Pearl パールのレビュー・感想・評価
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もはやホラーじゃないと思うけれど、温故知新で生まれた新ジャンル。
ホラーというジャンルを入口にして、さまざまな時代のジャンル映画を訪ねて回る。なんだかタイ・ウェスト監督の映画史探訪みたいな体を成してきた『X』シリーズの第二弾。今回は時代設定こそ無声映画の1910年代だが、表現としては『オズの魔法使』に代表される夢見るようなテクニカラー映画を再現しつつ、『何がジェーンに起こったか?』のサイコスリラー味をミックス。正直、ホラーとしては怖くないというか、もはやホラージャンルからは逸脱して、いま改めて当時のスタイルを模倣することで、なんだか古くて新しいものが生まれている面白さがある。そして形式だけの面白さではない。完全に主演のミア・ゴス劇場であり、もうミア・ゴスの陽性なのに暗さを秘めた表情を見ているだけでお釣りがくる。誰もがノックアウトされるであろう、常識破りの長回しも、ミア・ゴスへの信頼故に生まれたクライマックスなのだろう。エンドクレジットの表情は、監督が止め絵にするつもりだったのに、カットをかけずにカメラを回し続けたら撮れたらしい。誰もが想定していなかったパールの涙が、行き当たりばったりで撮れてしまったのも、映画の神が微笑んだという気がする。
彼女と我々の間にある「何か」とは
以前「そう言えば観てなかったな」くらいのノリで「X エックス」を鑑賞。
あるようでないストーリーと、絶え間なく押し寄せてくるエロとグロの描写に、一体どんな感情を抱けばいいのかと呆然として数日。
やはりここまで来たらちゃんと「Pearl パール」も観ておかねばならないと覚悟を決めて「Pearl パール」も鑑賞。
そして理解した。
「Pearl パール」あっての「X エックス」
でも絶対に「X エックス」を観てから「Pearl パール」を観るべき。
きっと逆なら、ここまで納得は出来ないと私は思う。
「X エックス」に出てきた理解不能な怪物が「Pearl パール」によって我々の行く末かも知れないと思い知らされる。
パールと言う女性は、窮屈でつまらない農場暮らしに嫌気が差し、自分の可能性を信じて常に夢を見ている。
その一見子供じみた少女のような夢想は現代の私達が持つ感情とひどく似ていて。
愛されたい、認められたい、君が一番だと言われたい。
そう、つまりは「承認欲求」
甘い香りのする方へ迷い込み、依存し、少しでも拒絶されたと感じれば排除する。
パールと私達を分けるのは、一体何なのか。それはきっと、パールが持っていない「何か」
それは理性だったり罪悪感だったり、はたまた自分への正しい評価だったり。
パールが「X エックス」で性的行為に拘っていたのは、恐らくそれがパールが唯一認められた「魅力」だったからではないか。
歪んでいたとしても、間違っていたとしても、求められたい、認められたい。
焼け死んだ母親の亡骸に寄り添い、綿菓子のような甘い夢を見ていたシーン。
あれこそがパールが本当に求めていたものなのだと思う。
良い子ねパール、だいすきよ。可愛いパール、愛してるわ。ずっとずっとママの側にいてね。あなたはママの誇り。
本作でも「X エックス」でも、パールの夫ハワードの感情が掴み切れない。
最初は殺人による快楽に取り憑かれているのかと思っていたが、今改めて思えば、ハワードの行動はパールへの究極の愛なのかも知れない。
おぞましさと恐怖を感じるあのラストシーン。
彼女と私達との間にある「何か」とは何なのか。
笑顔の裏側
凄い!これはホラーじゃない。新しいジャンルの映画。家庭環境がここまでさせるってリアルな話。これを見て私は幸せな家庭で育ってたんだなと思わされた。
窮屈な家庭生活がいつの間にか人を殺す事に繋がってたとは。でもそうだよね。なんでも手に入る子見るとみんな妬ましく思うもんね。
つまりこの映画は愛情不足をテーマに描いているのだと思った。でもお洒落に殺してパールの素敵さを引き出してくれる話だった。
殺しちゃうけどスターにある意味なっていた。
みんないなくなった後どうなったか気になるけど、、友達可哀想だったな。心から信頼してたはずなのに。
嫉妬深さが勝っちゃいましたね。
話がわかりやすくて良かった。
悲しくも切なくも笑顔が怖い映画だった。
パールに共感出来る部分もあると思う
色鮮やかな映像、不穏な音楽、主人公パールの狂気じみた表情がジワジワと怖さを滲ませています。
そういう不気味さもこの映画の目玉だけれども、
映画終盤、パールが自分の本質を吐露する独白シーンがなんとも切ない。
私には何かが欠けている、なぜこの家に生まれたの、なぜあなたは全てを手に入れるの、……。
不公平・不平等な世の中で恵まれない立場にいる者の魂の叫びのように感じた。
イカれてるキャラクターとされていても、こういう部分は共感出来るのではないでしょうか。
それでいてその後、飽くまで狂った自分であり続け、犯行を重ねる。
芯の通った人物だと思う。
パールが可哀そう…あんな毒親だったら逃げ出したくなるね
明確な夢を持ってるのに家庭環境のせいで縛られてるパールが可哀想だった。あんな毒親だったら逃げ出したくなるね。でも植物状態の父の看病と、農場の管理を任されて自分の時間を奪われた母の気持ちを思うとおかしくなるのも分かる。
オークションに落ちてから義理の妹と長話した後、走って追いかけて斧でぶった斬るシーンが1番怖かった。
過剰な演出とかないのがシンプルに恐怖を感じた。「誰にも言わない」って言われたのに結局殺しちゃうんかい...。
エンドロールでのパールの泣き笑い長回しが強烈。ハワードはどんな気持ちでパールを見てたんだろう。エックスで2人が長年暮らしてるの確定してるけど、どうやってパールはハワードを説得したのか気になる。
俺だったら帰宅した日に死体の食卓なんかみたら速攻逃げ出すけどな。パールは正直に全部打ち明けて2人で秘密を一生共有することを選んだとか?そしたら強烈な絆で結ばれそう。
鑑賞後にじわじわと…
気持ちの悪さが湧き上がってくる。
ストーリーはよくある設定で、
厳格な母親と病気持ちの父親に挟まれ若さを謳歌しきれてない田舎娘が映画の世界に憧れ、街で出会ったイケてる男性に惹かれて、抑圧されてた自我が爆発して暴走する話。
よくあるといえばある話で、途中から田舎娘が狂って殺人を犯しまくるのもあるっちゃあるのに、鑑賞後にじわじわと気味の悪さというか、なんかモヤモヤしたものが残る。
なのにまた『エックス』をまた観たくなるという謎の現象に陥ってしまう。
これがこの映画の魅力なのかなと感じた。
しかし、主人公のパールとその両親がおかしいだけで、この人達の周りの人間に悪はないように思う。
特に義妹はあんなに可愛いのに、牧場で働いてるパールを見下す事なく対等に接しているし、最後まで味方でいてくれてた。
だからあの結末は可哀想だったなぁ。。
映像技師も見る目なかったね、、カッコよかったのにー
最近観た中ではかなりエグい
殺人映画大好きだからウキウキで観たらなんとも悲しくなった。美しい殺人鬼にはつらい現実があった。サイコちゃんだけどそれは家庭環境のせいで。でも親の言う事も正論ではあって。毒母だけどそれもその背景をみればそうならざるを得なくて。人間の嫌なところを煮詰めた話。ただ義理妹は相談に乗ってあげたら勝手に殺人を聞かされ、オーディション合格も気遣って隠してたのに正直に言ってと言われたから伝えたら殺されるであまりにも可哀想。何も悪くないのに。いや、でもねえ、どん底にいる人間からしたらああいう人間が1番の「罪」なのかもしれない。嫌だけど共感してしまう。映画館男もだが、優しいふりをしてその場をにごそうとするって火に油。恐怖を隠してもう帰らなきゃって言ってる顔を見ると、ああ離れていく、裏切り者、偽善者、怒り。無敵の人のレシピだなあと思いました。それをされてるパールちゃんが可哀想ってなんで私サイコパスに同情しているのか=これが人間だからかな?いや、私も普通じゃないのかも。
前作より狂気じみてる
Xを鑑賞済なので、鍬や池が出てくる度にドキドキしてしまった(笑)。おばあさん、若い頃の方がぶっ壊れてる感じがして、ただただ怖い。
周囲の人(特に義理の妹)が不憫でならず、心の中で「逃げてー!」と思うことも多数。
前作を見返してないから分からないけど、地下で吊るされてのはお母さんなのかな?
場面転換やエンドロールなどが、昔のアメリカ映画(サウンド・オブ・ミュージックみたいなの)を思い起こさせて、それがまた怖さを引き立てる。本当はそういう映画のヒロインをやりたかったんだよね。
エンドロールの、だんだん壊れていく笑顔、かわいそうなんだけど…やっぱり怖い。
スターになるの
原題
Pearl
感想
映画史上、もっとも無垢なシリアルキラー誕生。
夢見る少女はいかにして無慈悲かつ凶暴なシリアルキラーへと変貌していくのかー
エックスの前日譚となる作品であり3部作で構成される。
ミア•ゴスの怪演は見事でした。パールに引き込まれてしまいました。
エンドロールの長回しの笑顔はすごく気持ち悪かったです。
ガチョウ食べたり、生首食べたりワニのセダも活躍しましたね笑
ウジ虫だらけの豚の丸焼き、死体の食卓、ミッツィーの切断は凄かったです。
※オルヴォアール、哀れなジョニー
新しいギャグ?😱
今夜(2024/06/28)観ました。
パール(ミア・ゴス)さんは、農場を営む家庭で母にこき使われ、自身の夢を叶えることも出来ず、病んだ父をケアしつつ家事手伝いや農場の作業を毎日させられています。
折しもスペイン風邪が流行している年代(1918年)の話しで、COVID-19で味わった3年余りの記憶を、嫌でも思い出してしまいます。
パールさんは銀幕のスターになるのが夢で、あるキッカケから海外に羽ばたくチャンスを掴みます。夫は出征で不在、母は農場と家事にかかり切り、父は介護なしでは生きられない状況をどう打開するか。最初から最後まで目が離せません👀💦
本作は狂気の祭典とでも言いたくなるような胸の悪くなるシーンが随所に見られますが、観ていて笑いが絶えませんでした😅もう笑うしかないとでも言いましょうか(笑)『スウィーニー・トッド』と同じジャンルといえば分かりやすいかも知れません✂️✨
ミア・ゴスの6分に渡るセリフ、エンドクレジットの貌(顔ではなく貌)だけでも十二分に観る価値がありますが、出来たら100分ちょっとの本作を堪能して下さい☆
苦手な人は適度に休憩でしながらお楽しみ下さい。
愛と狂気
怖かったし面白かった!個人的に結構好き。びっくりするって感じの怖さではないけど、ずっと色んな意味でドキドキしてた。
序盤すごく平和な感じというか、これがホラーになるの?って思ってたけど、思ってたよりしんどくなってしまった。
パールがずっと可愛くてずっとこわいんだけど、両親のこととか、夢とか、共感できる部分もあるのが人間らしさを感じて好きだった。他の人のパールをだんだん怖がっていく演技が良かった。
もっと愛が欲しかったのかなあと、、悲しくて可哀想で、でもちゃんとイカれてるパールを演じ切ったミア・ゴスさんすごい〜( i _ i )
エンディングのずっと無理して笑ってる感じ本当につらくてこわくて苦しい。最後ハワードがパールを抱きしめてあげてほしい…!
タイトルなし(ネタバレ)
〘 告白系サイコスリラー 〙
今作で脚本とエグゼクティブ・プロデューサーとしてもクレジットされているミア・ゴス主演作。前作でタッグを組んだタイ・ウェスト監督との『X エックス』の続編の『Pearl パール』。3部作になるらしく『MaXXXine』(原題)へと続く。
眉薄のなんか凄い名前のゴスさん、実は本名も凄くて過去にも『マローボーン家の掟』(2017)や『サスペリア』(2018)でも拝見していた事に気づいた。
ミア・ジプシー・メロ・ダ・シルバ・ゴス(1993年生まれ)シャイア・ラブーフと結婚してた。
ミアゴスの怪演!
ミアゴスの演技が素晴らしい!最後の泣き笑いのドアップが頭から離れない。鼻水垂らしながら大泣きするシーンも自分をよく見せようとするのではなく、ほんまに役者やなあと心から尊敬。
特定の人たちの死亡フラグたちまくりで、力が入ってしまった。最初の彼氏も金持ちの妹も悪いやつやないのにかわいそうやね。
三部作やけど、次は一体どうなるのか楽しみ。
ミア・ゴス劇場
今年鑑賞した映画を今になって思い出しながらレビューをしているわけだが、この作品を語る上で非常に印象に残ったのはミア・ゴスのぶっ飛んだ演技が非常に素晴らしかった。最後までミア・ゴスの虜になる作品でした。
内容は実家である農園から出たかったにも関わらず農園の跡取りを考えた親の意向により跡取りとなる方と結婚するが、戦争に赴いたことによりパールの心の支えは大好きな映画を見てスターになることを夢見て家畜を相手にダンスをしたりすることだが、そんな娘を厳格な母親は夢ばかり見てと叱責します。
娘は理解を示さない親に苛立を募らせるようになり、最終的には母親との些細なことでいざこざになり母親を殺してしまったことから、いけない方向にスイッチが入ってしまう。理解者だったはずのミッツィーでさえも嫉妬から殺害してしまう、不倫相手も、そして介護をしていた父親も。ほんの些細なことで人が変わり、快楽を覚えてしまえば堕ちるところまで堕ちるんだなと思いながら観ました。
相談する相手が身近にいて、話ができる環境なら違っていたのかもしれませんね。エンドの夫が帰還しテーブルを囲むように亡くなった両親の遺体に虫が寄っているのを見て絶句するのとは裏腹にパールは待っていたよ、と笑顔でお出迎え。
純真で無垢なように見えて怖すぎる…😨
夢と狂気の狭間で、逃れられぬ現状に堕ちる
1970年~80年代のスラッシャー・ホラーへたっぷりのオマージュ『X/エックス』。
ポルノ映画撮影で田舎町を訪れた若者たちを襲う惨劇。
殺人鬼の正体は、農家の老夫婦だった…!
とりわけインパクトを残したのは、老婆パール。
何故彼女は稀代の殺人鬼老婆になったのか…?
A24初の3部作。第2作は時を遡り、その起源を描く。
1918年、テキサス州の田舎町。
出兵した夫の帰りを待つ少女パール。
彼女の唯一の趣味は、映画。華やかなミュージカル映画のスターに憧れていた。
私も歌って踊って、あの世界へ…。
が、現実は程遠く。こんな何も無い田舎で農業の仕事。身体の不自由な車椅子の父の介護、厳格な母の説教に毎日毎日毎日毎日…。
ある日町で映写技師の青年と出会い、彼の計らいで無料で映画を見れ、より一層憧れを強くする。
またそんな時、義妹からダンスのオーディションの話を聞き、夢を叶えようと受けようとするが…。
前作『X/エックス』と連続して撮影。
でありながら、作風が違うのは開幕から一目瞭然。
音楽やOPクレジットや画作り…ハリウッド往年の作品を彷彿。ヒロインの設定などメロドラマだ。
終盤のオーディション。イマジネーションも合わさって、カラフルなミュージカル。
一応ホラー映画で、この異色の作り。
続編(前日譚)でも同じ韻は踏まない。俊英タイ・ウェストの才気がまたまた光る。
ユニークな趣向を凝らしながらも、全編を覆う不穏な雰囲気。
何故無垢な少女が殺人鬼になった?…と宣伝文句で使われているが、100%純真無垢ではない。
小動物を殺す。その死骸を近くの池の“ペット”に。
田んぼのかかしとダンス。熱烈なキス。自慰行為…。
夫の帰りを待つ身でありながら映写技師の青年と関係も。
憂さ晴らしや妄想。ちらほら目立つ異常行動。
この現状から逃げたい…。
そのチャンスが到来。殺人鬼になったきっかけも…。
オーディションを受ける事を母に打ち明ける。
母の口から出たのは…
無駄な考えは捨てなさい。
お前にはその価値がない。
オーディションに落ちた時の気持ちを覚えておきなさい。私がお前を見る時と同じ気持ち。
恩知らず。
お前の一生は決まっている。
お前はこの農場から抜け出せない。
本当に実の母親かと思うくらいの辛辣な言葉の数々。
ひょっとしたら母のその言葉の裏には、娘に夢破れや失意を経験させたくなく、平凡な手中の営みを…の真意があったのかもしれないが、だとしても厳し過ぎる。
スペイン風邪流行。バイ菌などを異常に気に掛ける。
娘の異常行動の事を知っている。
ほんの一押し、娘の夢を応援してやっても…。
母が母だから、娘も娘。
ママみたいになりたくない。
私の人生はこんな所で終わらない。
私は特別。
言い合い、取っ組み合い。
その時事故が…。
全てを捨てて、オーディションへ。荷物も持ち、受かる前提でもうここには戻らない。
そんな絶対的な自信と決意が脆くも破れた時…。
審査員たちの言葉も酷いもの。
私たちが求めていたものとは違う。私たちが求めていたのは…。なら最初からそう告知しとけや!
意気揚々と挑んだのに、端から負け戦。しかも合格したのは…。
号泣。失意。絶望。どん底。
もう戻らないと誓った家へ。
また息が詰まるような毎日が待っているだけじゃない。
すでにこの時、パールは“罪”を…。
付き添ってくれた義妹に全て打ち明ける。
夫への不満と愛、自分自身への無能や愚かさ、決して逃れられない人生と現実、犯した罪…。
この告白シーン、恐ろしいんだけど、自分にも重ねられる部分もあり(自分の無能さを嘆く件)、引き込まれてしまう。
そして彼女はまた一つ罪を重ねる。これから重ね続けてゆく。
正義の騎士がダークサイドに堕ちた時然り、心優しきコメディアンが狂犯罪者になった時然り。
世の不条理、己の弱さ、人は苦悩の果てにふとしたきっかけで、堕ちる。
それを体現したミア・ゴスの熱演。
『X/エックス』での一人二役も圧巻だったが、本作での複雑な役所と難演は、単なるホラー映画の一登場人物の枠には留まらない。
狂気、哀しみ、怒り、夢憧れ、メチャクチャキュートってほどではないが不思議な魅力…。
オスカーノミネートも期待されたのも納得の名演。
ラストシーンがまた強烈。
帰ってきた夫。そこで見た光景は…。
“戦慄と穏やかな日常”。
忘れ難いパールの表情。
夫がパールの異常さを容認し、殺人鬼夫婦になったのも、妻を追い込んでしまった自分にも否があるんじゃないかと推測。
ある夫婦の、戦慄と歪んだ哀しい愛の始まり。
面白さもドラマ性もキャラの深みも作りも『X/エックス』以上。
単体作として見ても、近年秀逸のホラー映画。
3部作最終作『マキシーン』へいよいよ期待が掛かる。いつ公開!?
ミア・ゴス劇場
不思議な女優だ。
今作では脚本も手掛けている。
あどけないブサカワな容姿に長身。
スターを夢見るシリアル・キラーは、
「私の居場所はこんなとこじゃない!!」
と叫ぶ。
1918年Texasの農園。
父親は車椅子で会話もしない。
母親は厳格で農家の仕事・家畜の世話をPearl押し付ける。
折角結婚した夫のハワードはヨーロッパ戦線で戦っている。
「私(Pearl)は舞台に立ち、みんなに見られて踊るのよ!!」
拍手と歓声を浴びて!!
世界一のスターになる。
教会のオーディションで踊るPearl。
機械仕掛けの人形のようにギクシャクで手足を広げる。
そしてなんと「不合格!???!!」
気に入らない!!
この鬱屈は合格して、それを隠す義妹をミッツィに向かう。
斧をメッタメタに振り下ろす。
なんといっても頭の毛の焼け落ちた母親。
枕で窒息させた父親。
Pearlの3人で囲む食卓の不気味。
必ず祈りを捧げていた母親は焼け焦げている。
玄関の腐敗して蛆虫の湧いた子豚の丸焼き。
その子豚も食卓に乗せて・・・
なんと、ハワードが戦地から帰ってくる。
「お帰りなさい、ハワード」
2分半のPearlの顔のクローズアップ。
笑っているPearlの顔は半泣きになり涙が滲む。
「X」の前日譚。
3部作のラストは「Maxxx ine」
1980年のロサンゼルスが舞台と聞く。
私には厳格な母親と車椅子の父親の合成したイメージから、
ヒッチコック「サイコ」や他の作品の影響を。
カラーの鮮やかな映像や音楽やシェリー・デュバルになんか似ている
ミア・ゴスが斧を振り下ろす姿に、
キューブリックの「シャイニング」も思い浮かべてしまう。
最善の行動と最悪の結末
映写技師が狂おしいほどにセクシーで興奮した。
前作「X」では暴走する老婦の性欲と嫉妬から殺しに走ったように描かれていたけれど、パールは思ったよりずっと前から狂っていたし思ったよりずっと殺しに慣れていたんだな。
ガチョウと鍬の思わせぶりなカットからスカさずしっかりぶっ刺していて、一気にテンション上がった。
湖のワニも長い間現役を続けていたのね。
抑圧されたから「こう」なったのか、「こう」だから抑圧されていたのか。
たぶんママは本当に最善だと思える行動をしてきたのだろう。
ただ抑えつけられれば抑えつけられるほどパールの純粋で狂暴な欲望や夢はどんどん強くなっていくし、行動力を伴ってくる。
グロテスクで哀れな結末は迎えるべくして迎えられたものだったろうなと思う。
頑なに拒否されていた子豚の丸焼きがちゃんと食卓に上がることができて良かった。
夢破れたあとの長すぎる独白とドン引きの義妹のシーンがとても好き。
The End の前の長すぎる狂気的笑顔も大好き。
パパとパール、二人のシーンの独特な緊張感も好き。
いつ性的な行動に出てしまうのかとハラハラした。過去に何か絶対ありそうだけど。
すごく気になるのが、夫のハワードはなぜパールとの婚姻を継続し、死が二人を別つまで愛することができたのだろうということ。
やっと帰ってきた家の有様と尋常じゃない妻の様子、普通なら逃げ出してしかるべきだと思うのだけど。
狂気も含めてパールを愛していたのか、逃げださないうちは殺されないと理解したのか、ハワードも狂人だったのか。
あの後から「X」までの時間もまた映画にしてほしいと心から思う。
独自の空気を孕みながらも王道のスラッシャーだった前作に対し、今作は殺人者目線のためスリルや恐怖は少なくのめり込んで楽しむことはできなかった。
ただひたすらにパールという女性の生活や夢、ネジが完全に外れるまでの様子を眺めているような感覚。
若干レトロな映像に造形感の強いゴア描写や潜血がキレイにマッチしていたのが印象的。
たぶん三部作だよね?違いましたっけ、次も絶対に観るからね。
鑑賞動機:『X』9割、ミア・ゴス1割
『X』で一皮むけたと思ったミア・ゴスがさらに変態した。前半はギリギリ映画(館)映画と言えなくもないでけれど、ブタ…やナイスなフォーク捌きや全く嬉しくない長回しシーンとか、なんとも形容し難いあれやこれやで畳み掛けてきて、結果そうなるのはわかっているのに困惑した。
次もやっぱり映画ネタなんだろうね。
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