Pearl パールのレビュー・感想・評価
全165件中、41~60件目を表示
むしろ『パール』と『X』の間を知りたい
『X』を先に観て、数ヶ月後に『パール』鑑賞。予告編や煽りの文言からイメージしていたのとは結構違ったけど、面白かった、というか、意外にシリアス度高めに感じた。なんだか勝手に、ファンキーでコミカルさもあるような、人バンバン殺されまくる映画かと思ってたもので。
要介護度高い父と、狂信的なまでにストイックで支配的な母との三人で町から離れた農場に暮らすパール。夫は従軍中で不在。ダンスで映画スターになる夢を抱きながら、抑圧された生活を送るパールの密かな楽しみあるいははけ口は、たまに町でこっそり映画を観ること、そして小動物を殺しては池のワニに与えること。
母親のパールへの態度がまさに毒親なので、パールが不満を溜め込み、その反動でスターへの夢が妄想レベルに強まっていくのは分かりやすいし、ちょっとパールかわいそうにも思える。パールの思い込みの強さや歪んだ世界観はかなり危うさを感じさせるものの、もうこれは生まれながらに邪悪だよね、とか、シリアルキラーになるしかなかったよね、とは思えない。境界線上に立ってふらふらしている、という感じかなー。
むしろ、パールがこの映画のラスト以降に何があり、どんな暮らしや出来事を経てXのパールになったかがキモだと思うわ。だって兵役を終えて帰郷したハワードは、いきなりあの狂気の食卓と、それ以上に狂気をはらんだパールの笑顔を迎えられてなお、パールを捨てずに何十年も夫婦として暮らすんですよ? その心情や思うところがめちゃくちゃ知りたい。愛は責任でもあり、恐怖でもあるのか…そこは観た人が想像してくださいってことかしら。
皆さん言及されているミア・ゴスの顔芸は言わずもがな、ちょっとした描写がうまいタイ・ウエストさん。個人的には、義母から届けられた仔豚の丸焼きが軒先に放置されて、どんどん蛆がわいていくのとかね、何げないシーンが怖くておぞましいのがナイスです。
続編はマキシーンが主人公だそうだけど、ぜひハワード視点のスピンオフ短編とか撮ってほしいです。
ミア・ゴス劇場
今年鑑賞した映画を今になって思い出しながらレビューをしているわけだが、この作品を語る上で非常に印象に残ったのはミア・ゴスのぶっ飛んだ演技が非常に素晴らしかった。最後までミア・ゴスの虜になる作品でした。
内容は実家である農園から出たかったにも関わらず農園の跡取りを考えた親の意向により跡取りとなる方と結婚するが、戦争に赴いたことによりパールの心の支えは大好きな映画を見てスターになることを夢見て家畜を相手にダンスをしたりすることだが、そんな娘を厳格な母親は夢ばかり見てと叱責します。
娘は理解を示さない親に苛立を募らせるようになり、最終的には母親との些細なことでいざこざになり母親を殺してしまったことから、いけない方向にスイッチが入ってしまう。理解者だったはずのミッツィーでさえも嫉妬から殺害してしまう、不倫相手も、そして介護をしていた父親も。ほんの些細なことで人が変わり、快楽を覚えてしまえば堕ちるところまで堕ちるんだなと思いながら観ました。
相談する相手が身近にいて、話ができる環境なら違っていたのかもしれませんね。エンドの夫が帰還しテーブルを囲むように亡くなった両親の遺体に虫が寄っているのを見て絶句するのとは裏腹にパールは待っていたよ、と笑顔でお出迎え。
純真で無垢なように見えて怖すぎる…😨
橋本環奈は顔芸の何たるかをこの映画で学ぶべき
とにかく、ミア・ゴスがすごい。「ガラスの仮面」もかくやという渾身の演技。特にラスト。義妹を前にしての長回しの独白からエンドロールが終わるまで、彼女のなにもかにもに釘付けにさせられる。彼女なくして成立しない映画。
夢と狂気の狭間で、逃れられぬ現状に堕ちる
1970年~80年代のスラッシャー・ホラーへたっぷりのオマージュ『X/エックス』。
ポルノ映画撮影で田舎町を訪れた若者たちを襲う惨劇。
殺人鬼の正体は、農家の老夫婦だった…!
とりわけインパクトを残したのは、老婆パール。
何故彼女は稀代の殺人鬼老婆になったのか…?
A24初の3部作。第2作は時を遡り、その起源を描く。
1918年、テキサス州の田舎町。
出兵した夫の帰りを待つ少女パール。
彼女の唯一の趣味は、映画。華やかなミュージカル映画のスターに憧れていた。
私も歌って踊って、あの世界へ…。
が、現実は程遠く。こんな何も無い田舎で農業の仕事。身体の不自由な車椅子の父の介護、厳格な母の説教に毎日毎日毎日毎日…。
ある日町で映写技師の青年と出会い、彼の計らいで無料で映画を見れ、より一層憧れを強くする。
またそんな時、義妹からダンスのオーディションの話を聞き、夢を叶えようと受けようとするが…。
前作『X/エックス』と連続して撮影。
でありながら、作風が違うのは開幕から一目瞭然。
音楽やOPクレジットや画作り…ハリウッド往年の作品を彷彿。ヒロインの設定などメロドラマだ。
終盤のオーディション。イマジネーションも合わさって、カラフルなミュージカル。
一応ホラー映画で、この異色の作り。
続編(前日譚)でも同じ韻は踏まない。俊英タイ・ウェストの才気がまたまた光る。
ユニークな趣向を凝らしながらも、全編を覆う不穏な雰囲気。
何故無垢な少女が殺人鬼になった?…と宣伝文句で使われているが、100%純真無垢ではない。
小動物を殺す。その死骸を近くの池の“ペット”に。
田んぼのかかしとダンス。熱烈なキス。自慰行為…。
夫の帰りを待つ身でありながら映写技師の青年と関係も。
憂さ晴らしや妄想。ちらほら目立つ異常行動。
この現状から逃げたい…。
そのチャンスが到来。殺人鬼になったきっかけも…。
オーディションを受ける事を母に打ち明ける。
母の口から出たのは…
無駄な考えは捨てなさい。
お前にはその価値がない。
オーディションに落ちた時の気持ちを覚えておきなさい。私がお前を見る時と同じ気持ち。
恩知らず。
お前の一生は決まっている。
お前はこの農場から抜け出せない。
本当に実の母親かと思うくらいの辛辣な言葉の数々。
ひょっとしたら母のその言葉の裏には、娘に夢破れや失意を経験させたくなく、平凡な手中の営みを…の真意があったのかもしれないが、だとしても厳し過ぎる。
スペイン風邪流行。バイ菌などを異常に気に掛ける。
娘の異常行動の事を知っている。
ほんの一押し、娘の夢を応援してやっても…。
母が母だから、娘も娘。
ママみたいになりたくない。
私の人生はこんな所で終わらない。
私は特別。
言い合い、取っ組み合い。
その時事故が…。
全てを捨てて、オーディションへ。荷物も持ち、受かる前提でもうここには戻らない。
そんな絶対的な自信と決意が脆くも破れた時…。
審査員たちの言葉も酷いもの。
私たちが求めていたものとは違う。私たちが求めていたのは…。なら最初からそう告知しとけや!
意気揚々と挑んだのに、端から負け戦。しかも合格したのは…。
号泣。失意。絶望。どん底。
もう戻らないと誓った家へ。
また息が詰まるような毎日が待っているだけじゃない。
すでにこの時、パールは“罪”を…。
付き添ってくれた義妹に全て打ち明ける。
夫への不満と愛、自分自身への無能や愚かさ、決して逃れられない人生と現実、犯した罪…。
この告白シーン、恐ろしいんだけど、自分にも重ねられる部分もあり(自分の無能さを嘆く件)、引き込まれてしまう。
そして彼女はまた一つ罪を重ねる。これから重ね続けてゆく。
正義の騎士がダークサイドに堕ちた時然り、心優しきコメディアンが狂犯罪者になった時然り。
世の不条理、己の弱さ、人は苦悩の果てにふとしたきっかけで、堕ちる。
それを体現したミア・ゴスの熱演。
『X/エックス』での一人二役も圧巻だったが、本作での複雑な役所と難演は、単なるホラー映画の一登場人物の枠には留まらない。
狂気、哀しみ、怒り、夢憧れ、メチャクチャキュートってほどではないが不思議な魅力…。
オスカーノミネートも期待されたのも納得の名演。
ラストシーンがまた強烈。
帰ってきた夫。そこで見た光景は…。
“戦慄と穏やかな日常”。
忘れ難いパールの表情。
夫がパールの異常さを容認し、殺人鬼夫婦になったのも、妻を追い込んでしまった自分にも否があるんじゃないかと推測。
ある夫婦の、戦慄と歪んだ哀しい愛の始まり。
面白さもドラマ性もキャラの深みも作りも『X/エックス』以上。
単体作として見ても、近年秀逸のホラー映画。
3部作最終作『マキシーン』へいよいよ期待が掛かる。いつ公開!?
ミア・ゴス劇場
不思議な女優だ。
今作では脚本も手掛けている。
あどけないブサカワな容姿に長身。
スターを夢見るシリアル・キラーは、
「私の居場所はこんなとこじゃない!!」
と叫ぶ。
1918年Texasの農園。
父親は車椅子で会話もしない。
母親は厳格で農家の仕事・家畜の世話をPearl押し付ける。
折角結婚した夫のハワードはヨーロッパ戦線で戦っている。
「私(Pearl)は舞台に立ち、みんなに見られて踊るのよ!!」
拍手と歓声を浴びて!!
世界一のスターになる。
教会のオーディションで踊るPearl。
機械仕掛けの人形のようにギクシャクで手足を広げる。
そしてなんと「不合格!???!!」
気に入らない!!
この鬱屈は合格して、それを隠す義妹をミッツィに向かう。
斧をメッタメタに振り下ろす。
なんといっても頭の毛の焼け落ちた母親。
枕で窒息させた父親。
Pearlの3人で囲む食卓の不気味。
必ず祈りを捧げていた母親は焼け焦げている。
玄関の腐敗して蛆虫の湧いた子豚の丸焼き。
その子豚も食卓に乗せて・・・
なんと、ハワードが戦地から帰ってくる。
「お帰りなさい、ハワード」
2分半のPearlの顔のクローズアップ。
笑っているPearlの顔は半泣きになり涙が滲む。
「X」の前日譚。
3部作のラストは「Maxxx ine」
1980年のロサンゼルスが舞台と聞く。
私には厳格な母親と車椅子の父親の合成したイメージから、
ヒッチコック「サイコ」や他の作品の影響を。
カラーの鮮やかな映像や音楽やシェリー・デュバルになんか似ている
ミア・ゴスが斧を振り下ろす姿に、
キューブリックの「シャイニング」も思い浮かべてしまう。
ある意味、女優魂。(笑)
『エスター』も過去話しあったけど、この作品のような、何故あんなババァになったのか?
ここを描かないと意味が無い。
案山子相手の変態要素もあったし。
この部分を1番感じる事が出来る作品。
作中もそうだし、オープニング&エンディングの古臭さのこだわりも素晴らしい。
この女優さんもスゴイね。
最後のクレジットなんか、数分近く笑顔をキープし、さらに涙流すんだから。
ある意味、女優魂を感じました。
最善の行動と最悪の結末
映写技師が狂おしいほどにセクシーで興奮した。
前作「X」では暴走する老婦の性欲と嫉妬から殺しに走ったように描かれていたけれど、パールは思ったよりずっと前から狂っていたし思ったよりずっと殺しに慣れていたんだな。
ガチョウと鍬の思わせぶりなカットからスカさずしっかりぶっ刺していて、一気にテンション上がった。
湖のワニも長い間現役を続けていたのね。
抑圧されたから「こう」なったのか、「こう」だから抑圧されていたのか。
たぶんママは本当に最善だと思える行動をしてきたのだろう。
ただ抑えつけられれば抑えつけられるほどパールの純粋で狂暴な欲望や夢はどんどん強くなっていくし、行動力を伴ってくる。
グロテスクで哀れな結末は迎えるべくして迎えられたものだったろうなと思う。
頑なに拒否されていた子豚の丸焼きがちゃんと食卓に上がることができて良かった。
夢破れたあとの長すぎる独白とドン引きの義妹のシーンがとても好き。
The End の前の長すぎる狂気的笑顔も大好き。
パパとパール、二人のシーンの独特な緊張感も好き。
いつ性的な行動に出てしまうのかとハラハラした。過去に何か絶対ありそうだけど。
すごく気になるのが、夫のハワードはなぜパールとの婚姻を継続し、死が二人を別つまで愛することができたのだろうということ。
やっと帰ってきた家の有様と尋常じゃない妻の様子、普通なら逃げ出してしかるべきだと思うのだけど。
狂気も含めてパールを愛していたのか、逃げださないうちは殺されないと理解したのか、ハワードも狂人だったのか。
あの後から「X」までの時間もまた映画にしてほしいと心から思う。
独自の空気を孕みながらも王道のスラッシャーだった前作に対し、今作は殺人者目線のためスリルや恐怖は少なくのめり込んで楽しむことはできなかった。
ただひたすらにパールという女性の生活や夢、ネジが完全に外れるまでの様子を眺めているような感覚。
若干レトロな映像に造形感の強いゴア描写や潜血がキレイにマッチしていたのが印象的。
たぶん三部作だよね?違いましたっけ、次も絶対に観るからね。
誰でもパールになり得るのがホラー
取り巻く環境に不満を持っていたパールに訪れてしまった一筋の光が、諦められない夢への想いを暴走させてしまった悲劇。
ダンスの練習シーンらしきところは買い物帰りの場面のだけで、農作業や父の世話だけでは、オーディションで採用されるわけがないが、強すぎる家を出たい意志と根拠のない自信がミア・ゴスの演技の演技の素晴らしさか。
鑑賞動機:『X』9割、ミア・ゴス1割
『X』で一皮むけたと思ったミア・ゴスがさらに変態した。前半はギリギリ映画(館)映画と言えなくもないでけれど、ブタ…やナイスなフォーク捌きや全く嬉しくない長回しシーンとか、なんとも形容し難いあれやこれやで畳み掛けてきて、結果そうなるのはわかっているのに困惑した。
次もやっぱり映画ネタなんだろうね。
バチバチのホラーというよりも、一つの悲劇としてよくできた一作
おそらく映画史上最高齢の殺人夫婦が登場する、『X エックス』(2022)の前日譚となる本作。三部作として企画されているという本シリーズの二作目でもあります。
『X エックス』が1970年代を舞台にした、古今東西のホラー映画の要素を多数取り入れた作品だった一方で、本作はパール(ミア・ゴス)という一人の女性をめぐる物語です。
前回と同様、あえてホラー映画要素を過剰なまでに投入した物語を期待してしまうと、ちょっと意外に思うほどに、タイ・ウェスト監督はパールを中心としたドラマを丁寧に描いていきます。
前作を観た人ならもちろん、パールがその後どうなったのか、十分承知しています。そのため、映画デビューを夢見る若いパールの無邪気な(猟奇性も含んだ)笑顔がどうなっていくか、すでに顛末まで見通せてしまいます。だからこそ、作中のパールの振る舞いや将来の夢を語る姿に、胸の痛みを覚えます。不気味で、同情の余地をほとんど感じなかった、前作のパールにすら、ある種の共感や憐れみを感じるほどに。
前作を鑑賞していればもちろん物語の細部まで楽しめること間違いないですが、本作だけでも一人の女性の悲劇として成り立っているため、本作を鑑賞してから『X エックス』を観る、という順番でも全く問題ないと思います。
ミア・ゴスの演技はどの場面でも文句なしに素晴らしいですが、後半の語りや、最後に見せる表情は、ホラー映画という枠をはるかに超えて、強烈な印象を残しています。さらにゴスは本作の制作総指揮と脚本にも関わっており、作品の作り手としても確かな手腕があることを十分に証明しています。
そこで終わるのか
X エックス の前日譚であるパールを見てきました。
主人公が思いの外イカれていてドン引きですw
個人的には話をもっと纏めてラストの後からエックスまでの話を追加して欲しかったなぁと
ラスト後の旦那との生活が一番面白いのに・・・
顔芸を見てパールに魅せられた自分が、少し怖くなった
Xは観ており、その前日譚であることも前情報で知っていました。
◉怖い絵
これまでに観た恐怖シーンの中でも、きっとベスト5に入る怖いシーンだったかなと思いました。本能的に感じた身の危険にいたたまれず、ドアを押し開けて逃げ出す義妹。おもむろにドアを開き義妹の姿を確かめて斧を握るパール。義妹は走り、パールは走ろうともしない。二人の距離は開いているし、閉じ込められた狭いスペースでもない。足を挫く前にもっと引き離せるはずなのに、振り下ろされる斧の下に義妹は身を置いてしまう。
牧場の空はあんなに明るく晴れ渡っていたのに…。引きから入った、童話のワンシーンみたいな、この光景は恐ろしかった。人は皆、人知れず死んでいく。
◉絶望しか抱かない母
人生の絶望を体現しているかのような母親。大戦下でなくても、ドイツ移民でなくても、この母ならば易々諾々として辛い境遇に身を委ねて、そこから抜け出ようとはしない。悲惨とかのレベルではなく、意味を見つけ難いような、彼女の人生。今、ここにあるものを大切に…と言う言葉で自らの生を閉鎖してしまえる、この母も脅威であり、実に嫌な怖さを醸し出していた。
◉軽い娘の軽い殺りく
華やかな舞台を夢見る少女の心底には、殺しへの異様な欲望が満ち溢れていて、それがパールの中で何より優先されてしまった……と言うのが、この前日譚のテーマだったと、私は思います。しかし、目の前で展開した筋書きを単純に追うならば、寂しがりやで気の短い娘が、腹立ち紛れに思わず動物や人を殺してしまう…だけだったように思います。
パールの心中で生まれた、殺意の芽生えも醸成も特に語られず、恋人を殺すのも義妹を殺すのも、ワニがいくら腹を空かせていたかも知れないけれど、あまりに性急。殺す前にも後にも、タメがなかった。
殺人女子の哀しみも混ぜた、暗色のホラーなら良かったと思うのですが、もの凄く軽いエキセントリックさだけが、ひたすら先走りした感じでした。
ラストのパールの表情だけで
エンドロールのパールの表情、あんな狂気と悲しみの入り混じった表情見たことない。あれだけでも十分に観る価値がある。
最初のガチョウは殺さないと思ったんだけど…笑
関係ないけどパールが仕立てた食卓のシーンはハンニバルを思い出した。
前作を一層味わい深いものにし、次作への興味を強くさせる傑作
前作「X」は鑑賞済みです。
前作のキーパーソンの前日譚となっており、なぜああなってしまったか、が描かれております。
ホラー作品のような触れ込みではありますが、エンターテインメント業界が多くの人に与える夢と絶望をきっちり描き切っており、前作の様々なエピソードにより多くの意味を与えてくれます。
結果として、前作のディティールをより興味深く、立体的に浮かび上がらせる作品となり、
三部作映画の第二作としては、これまでにない繋ぎ方をしながら、非常に秀逸なものといえるでしょう。
ものすごいものを見せられたな、と思いながら、次回作への期待を大きく膨らませて待っています。
ミア・ゴス大暴れ
近年米国発のネオ・ホラーの傑作が次々と登場しているが、その中心となっている製作会社A24が、またしてもユニークでオリジナリティの高いホラーを製作した。
3部作となる1作目は2022年に公開された「X」で1970年米テキサスが舞台であったが、2作目の今作は時代が遡り1918年が舞台で「X」で殺人老婆だったパールの青年期、いかにして殺人鬼パールが誕生したかの前日譚になる。
映画スターに憧れるパール(ミア・ゴス)は厳格な母と病気で全身麻痺の父とテキサスの農場で暮らしている。
夫は戦地に出征中で、父の介護と家畜の世話に明け暮れている。
パールの息抜きは家畜の世話の最中のミュージカルスターの妄想や街へ使いに出た時の映画鑑賞など。
ある日、ミュージカルショーのオーディションが街に来ることを知り、参加を母に相談するが、母はパールの映画スターの夢を罵倒し、参加は許さない。
この辺りから、抑圧に対する狂気が沸騰し始め、殺人鬼が覚醒する展開になる。
まずホラー映画なのだが、映画のトーンが「オズの魔法使い」や「メリー・ポピンズ」といったハリウッドの古き良きミュージカル映画にある、テクニカラー風の極彩色の色調を使い、夢のような世界観を表現する。
しかしこの映画の最大の魅力はミア・ゴス演じるパールのコケティッシュかつ常軌を逸した殺人鬼ぶりだろう。
ミア・ゴスのオンステージと言ってもいいくらい暴れまくる。
傑作シーンはいくつもあるがオーディションのダンスシーンは戦場をバックに大砲と花火が炸裂するブラックファンタジーは必見。
ラストのパールの表情はホラー映画史に残る名演技だ。
監督・脚本は前作同様タイ・ウェストが務め、今作ではミア・ゴスが脚本と製作総指揮も担当と正に大暴れ。
3部作の完結編の「MaXXXine」が製作中であり、公開が楽しみだ。
全165件中、41~60件目を表示