ウーマン・キング 無敵の女戦士たちのレビュー・感想・評価
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金的を狙え。そうすれば君たちは絶対に勝つ!
ダホメの大河ドラマだ。
フィクションだろうが、醜く無い。
偽善的だが、無理をしていない。
クンタ・キンテが怒るだろうし、キング牧師も怒る。でも『ブラック イズ ビューティフル』なのである。マルコムXやモハメド・アリは指示するだろうなぁ。
カッコいいよ。
女の方が絶対に強い。男には絶対的に急所が2箇所ある。目と金的である。だから、格闘技をする時にはプロテクターがある。従って、命をかけた戦いになれば、ルールなど言っていられないわけだから『目とアソコを狙って粉砕せよ』力が入ってしまった。理屈抜きで見るベェ!♥
リベリア共和国もこの信念を忘れなければ良かったと思う。
賞を狙えるB級映画だと思う。こう言った映画こそ日本人には見てもらいたいものだ。
ゴリゴリのファンタジーだけどね。
『私の中には貴女を苦しめた血が流れている。ごめんなさい』
『いや、貴女は私の娘だ』
アゴジェ・フォーエバー
『ブラックパンサー』に登場した女たちだけのワカンダ親衛隊“ドーラ・ミラージュ”。華々しい活躍を魅せたこの部隊にはモデルがあった。
17世紀~19世紀、西アフリカにあったダホメ王国(現在のベナン)。女たちだけの精鋭部隊“アゴジェ”。
歴史にはまだまだ知らない事がたくさんある。
本作も企画が上がったのは8年ほど前だという。発起人はマリア・ベロ(プロデュースと原案)。が、登場するのは黒人だけで女性のアクション映画、知らぬ歴史が題材でなかなか企画が進まなかったそうだが、『ブラックパンサー』の大ヒットでようやく進行。やっと日の目を見た。
ダホメ王国は脅威に見舞われていた。隣国のオヨ王国が度々ダホメの村人を捕らえ、ヨーロッパへ奴隷として売り飛ばしていた。
強大な軍力を持つオヨ国に従うしかなかったが、そういつまでも虐げられるばかりじゃない。国の切り札であるアゴジェが立ち向かう…。
開幕。夜の闇に紛れ、敵兵たちを奇襲するアゴジェ。男どもを一掃する勇猛果敢さ。
これから分かる通り、史実を基にした重厚な歴史ドラマではなく、史劇アクション・エンターテイメント。
勿論歴史背景を知っていればもっと深く見れ、日本人にはなかなか馴染み薄い歴史背景だが、それでも堅苦しい歴史劇よりかはずっと見易く見応えもある。
アゴジェを率いる将軍、ナニスカ。カリスマ性に溢れ、ゲゾ王からの信頼も厚い。
ヴィオラ・デイヴィスの存在感。熱演は言うまでもないが、この人こんなにパワフルなアクションも出来たのか…!
アゴジェに入隊する若い女性、ナウィ。
話はこの二人主体で語られていく。
19歳のナウィ。決められた結婚をさせられそうになるが、相手の年上男の横暴さに嫌気が差し、ひと悶着。結構気の強いナウィ。
困った父は娘をアゴジェへ。憧れだったアゴジェに入隊する事になったのだが…。
訓練は厳しい。初の実戦でも気持ちが先走って危うい場面が何度も。
ナニスカや世話役の先輩から何度もたしなめられる。
それでも訓練を続け、新兵の勇気を示す大会で優勝する。
若者の成長はエンタメの王道。本作も話自体は至ってシンプル。
だがそこに問題提起のテーマやドラマチックな展開を織り込む。
ある時ナニスカは、ナウィの肩の傷を見てハッとする。それは…。
オヨの将軍、オバ・アデ。兵たちが女どもにやられた事を知り、憎悪を燃やす。
使者としてやって来たアデを見て、ナニスカは激しく動揺する。
脳裏に浮かぶ忌まわしい過去。男に犯され…。その男こそ、アデ。
ナニスカは子を身籠る。産まれた子を手離す。その時我が子の目印として、“娘”の肩にサメの歯を…。
ナウィは、ナニスカの実娘であった。敵将軍の娘でもあった。
やがてナニスカはナウィにこの事を打ち明け…。
アデ率いるオヨ軍の進行。
ナニスカ率いるアゴジェが迎え撃つ。
両軍の闘いは拮抗。しかしその中で、ナウィ含む数名が捕らわれる。
王や周囲の制止に背いてまで、ナニスカは救出に向かう…。
生き別れた母と娘の再会。因縁の相手との決着。
本作は史実を基にしているが、無論この人間関係や話自体はフィクション。何だかメロドラマチックではあるが、作品的には盛り上がり所。
ヴィオラ・デイヴィスやナウィ役=トゥソ・ムベドゥは勿論、ナウィと友情育むイゾギ役=ラシャーナ・リンチ、ナニスカの右腕のアメンザ役=シーラ・アティム、女性たちが奮闘する中でゲゾ王役=ジョン・ボイエガも好助演。
時代考証に基づいた美術や衣装。
「アゴジェ!アゴジェ!」と闘志を鼓舞する叫び。歌と踊り。
カリの動きを取り入れたというアクションは迫力充分。
Netflixの大ヒット・アクション『オールド・ガード』のジーナ・プリンス・バイスウッド監督が、再び強き女たちを活写する。
しかし単に痛快エンターテイメントではない。
本作に深く問題提起をするのが、奴隷貿易。
オヨに支配されて被害国のようなダホメだが、そのダホメもポルトガル商人相手に奴隷貿易をしている。オヨとはこの貿易でも争う。
本作は全米で大絶賛されたが、一部では批判的な意見も。奴隷貿易を生業とする国をヒーローのように描いていると。
確かに指摘されれば分からんでもない。でもだからと言って、これを肯定して描いているのではない。
ダホメには金やパーム油などの産業も。ナニスカはこれらで貿易し、奴隷貿易廃止を王に進言する。
奴隷貿易が終わらなければ国と国、人と人の争いはいつまでも続く。それはダホメだけの問題じゃない。アフリカ全ての民の未来の為でもある。
強大な国と闘った女戦士たちと見えて、その実は、奴隷制度や自ら運命切り開く為に闘う真の女戦士たちの物語なのである。
ドラマチックな物語や迫力のアクション、知られざる歴史を知れた。
奴隷貿易と同じく罪深きは、本作への軽視。
絶賛されスマッシュヒットしながらも、アメリカでは何一つアカデミー賞にノミネートされず。本当にアカデミー賞は改革起こって多様性になっているのか…? 結局それは、一部のもてはやされている作品のみなのか…?
日本では劇場未公開の上、現時点では配信のみ。まあ日本ではそうなるだろうと思っていたとは言え、せっかく日の目を見た知られざる歴史がまた埋もれそうな…。
昨秋のアメリカ公開時から気になっていた本作。見逃すにはあまりにも惜しい。一見の価値はあり。
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