ファビュラスな人たちのレビュー・感想・評価
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過去と現在、生と死、現実とフィクションが綯交ぜになる多様性そのものの作品
主人公は5人のトランスジェンダー。彼女達の友人アントニアは自分が死んだらグリーンのドレスを着て埋葬されたいと願っていたのに心ない遺族によって男性の正装姿で埋葬されたことを知った彼女達はアントニアの無念を晴らそうと30年前に共同生活をしていたヴィラに集まる。当時から手付かずのまま放置されていたヴィラには彼女達の思い出の品が沢山残っていて思い出話に花が咲くが・・・からのおかしくも切ない物語。 過去と現在が入り混じるだけでなく生と死の判別もつかないような映像にはいかがわしさと懐かしさが宿っていて、社会から蔑まれながらもお互いに助け合って生きてきた彼女達の気丈さと繊細さによく似合っています。ひとしきり思い出に浸った彼女達が始める儀式に一瞬ギョッとしますが、既存の宗教では救われない魂の救済にはそれしかないという現実を突きつけられて胸が痛くなります。 実際のインタビューとドラマを組み合わせた本作は現実とフィクションの境目も曖昧にしていて、実に多様性に富んだ印象的な作品でした。
イマジネーション溢れる野心作だと─
2022東京国際映画祭 トランスジェンダーの映画であることだけは間違いないけれど、その中身はドキュメンタリーでもありコメディーのようなファンタジーでもあり、ヒューマンドラマでもあって、ノスタルジックでもあり・・・。とにかく何ものにもカテゴライズできないくらいにイマジネーションであふれた作品だったという印象です。 トランスジェンダーにも自由や権利をと叫ばれているいまでは、そういった類の作品はたくさん存在するし、まだまだ特異なものとして扱われているとは思うけれど、かなり当然のように観賞されているような気がします。もはや物珍しくはない、そういった傾向は好ましいのだろうけれど、創作においては、ある種の武器を削がれているような気も・・・ この作品においても、前半はかなりトランスジェンダーを意識した作風となっていて、もうこれだけでは見るのはつらいなぁなんて思っていたのですが、物語が進むにつれ、複雑に絡み合う映像とファンタジックな発想が見事に融合して、決して特異ではなく特別な作品になっていた気がして、感服いたしました。
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