劇場公開日 2023年3月3日

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「とっておきのラストシーン」フェイブルマンズ 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0とっておきのラストシーン

2023年3月19日
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鑑賞方法:映画館

スピルバーグが、生まれて初めて映画館で観た「地上最大のショウ」に衝撃を受けてから、8ミリ映画作りにのめり込み、本格的に映画監督を志すまでの日々を、家族との関わりを中心に、丁寧に描く。
エンジニアで温厚な父親と、芸術家でエキセントリックな母親のもとだからこそ、あのようなスピルバーグ作品のテーマ、アイデア、作風が生まれたのだと理解できる。
映画作りということでは、それまで見世物としての面白さを追い求めていたが、戦争映画のラストで初めて、役者とともに感情を乗せることによる感動を発見するところや、卒業記念映画のクラスメイトヒーローの描き方で映画の魔術を感じさせるところが、とても興味深かった。
出演者では、母親役のミシェル・ウィリアムスが圧倒的な存在感(共感しづらい難役)。これまでくせ者イメージのあるポール・ダノが、とことん優しい父親役で意外。出番は少ないものの、大叔父が強烈な印象を残す。
それにしても、とっておきのラストシーンがおまけに付いているとは。あの言葉も本当にあったものなのだろうか。ラストショットでカメラが慌てて動くあたりの茶目っ気も好ましく、さわやかな後味を残した。

山の手ロック