「For Dad」フェイブルマンズ ruさんの映画レビュー(感想・評価)
For Dad
巨匠の半生をつづる、と聞くと埃っぽいお話かと思いきや、新人監督のデビュー作のようにフレッシュだった!
そして心に残るのは、サミーの父の姿。
封筒で写真が届くシーンは、自分が過去に観てきた映画の中で最も悲しいものだった。
なぜか真綿がちぎられるような痛みを私は感じた。映画館では一滴も涙なんて出なかったのに、夜ふとんの中でめちゃくちゃ泣いてしまったw
起こったことにはすべて意味がある、確かに。即ちスクリーンに映っているものは全て意図されているのだと明かされた訳なのだが、何故最後に、あんな酷い仕打ちを母にさせたのか。
あの写真、本当に素敵だった。あれで良かったんだよ。でもね。
子供にわからないようにナイショ言葉で妻と話すウイットはあるし、そりゃちょっと科学者らしく凝り固まったところもあったけど、家族を放棄するとかそんな父親ではなかった。
振り返ってみるとこの父が一番与え、失い、受難の日々を過ごしたのではないかと思う。
新居でのおどけた仕草も…彼はベニーになりたかったのかも知れない。それを記録してしまう映像の、ある種の残酷さよ。
人生には泥の海を行くような、自分の力ではどうにも抗えないことが必ず起きる。
そんな時、どうやって自分を保っていくか…父の姿にサミーも学んだことだろう。
そして後に、ウエストサイドの朝日とあのシンフォニーが捧げられることになる、その人のことを私も折りに触れ思い出すだろう。
なぜ私達はスピルバーグ監督の作品が好きなのか、ちょっとヒントがもらえるような、軽やかな鑑賞後の気分でした。
コメントする