劇場公開日 2023年3月3日

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「映画は紛れもなく芸術である!」フェイブルマンズ 三輪さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0映画は紛れもなく芸術である!

2023年3月6日
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現在76歳になったスピルバーグの人生も、いかに完璧な軌跡を描いていたかを知る貴重な名作だと思います。初めて大スクリーンで観た列車などの衝突シーンから彼の映画人生はスタートします。おそらくこの映画を観た時のショックは、彼の精神の小宇宙の激震だったのでしょうか。それが、彼の使命を覚醒させ、映画人生の爆進が始まったと思うと感無量です。育った環境は、比較的裕福で、芸術家肌でピアニストの母、ITの秀才である父、賑やかな3人の姉妹に囲まれ、ほとんど好きなことを阻害されることもなく順調に天才性を育みました。もちろん人生には幸福に見えるものばかりが存在することはありません。半分恵まれていれば、残りの半分は不幸に見えることが訪れます。そのリアルさを存分に作品の中で描き切っていて見事だと思います。ユダヤ人であるがための差別、宗教の問題にも触れています。途中まで家族はまるで絵に描いたような仲の良さで協調的なやり取りがありますが、後半は母親の不倫?によって家族は崩壊します。それでも、その経験は今のスピルバーグにとっては、映画を創作する幸せの因になっていると確信しているのでしょう。人生は、さまざまなことが起こりますが、全てが最終的には、幸せと愛に満ちていると言えるのかもしれません。セリフの中で「出来事は全て意味がある」という言霊がありましたが、その意味は全て愛なのでしょう。いずれにしても、こんな名作に触れられた至福の時に感謝します。
追記 少年から青年になる時代に、観る人を楽しませる映画ストーリーの仕掛け作りに精を出していたものが、後年、世界的ヒットを成し遂げた「ジョーズ」(サメ)に見事に生きているかと思うと、天才の人生シナリオはやはり完璧なのでしょう!

三輪