「自らを棄てる」山女 uzさんの映画レビュー(感想・評価)
自らを棄てる
クリックして本文を読む
先代の罪で村八分の扱いを受ける一家。
現代でも、子の罪はある程度の年齢まで親にも責任はあるが、親の罪を子に求めるのは胸糞が悪い。
献身からか諦観からか、父を庇った凛は遺児を捨てていた山へ自らを棄てる。
ここに説得力を持たせるのが山田杏奈の目の力で、『ミスミソウ』で初めて見た時は本当に上手く笑えないのかと思ったほど。
明るい役もよいが、抑圧された中で意志を光らせる役が彼女の真骨頂かと思う。
家父長制の強過ぎる時代ゆえか、「すまん」すら言わないが、罪悪感や葛藤が滲む様を永瀬正敏が好演。
だからこそ、“お役目”を果たす前にかける「よくやった」に意味が灯る。
短い出演ながら、絶妙なツンデレで泰蔵への愛情を表現した三浦透子他、脇にも隙がない。
照明をあてない暗い画面や、昔言葉と方言が混じった台詞は、理解を妨げないギリギリのライン。
度々映される山も、大袈裟に綺麗とか雄大に撮らず、でも畏敬を抱かせるロケーションとアングル。
キャスティングや音楽など、全体としてとても真摯さを感じた。
惜しむらくは、題に冠する割に山で生きる凛の描写が薄いこと。
山男との交流ももっとじっくり見せてくれれば、余韻が格段に深まったと思う。
こんなに全く笑顔の無い作品も珍しい。
コメントする