「スピルバーグの、ってのなくていいくらい」フェイブルマンズ ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
スピルバーグの、ってのなくていいくらい
想像してたのとまったく違ってた。「E.T.」の家庭に父親がいなく、母親がテンション高めで、妹がお父さんのことを言うと泣いたりするあたりがスピルバーグの子どもの頃に見ていた家族の姿だと思っていたが、もっとディープでした。そして母親と父親の間に起こった出来事。伝え聞いていたカメラを持った神童の姿もチョロチョロっと描かれるのだけど、そのカメラはもっと見てはいけない世界を捉えてしまっていた。
映画は偉人の伝記ではなく、むしろあまり見せたくないパーソナルな秘話。幼年期青春期に自分の手にシネカメラがありました、という少年の話で、虚構に魅せられる少年が、真実しか映さないカメラを通して映し取ってしまった真実に悩み、また真実だけど中身が映ってない、ということに悩むいじめっこがいたり、アメリカ映画といよりは、ヨーロッパのアート映画のテーマのよう。これ、スピルバーグの自伝、とかいう設定なく描いても良かったのではと思ってしまう。いや、フェイブルマンという名前にしてるくらいだから宣伝の仕方よりはその趣向ではあるのだろう。ただ、ラストシークエンスのあの巨匠の登場は問答無用に感動。そしてラストカットのゆらっ、はニンマリする。
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