理想郷のレビュー・感想・評価
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「野獣」を意味する原題の多義性。二幕構成の“妙”にも引き込まれる
冒頭シーンは、野生馬を男たちが力づくで押さえ込みたてがみを刈ってまた放す「ラパ・ダス・ベスタス(野獣の毛刈り)」というスペイン北西部ガリシア州の伝統行事。これが原題「As bestas」(英題ではThe Beasts)の由来でもあるという。第一幕の前半は、スペインの山岳地帯の寒村に移住して有機野菜と古民家再生で村おこしをしようと奮闘するフランス人夫婦(アントワーヌとオルガ)と、風力発電誘致で補助金を得たい村人らの対立を、主にアントワーヌの視点で描いていく。インテリの移住者と粗野な村の男たちの対比で考えると、野獣とは村人たちのことかと考えそうだが、前半のハイライトに相当する取っ組み合いを見るとそれが早合点だったと気づかされる。村人からは、自分たちの理解を超えた移住者のほうが“人に非ざるもの=獣”とみなされていたのだと。
閉鎖的な地方のコミュニティーにおける差別と対立を描く映画として、今年は共時的に「福田村事件」「ヨーロッパ新世紀」といった傑作の日本公開が続いているが、この問題の一因は「部外者を自分たちと同じ人間とみなさないこと」なのだと改めて思い知らされる。「理想郷」というアイロニカルな邦題は、2019年の瀬々敬久監督作「楽園」を想起させもする。ここで挙げた過去3作を高評価した人なら、きっと「理想郷」も興味深く鑑賞できるだろう。
後半の第二幕は妻オルガの視点ですすむのだが、観客の多くは「これはありがちな展開とは違うぞ」と感じるのでは。夫婦の愛情と夢と執念に、母娘の愛憎が絡み合い、ぶつかり、地域の閉鎖性とはまた別のところに重点が移っていく。明白な解決策などない難問に、脚本も兼ねたロドリゴ・ソロゴイェン監督が打開へのささやかな希望を込めたストーリーであり、観客それぞれが自分なりの解釈をもとに他者との接し方をかんがみるのが望ましいのだろう。
田舎という地獄
スペインの限界集落に移住してきたフランス人夫婦がいじめぬかれる話。
主役はドゥニメノーシェ(Denis Ménochet)。イングロリアスバスターズ(2009)でユダヤ人をかくまうフランス人を演じて国際的な認知を得た──とされているが、確かに一度見たら忘れられない目をしている。
米俳優のロバートミッチャム(1917~1997)は眠り目と呼ばれて親しまれたが、メノーシュも似たような「ねぼけまなこ」をしている。が、愛嬌よりは禍々しさ(まがまがしさ)が勝る。悪役よりも邪悪な猟奇系の役がこなせそうな禍々しさ。逆に、だからこそ頑なな(かたくな)執念がありそうな感じもある。タランティーノがイングロリアスバスターズの冒頭で彼に重要な役を充てたことが納得の強面だった。
話はそれるが今フランスのパリでオリンピックがおこなわれている。(2024年7月26日~2024年8月11日)
ご覧になっている方はご存知だと思うが、金玉とポリコレ全開の開会式にはじまり、北朝と韓国誤アナウンス、南スーダン国歌かけちがい、五輪旗逆さ掲揚、選手村エアコン無し、選手村食堂肉料理無し、柔道はじめ各競技で誤審連発、セーヌ川汚染、XYとXXがボクシングマッチ、TGVストップ、停電騒ぎ、選手村窃盗被害・・・いったいわれわれは何を見せられているのか──という混沌の祭典が繰り広げられていて、見れば見るほどストレスが溜まる。むかつくから見るのをやめた──という人も少なくないだろう。
パリ五輪は一種の断絶だと思う。不可解判定や数々のエラーで憎しみをつのらせて、差別意識や対立構造をつくるためにスポーツ大会をやっている。と言っても言い過ぎではない。
開会式の芸術監督に対してネット上で殺害予告が行われたというロイター通信の報道があったが、そんなの当たり前。人様の宗教をくそみそに愚弄しておきながら、あの完コピの絵面を「最後の晩餐から着想を得たわけじゃない」と、とぼけてみせた。
ヨーロッパにおけるテロ事件がフランスで多いのも当たり前。(実世界からではなく映画世界から世界を把捉している者の感想に過ぎないが)フランス人てのはだいたいヤな奴だ。そして社会はヤな奴がいるから壊乱していく。テロだろうが戦争だろうが物事の端緒は人をばかにすることだ。
オリンピック開催中に乗じて、そんなことを思ったのは、この映画理想郷(原題:As bestas(野獣))が外国人嫌悪の映画だったから。
といっても、映画内でヤな奴はスペイン人で、ドゥニメノーシェ演じるフランス人は徹底的にいじめられる側。
ただし、いじめられるきっかけは、風力発電の設置に反対したから。フランスから移住してきた新参者なのに、村中が賛成している風力発電に反対して、村には発電会社から契約金が支払われないことになる。すなわち主人公は村に嫌われるようなことをしていて、やや不自然さはあったが、陰鬱ないじめと緊迫する演出手腕に引き込まれた。
サムペキンパーのわらの犬(1971)という映画がある。数学者の男(ダスティンホフマン)が妻とともに妻の故郷に引っ越してくる。が、村の青年たちから嫌がらせをうける。
都会の教養ある人間が田舎へやってきて、想定外の迎撃を浴びる──という構成の話はよくある。つまり都会人は田舎ではゆっくりと時が流れ、そこに住む人々はのんびりで柔和だろう、と想像する。ところがどっこい、この世で田舎の人間ほど嫌らしい人間はいない。限界集落にいたっては魑魅魍魎の住処と考えた方がいい。拠って田舎は猟奇という映画的ダイナミズムを提供する材料となりえる。たとえばFabrice Du Welz監督のcalvaire(2004)は変態村という邦題がつけられている。あるいは名作The Texas Chain Saw Massacre(1975)は、田舎という場所は人面皮をかぶった巨漢がチェーンソーをぶん回しながら追ってくるような所だ──と言っているわけである。
この映画も田舎の嫌らしさを巧く表出させている。
映画は批評家からも褒められゴヤ賞でも多部門受賞をはたしている。社会派のテイストもあるが、主眼はどろどろした敵意や憎悪、田舎の陰険さのあぶり出しで、耐えがたいほどの緊張感で表現されている。それがちょうどパリオリンピックのたとえばjudoを見ているときのストレスフルな感じに似ていた。という話。
imdb7.5、RottenTomatoes99%と86%。
なかなか手が届かない「理想郷」の遠さを痛感する一作
田舎暮らしにあこがれて移住した先が閉鎖的な共同体で、新参者がいびり倒される…という状況はSNSや報道の話題として見聞きすることはあるし、そうした排他性や因習を題材にしたホラー作品も決して珍しいことではないけど、内容を踏まえれば皮肉としか言いようのない本作もまた、一見そうした閉鎖性の恐怖を扱った作品であるかのように思えます。少なくとも冒頭では。
だがしばらくして、理想の農業の実現に燃える二人の移住者、アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)とオルガ(マリナ・フォイス)の側も、共同体の事情を顧みず我を通したり、非友好的な言動で住民に接したりと、「どっちもどっちじゃん…」と思える側面が見えてきます。
アントワーヌと住民の男たちとの緊張が高まっていく状況を描くのが前半部なら、後半は一転してオルガの視点で物語を綴っていきます。そして家族の反対を押し切ってでも彼の地で農業を続けようとするオルガの姿に、「理想郷」という題名の意味が重くのしかかってきます。
ポスターでは新天地の「地獄」さ加減や都会と田舎の対立を打ち出すような文句が踊っていますが、観終わってみるとちょっとそうした単純な対立構図では捉えきれないものを感じました。
嫌がらせの手法がやたらと手が込んでいるので、「そんな仕込みしてる時間があるなら話し合えよ!」と思わなくもなかったんですが、この物語って実際の事件に基づいているんですよね……。
リゾート狂
新しく建ったマンションの住人の訴えで、段ボールの集積場所が目茶苦茶遠くなったことがある私にとって、フランスからスペインの田舎にわざわざ引っ越してきて、地元住民にとっては棚からぼた餅的な風力発電誘致に反対するアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)にはむしろ反感を覚えるのである。余所者のクセにコミュニティーのしきたりにクビをつっ込むんじゃねえと、暴力にうったえる野獣兄弟の気持ちもまんざら分からなくもないのである。
スペイン人監督ソロゴイネンによれば、2010年にオランダ人カップルに起きた実際の事件に基づいて作られているそうで、旦那が謎の失踪を遂げた後でもなぜかその村に居座り続けた奥さんの気持ちにフォーカスを当てたかったらしい。なるほど、映画前半は野獣兄弟の段々エスカレートしていく嫌がらせに怯えるアントワーヌを、後半は毅然とした態度で普段と変わらない生活をし続ける奥さんオルガ(マリーナ・フォイス)を主人公にした2部構成になっている。
どう考えてもアントワーヌを殺したとしか思えないお隣さんの弟に何故かなつきまくっているジャーマンシェパード君が、汚名挽回とばかりにアントワーヌが隠し撮りしていたビデオを発見し大手柄と思いきや....バカ犬は最後までやっぱりバカ犬のまま、クソの役にも立たないとはまさにこの犬のことなのである。身の安全を心配した娘が母親オルガをフランスに連れ戻そうとするのだがこれまた徒労におわり、証拠のビデオも修復不可能とくれば、単なる引き延ばしとしか思えない冗長な後半は退屈この上ないのである。
なんだか分からない内に旦那アントワーヌの遺体が発見され、なんだかわからない内に野獣兄弟も逮捕され、めでたしめでたし....この映画オチがよく分からないまま終幕してしまうのだ。この村の自然は素晴らしい、だから風力発電には反対といわれてもねえ。糞まみれの牛小屋を掃除して近所の居酒屋で安酒を飲むぐらいしか楽しみのない兄弟や村の人々が、ジェントリフィケーションのロマンチシズムなど理解できないことぐらい、アントワーヌだってわかっていたはずだろう。
スペイン・コミュニティーの暗部を描こうとしたら、途中でお節介なフランス人の厚かましさを非難せずにはおれなくなった。なぜなら、EU的グローバリズムが騙るウソが次々と白日の下にさらされている現在、ソロゴイネン監督のスペイン人としてのナショナリズムが目覚めたとしても不思議ではないからなのだ。映画中盤の選手交替劇は、そんな映画監督の心境変化を如実に現しているとは言えないだろうか。全てをバカ犬ティアンのせいにして。
夢を抱いた第二の人生が地獄と化していく、実話が基となった心理スリラー映画。
『理想郷』というタイトルのイメージからは程遠い、序盤から終始不穏なムードが漂い続ける心理スリラー映画。
フランス人熟年夫婦が、第二の人生にスペインの小さな村に移住する。夢であった新天地での暮らしが、あることがきっけかで地獄と化していく様子が描かれる。これが実際にスペインで起きた事件がベースになっているというから驚愕でしかない。
ことの発端は、移住者のアントワーヌ・オルガ夫妻が、土地をめぐる問題で地元住民と対立、確執が生じてしまったこと。夫妻は地元住民から執拗に嫌がらせを受けるようになり、脅しと報復の応酬合戦は次第に狂気をおび、緊迫していく。
山村の美しい自然を恩恵と受け取るアントワーヌ・オルガ夫妻と、貧困と閉塞感の元凶と捉えている地元住民。短期間でもその土地を愛して住んでいる者と、嫌悪しながらも長年住み続けている者では、どちらが「ここは私の故郷だ」と声高に主張できるのか。観客は正解のない問いの難解な答えを求められる。
いずれにせよ、猜疑心と執着心に囚われた狭量な思考に陥っていては、「理想の故郷」など、誰であってもこの世の何処にも見つけられないだろう。
本作は、第35回東京国際映画祭で東京グランプリ(最優秀作品賞)・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞、第37回ゴヤ賞では主要9部門など、数々の賞を獲得。世界で絶賛され、高い評価を受けている。原題は『As beatas(野獣たち)』。
フランスからスペインの田舎に移住してきた夫婦が村民と敵対していく。...
フランスからスペインの田舎に移住してきた夫婦が村民と敵対していく。
直接対立するのは村民の中の特定の兄弟だけだが。
最初は悪ふざけレベルの嫌がらせだったのがエスカレートしていくのはなかなかにスリリング。
もう一つすっきりしないエンディングだったが、最低限の後味は保たれていたか。
対立の最大の原因となった風力発電だが、なぜそこまで頑なに反対したのだろう。
原子力発電所でも建設されるのなら話は別だが。
ひとつの映画でふたつの映画を見た
最後、アントワーヌの妻オルガの笑みが映し出されたと同時にいい映画を見た喜びに包まれた。
ヨーロッパの国の人なら多分殆どが持つであろう、フランス語やフランス人に対するある特殊な思いが強烈に出ていた。すかしやがって。カッコつけて。高慢ちき。憧れと羨ましさも少しないまぜ。でもアントワーヌの「ここは僕の故郷だ」も「村の人の為になりたい」もむかつくほどあり得ない発言だ、たかだか2年しか住んでないのに。来る前にもっと徹底的にスペイン語を勉強してこいとも思った。若い人間が皆離れていく過疎の村に孫もいる年齢のよそ者がエコだ、オーガニックだとEUの手下のように偉そうに振る舞うな!庭でチェアに座って読書、湖では湖岸で寝そべったり泳いだり。そんな典型的バカンス行動も✖️でした。あの兄弟は極端だが間違ったことは言っていない。
でも完璧な人間なんていない。夫アントワーヌの欠点も含め愛していたオルガ。娘になじられても決して曲げない強さを持っている。淡々と静かで粘り強い。そういう自分に誇りを持っているから、フランスにいる自分の昔の友達が自分をなんと言おうが気にしない。彼女はもうそんな友達なんて要らない人間になっていた。そのことを娘は心から身にしみて理解した。このシーンはとても良かった。
嫌がらせもするが(兄弟の最後の仕打ちは許せない)、面と向かって何が気に食わないのか、なぜなのか、憎しみや軽蔑や傲慢や劣等感もぶちまけつつ、自分が思うことを相手に言葉で直接伝える場面が多い点もよかった。日本だったらそもそも言葉による口論しないで・できなくて、雰囲気圧力&無視&無言でよそ者をいびり出すだろう。
前半は音楽がなく不穏な音ばかりで怖く効果的だった。後半になるとチェロの音が流れ映画を見ている側の気持ちも変わってきた。映像も構成も脚本もキャスティングも最高の素晴らしい映画だった。
風力発電
日本も風力発電の施設を北の海で作っているが、低周波で頭が痛くてなり台風の時発電しない。
スコットランドでは風力発電がだかんだが、
風が吹かないと発電しないのでディーゼルで羽を回してる。
こんな事に振り回され情けない。
主人公が乗っているのが、ISUZUのディーゼルトラックですが、ディーゼルにおいて日本一の技術なので壊れるのおかしい。
スペインらしい映画でしたが、主人公がフランスなので、フランスらしい我が見栄かくれ、フランス人の口喧嘩きつい。
最後のシーンでニヤと笑うのが全てですね。
娘の言った事が1番共感出来た
フランス人の夫婦アントワーヌとオルガは、スローライフを求めてスペインの山岳地帯にある小さな村に移住した。しかし村人たちは貧困問題を抱え風力発電を誘致してるのに、それに反対してた夫婦とうまくいっていなかった。特に、近所に住む兄弟は新参者の夫婦への嫌がらせが酷く、ついにアントワーヌは・・・という話。
まず、フランス人ならフランスで同じような星空の綺麗な場所は無かったのか?
何で皆んなが賛成してる風力発電に反対するのか?
あの場所に来てたった2年の奴に反対されたら、賛成してる人たちは腹立つだろう。
例えば、韓国人夫婦が日本の田舎に移住してきて、そこに長く住んでる日本人住民の大多数が賛成してる事に反対してたら恨まれても仕方ないと思った。
ビデオカメラが発見され、カードに犯行の動画が残ってるかと思ったらダメだったとか、とにかくイライラしたまま消化不良で終わってしまった。
父親が消息不明になった後、娘が来て言った言葉が1番共感できた。
それと、あの犬はなぜ近所の兄弟になついてたのか、これもわからなかった。
地方移住には相当な覚悟が必要
地方移住のトラブルは日本でもよく聞く。
「憧れの田舎暮らし」は、都会の人たちが抱く美しい幻想だと思う。
そういう発想自体、地元の人を見下していることが多い。
閉鎖的な地方では、そこでのローカルルールが全てで、一般的な常識が通用しない世界なことがままあるようだ。
移住者と元からの住民との軋轢が生まれがち。
主人公夫婦の隣人兄弟は、ともに女っ気のない独身。心底自分たちの境遇を呪っているが、自力で自分を救うことは全くせず溜まった鬱屈を隣人に向けるという絶望的に頭が悪く無知蒙昧粗野で凶暴、最悪のご近所さんだ。
主人公夫婦も、貧しい村人にとって補助金を落としてくれる福音みたいな風力発電誘致に、景観を損ない、自らが計画した村のリゾート化の妨げになる、という理由で反対していて、反発を食らうも当然な気がする。彼ら(特に夫)が「村のために」やっている、と思っているのも、地元の人たちにはウザいと思われていそう。主人公夫婦、村人に対して上から目線だし。
警察の動きが鈍いのもありがちだと思う。彼らも地元民なのだから。
元になった事件があるとのことだが、さもありなん。
移住する際は、場所の選定はより慎重に
間違っても村を二分するような揉め事の種があるようなところには決めないほうが良いと思う。
慎重に決めても、隣人ガチャに外れたりする。
村八分や嫌がらせがある可能性、撤退する可能性も視野に入れて、相当な覚悟を持ってすべきでしょう。
前半、後半でカラーが違う話になっているが、どちらも長い。
特に後半、なかなか進展せずちょっと苛つくし、あのラストは消化不良。
犬、隣の弟に懐いててちょっとムカついた。ご主人さまを守ろうよ。
懐いちゃって吠えないから番犬にならなくて、主人公夫婦への嫌がらせが野放しになったじゃないの。
そして男達はいなくなった
Iターンでフランスからスペインの田舎へ移住した夫婦と地元住民の軋轢を描いた作品。
日本でも、過疎地への移住者や独立系の農家が古参のコミュニティからあの手この手で嫌がらせを受けるルポが各地から取り上げられ、事件化することも少なくない。
移住者夫妻の夫・アントワーヌに憎悪を隠すことなくぶつけてくる隣人兄弟や、二人の行いをあえて止めない村人たちの不気味さが生々しかった。いじめの主犯と外野そのままの構図は、閉鎖的なムラ社会に馴染みがない人にも異様さが伝わったのではないだろうか。
物語では海外企業の土地買収に関して賛否が分かれたことが衝突の発端となっているが、恐らくこの大金が絡まなくともアントワーヌと隣人兄弟はぶつかっていたのだろう。
先細りの家業を畳んで街に移る拠点や資金のアテもない村の人々が、土地や旧来の生き方に固執せざるを得ない事情も、まとまった資金をもってセカンドライフを送りに来たよそ者に妬みに似た気持ちを向ける心情も理解できる。そこで一線を越えてはいけないが、日本で事件化した数々の事例を思うと、気に食わない相手と毎日顔を合わせて少しずつ妬みや憎しみを募らせるうち、仕掛けた側・仕掛けられた側の誰ひとりとしてそうならないとは言い切れないのが恐ろしい。
物語のもう一つの軸が、移住者夫妻の妻・オルガの不屈の精神である。娘のマリーが指摘する通り、村に留まる選択は危険としか言えない。その胆力がどこからくるのか、彼女の精神にもっと触れたいと思った。
映画.comの本作の論評に掲載されている通り、最終的にはマリーはオルガの選択を認め「羨ましい」と伝えるのだが、そのシーンでマリーの表情がはっきりしないことや、街に帰る別れのシーンでの涙を見て、自分は「羨ましい」をポジティブな意味にとらえていいのか判断に迷った。マリーが羨ましいと思ったのは、人として女性としてそれだけ全霊を傾けられる番に出会ったことなのか、父と母の絆なのか、命がけの決意を貫く意志の強さなのか、夫が不在でも母や妻としての姿を貫く誇りなのか、芯をもって生きられる強さなのか。
果たしてマリーは「そうなりたい」という意味で「羨ましい」と言ったのだろうか。次元の違う崇高な強さに触れ説得を諦めた末に出た一言ではないのか、と深読みしてしまう程にオルガの不屈の姿勢は圧倒的だった。
犬は無事だが、ちっとも活躍しないという点が近年の映画作品の中では珍しかった。
ご近所トラブルにはご用心
実話を基にして住民同士の対立を描いたサスペンススリラー。夫を中心に描いた第1部と妻を中心に描いた第2部の2部構成となっていてストーリーが上手く構成されている。欲を言えばもう少しハラハラする展開が欲しかったが、どこにでも有り得るようなご近所トラブルが題材であるため身近な問題として実感することが出来ました。
2023-204
マリーナ・フォイス
移住した夫婦が村八分される内容で、
『ヨーロッパ新世紀』に似てるな…
つまらなくないけど特別に惹かれるものは…
って感じで観てたけど、
章分けしたくなるラスト50分ぐらいは、すこぶる面白かった♪
奥さん役のマリーナ・フォイスは、髪を切った状態だとリンダ・ハミルトンに似てる♪
リンダ・ハミルトンが大好きな僕は、テンション激上がり!
存在感あるし、カッコよかった♪
ここで終わり!?と思ったけど、
この終わり方、好きです♪
日本って平和だなあ。
自家製農園を開く夢を持って、スペインの田舎に越して来たフランス人と、赤貧にあえぐ現地人とのイザコザ。
気に入らないからといって、なにも殺さなくても良いだろうと、思うのだが、それも日本と言う国の中から見た感想だろう。
アメリカの銃撃ニュースの多さから、世界では、この映画のようなことが、実際起きているのだろう。
越す前のリサーチが足りなかったんじゃないかとか、農園で住民を雇って利益還元すれば良いんじゃないかとか、理想論的な、対応策はいくらでも思い付くのだが、この映画を見ると、そんなのは、あまいと感じてしまう。
異邦人
もしも、セカンドライフで移住した田舎の隣人が粗野で乱暴者だったら⁉️
隣人の兄弟がホントにキッツいキャラで、こんな兄弟は嫌だランキング1位確定ですよ
主演の丸山ゴンサレスに似た夫役の人、「悪なき殺人」に出ていましたね(また全然違う役で)
後半、娘がフランスから来て母親と口論するんですが、母親の主張が日本人には無い感覚で、フランスの親子関係が伺い知れます(全員ではないだろうけど)
結構な胸糞映画ですが、女(母)は強しの内容となっております(あと、犬と羊が可愛い❤)
理解に苦しむ
「スローライフに憧れて田舎に移住したら村社会独特のイカレた世界で地獄だった」系の、実話に基づく物語。
主人公夫婦が命の危険を感じながらもあの土地にしがみついたことや、村の人々に対して敵意剥き出しの態度を貫いたこと(まぁ気持ちも分かるけど)、最悪の出来事が起きてからの執着。意地なのか?引くに引けないのか?この辺りへの共感度がなかなか上がらず、最後まで理解ができませんでした。
娘が母親へ言った言葉たちは至極真っ当で、でも素直に受け入れなれない心境なのがもう、そうゆうことなのでしょう…。
作風としても終始ゆっくり緩急なく進む展開に退屈に感じてしまったり、あんまり合わなかったです。
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