劇場公開日 2023年7月7日

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「すべてを奪われていた二人の女性ならではの末路なのだけれども…。」Pearl パール talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0すべてを奪われていた二人の女性ならではの末路なのだけれども…。

2024年5月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
すべてを奪われた私から、これ以上、何を奪うの。

<映画のことば>
もう欲しがることはやめたの。
持っているものを大切にする。

「そりゃあ、そうもなるわな。こんな境遇では。」というのが、本作を観終わってすぐの、評論子の偽(いつわ)らざる心境。
もちろん、パールの、このなりふり構わない「農場脱出作戦」には、いささか賛同はしかねるのですけれども。

しかし、自分が農場での生活に抑圧されているが故に、娘であるパールにも抑圧的な生活を強いる母親で、もしもパールの母親のありようがこうではなかったとしたら…彼女自身の人格も、ここまで捻(ねじ)れることはなかっただろうと思うと、彼女(パール)の所為を100%は、責めることができないようにも思われます。
人生のすべてを奪われていかたのような二人の女性か、ある意味では必然的に(?)辿(たど)るべき末路としては。

パールの国選弁護人に選任されたと、勝手に仮定したとした(否、勝手な妄想した?)
評論子は、犯罪の成否自体は争わないとしても(否、争いようもない?)、彼女の刑事責任の軽重(彼女に対する非難可能性)という「情状酌量」の線で、裁判所に寛刑を求めるような気がします。

実は、本作は、宅配レンタルで借りてしまってから、ホラー映画だと気づいて、「観ないで返そうか」とも思ったのですけれども。

しかし、「観ないで後悔するよりは、観て後悔する」という評論子のモットーから、敢えて観賞することにした一本になります。
結果としては、ただ恐怖心を煽(あお)るだけの一本ではなく、パールの心情にも(その是非は別としても)理解できなくはないストーリーの作品でした。

何事も先入観に囚(とら)われてはならないことの箴言として「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ。」という言葉がありますけれども。
そういう言い方をするなら、「映画は、まず観てみよ。」ということになるのだろうと思います。
評論子にとっては、まさに、その言葉どおりの一本になりました。

単なるホラーものに堕(だ)さない、それなりの良作ではあったと思います。評論子は。

(追記)
文字の流れないエンドロールが、1940年代の古い作品を彷彿(ほうふつ)とさせ、2022年に製作された映画としては、かえって斬新な感じでした。
本作は、同じタイ・ウエスト監督の手になる別作品『X エックス』の主人公の前日譚とも聞きますけれども。
ここに来て、同作への食指も、大いに動かされました。
そういう「繋がり」で作品を観ていくことの多い評論子としては、その点でも嬉しい一本でした。

talkie