他の人にはそうでもなかったらしく、300人以上入る劇場には1桁の観客しかいなかった。
あくまでも“自伝的作品”なので、描かれていることがすべて真実だとは思わない。それでも彼の映画への熱い思いは伝わってくる。前半と後半で明らかにトーンが変わり、楽しいばかりの内容ではないのだがそれもまたいい。
残念なのは、創作上の秘密のようなものは冒頭の激突以外は感じられなかったこと。あの映画のあのシーンはこんなことが基になっていたんだというのがあればもっとよかった。気付かなかっただけかもしれないけど(^^;)。
まさかの「あの人」が・・・!
やっぱりスピルバーグは上手い。でも、この映画を観た人にはスピルバーグの他の映画の前にジョン・フォードの映画を観て欲しいな、映画好きなら。
①基本的には映画への愛が根底にあるのだが、カメラ(映画)の怖さもさりげなく描いているのが、この映画を重層的なものにしている。
②カメラがそのまま映し出す残酷な現実、その現実を隠せる編集、フォーカスしたりスローモーションにしたり等の技術で作り出せる偶像等、映画の陰の面もありのまま描くところに数十年間映画を撮り続けてきたスピルバーグの監督としての歴史と矜持とを見る思いがする。
③ホンの1分ほどでサムの父親の口を借りて映画とは技術的にどういうものか(連続撮影されたフィルムをスクリーンに投影したもの)を簡略に説明する冒頭から巧い。その後も随所で映画に関する技術的な説明がされるが、一方、「芸術(映画)と家族(私生活)」に引き裂かれる芸術家(映画監督)としての苦悩・葛藤・覚悟も、ジャド・ハーシュの叔父さんの台詞やピアニストになる夢を諦めて主婦になった母親の姿等を通して描かれる。
この映画は自分の人生に実際にあった出来事を描いたのではなく「記憶」を描いたとスピルバーグは言っているが、スピルバーグ自身が監督人生を送る中で味わった様々な心情を反映させていることは間違いないだろう。
④母親役のミッシェル・ウィリアムズは相変わらず巧い。というか、サムの肩を押すのはいつも彼女であり、大人の世界の複雑さを彼に教えることになったのも彼女である。
そして、家族の中でサムが母親に一番似ていると真実をついたのはすぐ下の妹。家族ってお互いをよく見ているし、遠慮なく言えるのも家族ならでは。
そう、これは映画の話でありサムの映画監督への道のりの物語であると共に家族の物語でもあるのだ(『The Fablemans(フェイブルマン家)』という題名がそれを語っている)。
⑤サムとその姉妹たち、サムの青春時代と子供たちに日々を描くと共に、大人たち(父親と母親とベニー)のあわいな三角関係の有り様を描くところにもスピルバーグの巧さが現れている。
⑥ポール・ダノも、いつものややエキセントリックな役ではなく、アメリカの中流階級の知的で勤勉で家族思いの普通のお父さんを実に自然に演じている。
終盤、サムに届いた母親からの写真を見た(サムは気付かなかったので見せてしまったが、妊娠していることが見てとれる)時の、様々な感情が浮かぶ何とも云えぬ表情(顔面演技)が素晴らしい。
⑦映画のラスト、撮影所を訪れたサムが思わぬ巡り合わせでジョン・フォードのオフィスに通されるシーン。
見回す壁には『駅馬車』『わが谷は緑なりき』(大好きな映画!)『男の敵』『捜索者』『三人の名付け親』『静かなる男』『リバティ・バランスを射った男』(ここでも登場)のポスターがズラッと並んでいるオールド映画ファンには夢の一時(ひととき)。
ジョン・フォードを誰が演じているのかと思えば、デビット・リンチだったんですね。映画史上の名監督であり大先輩を嬉々として献じているのが見ていて楽しい。
⑧最後、撮影所の中を未来に向かって歩いていくサムの後ろ姿が爽やかな余韻を残す。
終わり方がズルすぎる
少年の未来を信じた家族の物語
成長期の少年と、それを支えた続けた家族。
家の中では太陽のように明るいママ
時に、月のように透き通ったママを
「ママは泣かさない」と守る少年。
一方、映画へのアイディアは少年を熱狂させた。
「あれはETの場面だ」と思うシーン。
また少年の演出に一変、涙する俳優役のシーン。
キャメラを覗き込み走り回る少年の姿に見た未来。
しかし、少年は悩んで、悩んで、すごく悩んだ。
「映画は事実と違う」それは分かっている。
自分には才能はないのか?と全てを諦めかけた。
そして、あの人の言葉。
ぶっきらぼうだけど、その言葉は少年の心に光を与えた。
、、、終わりはあっという間 !!
「えぇ〜! もっと観たいのに」と心の中で叫んだ。
でも、この後の物語は、少年の未来は、
すでに世界中の誰もが知っている。
この映画の続き、何百倍もの映画の時間をくれた
スティーブン・スピルバーグに感謝したい。
※
人並みではいられない
"映画"を巡るある家族の日常
感想
現在の"巨匠"と呼ばれるに至るまでの半生を、鮮烈なサスペンスパートを取り込みつつ描いた、愛と抱擁の作品だった。
・物語構成
スピルバーグ監督の半生を取り入れた自叙伝作品。幼少期に両親と映画を観た事で、映画の魅力に取り憑かれ、母親から貰ったカメラで日々自主制作映画を撮るサミー。ある日、カメラに映っていたある場面が家族の絆に亀裂を入れる...。といったあらすじ。
スピルバーグ監督が映画業界人になるまでの経過をフィクションの設定と物語ベースの中でも随所に感じられる細やかな脚本だった。特に親の視点主軸で進む本作は、無垢な少年と、仲の良い家族を形作る事に常に徹する親の視点の違いを描き分けられていると感じられた。
個人的には、幼少期の頃から本格的な映画づくりをしていて、家族やボーイスカウト、学校のプロムパーティなどの多人数の環境で披露して生活してきたという部分に現在の"巨匠"となる部分の片鱗を感じられて嬉しくなった。
意外だった要素にサスペンスパートがある。家族のある秘密に気づいてしまう、往年の昼ドラ的展開。この展開は予想していなかったので、素直に驚かされた。
この事実を知った後の家族への接し方についても、スピルバーグ映画らしさを感じられて感動した。
他にもユダヤ系出身である事に対する迫害についても、監督自身の経験から描かれていると思われるイジメ描写に生々しさを感じられた。
・スピルバーグ印
スピルバーグ監督ならではの、美しい場面作りは今作で健在で観やすかった。
総評
スピルバーグ監督の原点を垣間見れる傑作。監督自身の物語としてだけではなく、観客も共感できるメッセージ性の強い物語に没入できた。
主人公のサミー少年が、両親に連れられて初めて映画館で映画と言うもの...
主人公のサミー少年が、両親に連れられて初めて映画館で映画と言うものを鑑賞し、衝撃を受け、その後の人生に大きな影響を与える様は、自分自身にも少し当てはまり、とてもワクワクしました。誰しも、人生で大きな影響を受けたであろう作品との出会いがあり、彼の衝動や、この上手く表現しがたい高揚する気持ちは共感できるのでは・・・?
物語は、いかにしてサミー少年が映画製作に人生を捧げるようになるか、家族との物語を中心に描かれており、特に芸術的センス面で非常に影響を受けた母親との描写は印象的。反対に、映画製作を単なる【趣味】と決めつけ、現代社会に無くてはならない、当時は最新鋭のモノづくりに多大な影響をもたらしたであろう父親との関係も印象的。
1960年代以降のアメリカ社会の描写にも、とてもワクワクさせられた作品でした。
それにしても、彼の映画製作のセンスは、あの時代のかなり幼い時期に既に確立されていることは、非常に興味深かったです。本作鑑賞後、改めて彼の代表作を観ると、新たな発見があるかもしれないと感じます。
想像してたのと違ったが、、、
試写会にて初めて視聴しましたが、生い立ちエピソードは短めで初監督作品から現代に至るまでのエピソードをメインだと勝手に思っていました、、、。
そしたスティーブンスピルバーグ監督の壮絶な家族関係に正直びっくりという言葉しか出て来ませんでしたが母をきっかけに今至ると思うととても考え深い作品だなと思いました。
続編を期待したいですがなさそうです、、、。
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