「顔芸を見てパールに魅せられた自分が、少し怖くなった」Pearl パール Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
顔芸を見てパールに魅せられた自分が、少し怖くなった
Xは観ており、その前日譚であることも前情報で知っていました。
◉怖い絵
これまでに観た恐怖シーンの中でも、きっとベスト5に入る怖いシーンだったかなと思いました。本能的に感じた身の危険にいたたまれず、ドアを押し開けて逃げ出す義妹。おもむろにドアを開き義妹の姿を確かめて斧を握るパール。義妹は走り、パールは走ろうともしない。二人の距離は開いているし、閉じ込められた狭いスペースでもない。足を挫く前にもっと引き離せるはずなのに、振り下ろされる斧の下に義妹は身を置いてしまう。
牧場の空はあんなに明るく晴れ渡っていたのに…。引きから入った、童話のワンシーンみたいな、この光景は恐ろしかった。人は皆、人知れず死んでいく。
◉絶望しか抱かない母
人生の絶望を体現しているかのような母親。大戦下でなくても、ドイツ移民でなくても、この母ならば易々諾々として辛い境遇に身を委ねて、そこから抜け出ようとはしない。悲惨とかのレベルではなく、意味を見つけ難いような、彼女の人生。今、ここにあるものを大切に…と言う言葉で自らの生を閉鎖してしまえる、この母も脅威であり、実に嫌な怖さを醸し出していた。
◉軽い娘の軽い殺りく
華やかな舞台を夢見る少女の心底には、殺しへの異様な欲望が満ち溢れていて、それがパールの中で何より優先されてしまった……と言うのが、この前日譚のテーマだったと、私は思います。しかし、目の前で展開した筋書きを単純に追うならば、寂しがりやで気の短い娘が、腹立ち紛れに思わず動物や人を殺してしまう…だけだったように思います。
パールの心中で生まれた、殺意の芽生えも醸成も特に語られず、恋人を殺すのも義妹を殺すのも、ワニがいくら腹を空かせていたかも知れないけれど、あまりに性急。殺す前にも後にも、タメがなかった。
殺人女子の哀しみも混ぜた、暗色のホラーなら良かったと思うのですが、もの凄く軽いエキセントリックさだけが、ひたすら先走りした感じでした。
Uさん
コメントそして共感ありがとうございます。
確かに、絵的にはとても怖い映画でした。
しかし心に訴えるものが確かに薄いと思いますね。
「X」の摩訶不思議な謎・・・
前作とはテイストがかけ離れていますものね。
「絶望の権化のお母さん」
あんまり救いがないので、Pearlは殺戮に走ったのでしょうか?
3作目の「アイリーン」
どう展開するか?やはり気になりますね。
今晩は。
コメント有難うございます。
仰る通り、あの笑顔一つ見せない厳し過ぎる母親は怖かったですね。あの母親の背景がもう少し描かれて入れなば、とは思いましたね。
食欲減退映画でもありました。
尚、私の勤務先から車で5分のミニシアターでは今作と後日譚の「X」絶賛上映中でございます。
では。これからも宜しくお願いいたします。