蝶の命は一日限り

蝶の命は一日限り

解説

2022年・第35回東京国際映画祭「アジアの未来」部門出品。同部門の作品賞を受賞。

2022年製作/78分/イラン
原題:Parvaneha Faqat Yek Rouz Zendegi Mikonand

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映画レビュー

5.0現実と幻想を行ったり来たりしながら悲願のために全てを捧げる老女の人生をじっと見つめるドラマ

2022年11月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ダムに浮かぶ島を見下ろす丘の家に暮らす老女。彼女にはどうしても島に渡らなければならない理由があり、何度も何度も役所やダムの事務所に足を運んでは島への立入許可を求めるが冷ややかな態度で追い返される。13年の時が流れたある日彼女は意を決してある行動に打って出る。

主人公以外の登場人物はほとんど顔が映らず、ある時は寄り添うような距離のカットで、ある時は彼女がどこに映っているかを探すのが大変なほどのロングショットでただ老女の姿を追いかける。そしてそれらのカットのほとんどは静止画と見紛うような長回しで、現実と幻想の間をゆっくりと行ったり来たりするのでこちらの時間感覚は麻痺し、いつ終わるとも知れない時間の上をダムの上の島のように浮かんでいるような感覚に陥ります。主人公の悲願が実ったのかそれとも全てが幻想なのか、美しくも朧げな終幕と共に語られる物語はずっしりと重く、市民の慎ましやかな望みがたらい回しにされた挙句に踏み躙られる様には胸を掻きむしられます。

終演後には監督のモハッマドレザ・ワタンデューストが登壇、タイトルに込められたメッセージ、撮影秘話やカットを割ることなく現実と幻想を行き来する撮影手法へのこだわり等貴重な話を聞かせていただきました。個人的に驚いたのはCGだとばかり思っていたカットがロケ撮影だったこと。世界にはまだまだこの世のものとは思えない風景があるのだと思い知らされました。

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よね