銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価
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役所広司にしか表現しえないこの父親像
誰もが人生において宮沢賢治の詩や物語に心動かされるにつけ「賢治はどのような人だったのか」とは思うだろうが、その父親までは想像が及ぶまい。本作は偉人伝記において助演か脇役の存在に過ぎない「父の視点」で宮沢家の肖像を情緒豊かに綴った物語。やがて賢治が農業と並行して執筆を続け、彼の死後になって評価されるのは広く知られた話であるし、妹の存在が執筆活動を精神的に支えたという逸話も聞き覚えがある。それに比べて、父は文学的な素養があったようにも見えず、木訥で、平凡。賢治を精神的に力強く導いたわけでもなさそうだ。けれど役所広司演じるこの主人公は、賢治の創作世界を決して否定せず、自らがいちばんの読み手であり、理解者であろうとする。それがどれほど賢治の支えになったことか。常に浮遊するようなカメラワークが役所と菅田の化学反応を流動的かつ柔軟に捉え、彼らにしか築くことのできない父子の愛のかたちを実直に謳っている。
宮沢賢治についての知識と、観客自身の経験値によって評価が変わりそう
明治から昭和初期の時代を生きた作家・詩人、宮沢賢治の伝記映画は過去にもあるが、「銀河鉄道の父」は小説家の門井慶喜が賢治の父・宮沢政次郎を主人公に据えた直木賞受賞作の映画化。役所広司が演じる政次郎の視点から、賢治(菅田将暉)、賢治の妹・トシ(森七菜)ら家族の成長や試練を綴っていく。成島出監督と役所とのタッグは1月公開の「ファミリア」から2作連続で、「油断大敵」「聯合艦隊司令長官 山本五十六」を合わせて通算4度目。
宮沢賢治の代表的な詩や小説を読んでいても、生い立ちは知らないという人も多いだろうから、賢治の生涯をたどる入門編としての意義もある。波乱万丈に生きた人物なので、駆け足の紹介になっている点や、賢治の創作の真髄にまでは迫りきれない父親視点ゆえの限界など、物足りなさも。
政次郎が当時の父親としては異例なほど熱心に子育てに関わり、賢治やトシが病の折には献身的に世話をする様子も描かれるので、子育て経験のある親世代の観客には政次郎やその妻(坂井真紀)に感情移入しやすいだろうか。若い世代でいまいち話に入り込めなかったとしても、さまざまな人生経験を積んで遠い将来に再見したらまた違った評価になるのかもしれない。
日没のマジックアワーの時間帯を狙ってワンテイクで決めたという屋外の火葬シーンでの菅田と役所の熱演など、見応えある映像は確かに劇場の大スクリーンでの鑑賞にふさわしい。ただ、個人的には「ファミリア」の現代性の方がより響いた。
宮沢賢治を主役に据えるのではなく、宮沢賢治の父親を主役にすることで宮沢賢治を描いた実話。
本作は、宮沢賢治の父親を主役にする事で宮沢賢治を描いた実話・直木賞受賞作「銀河鉄道の父」の映像化作品です。
主演の役所広司は宮沢賢治が生まれたての時から、宮沢賢治が37歳の段階や、それ以降も(吉永小百合の如く)演じ分けているのは意外にも違和感がありませんでした。
本作の面白さは、何と言っても父親を主役に据えることで「宮沢賢治の一家」を通して宮沢賢治の立ち位置や家族からの影響などが分かる事でしょう。
実際に、これまで見た事がない視点で宮沢賢治が描かれていて、ようやく俯瞰して宮沢賢治という人物像が見えた気がします。
本作は基本は実話なのですが、ラストシーンの件は、史実とは異なります。
ただ、「宮沢賢治の一家」の家族愛の物語を描くには、史実とは少し違うラストもリアリティーがあって良いと思いました。
宮沢賢治の優しさ、過集中ゆえの脆さまで心に響く。宮沢賢治をこれまでにない視点で描いた傑作!
本作でメガホンをとった成島出監督は、「マルチな才能で資料が膨大すぎる宮沢賢治を1本の映画では描ききれないと思っていた」とおっしゃっていた。しかし本作の原作に出会い「これだ!」と動き出した原動力が、本編を最後まで見るとよくわかる。
長男である賢治の父親(政治郎)の「親っぷり」を存分に演出しながら、賢治の家族も丁寧に描かれており、賢治の様々な挑戦がダイジェスト版のように随所にちりばめられている。家族に焦点を合わせることで、あまり知られていない賢治と彼を支えた家族の物語を描くことに見事なまで成功させた。
質屋を営む両親が、自由な長男・賢治の数々の決心にその都度驚く表情や姿も見どころの一つとなるほど、些細な場面でも見逃せない演技が満載なのだ。
設定では岩手の花巻市が主な舞台なので、方言を学ぶところから役者は相当苦労しただろうし、何より主演の役所広司を筆頭に演技が素晴らしかった。
夜になると小さな灯りを頼りに執筆をしていた宮沢賢治を象徴しているように、町並みも街灯を抑えていたからか、星が特に美しい。これはランプの灯りを最大限に活かし、ライティングを徹底的にこだわり、高感度カメラを使用するなどの隠れた制作の苦労によって成り立ったものだ。明治、大正、昭和を感じる背景の雰囲気もどこか懐かしく、あたたかい気持ちになる。
このような様々な制作の苦労もあり本作の体温が伝わり、ラストの展開を含めて涙が止まらなかった。
宇宙の中で
ラストは泣ける。前半はあまり盛り上がらないが、それは後半に生きてくるので、我慢して観よう
父の視点で描くというアイデアがうまくハマっていると思う。この映画というより、原作の門井 慶喜氏のアイデアだが。
この映画を見る前は、宮沢賢治は偉人で、子供の頃から立派だったのだろうと思っていたが、そうでもない姿が描かれる。なので、観ていて、しばらくは気持ちが盛り上がらない。でも、父親の視点で観ているので、「そうだよなあ。子供って親の期待通りには育たないよなあ」と、宮沢親子に共感する気持ちになる。あとで調べてみると、宮沢賢治が挫折したり、脇道にそれたりしたのは、実際にあったことのようなので、宮沢親子の葛藤もこれに近かったのだろうと思った。
映画の後半は、文学に励む姿や、農業指導をする姿が描かれて、自分が抱いていた宮沢賢治イメージに近づく。後半は、感動的なセリフがたくさんでてきて、泣けた。特にラストの賢治の死の場面は、涙があふれた。
前半の「親の期待通りには育ってくれない」ということや「賢治自身、思った通りに行かない」ことが、後半のセリフの背景にもなっているので、共感がより深くなった気がする。
宮沢親子に役所広司と菅田将暉を配したのは正解。観ていて爽快とは言えない前半から映画に入って行けたし、映画の仕上がりを数段上げていると思う。
エピソードを上手に切り取ったり、感動的なセリフを創ったりした脚本の坂口理子さんにも拍手。アリガトガンシタは何度か出てきたが、どれも感動的。
津軽弁なので、セリフが聞き取れないところがあったので、Amazonの配信で字幕ONにして鑑賞。
原作既読。キャストも雰囲気もなかなか良いと思ってたら、喜助役の田中...
原作既読。キャストも雰囲気もなかなか良いと思ってたら、喜助役の田中泯が出てきただけで主役も脇役も全部食ってしまう恐ろしい演技力に圧倒された。父親役はイメージが違った
もっと親のスネかじりで浪費家の宮沢賢治が見たかった
寝た
冒頭から全てがクサすぎて観ていられなかった。せっかく役所広司や菅田...
雨ニモマケズに初めて泣かされた
父親は良かったが
明るい話だと思ったら、、
主人公は政次郎なのだ
この作品の主人公は宮沢賢治の父政次郎だ。しかし彼の出番自体は意外と少ない。
一見すると賢治や他の家族に振り回されているだけに見えなくもない。それでも政次郎が主人公なのである。何故か。それは政次郎がこの時代には珍しい革新的な人物に描かれているからである。
政次郎は「これからの男は…」と言う。
男が看病などしない時代に率先して看病をする。作中で看病をする場面が何度かあるが、そのほとんどを政次郎が行う。
新しいことをやりたがる子どもたちに家業の質屋をつげと古臭い堅物のように言うが、その実、子どもたちが新しいことにすぐ目を向けてしまうのは、新しい男である政次郎の影響なのではないか。
アンデルセンやらなんやら賢治たちは言う。それを政次郎は一切否定しない。本当に堅物であるならば、そんなものは読むなと言うだろう。賢治の改宗についても同じだ。
本当に駄目なことだけは駄目だと言って、それ以外は大体受け入れる。政次郎は子どもたちの自由意志を尊重しているといえる。
この時代にそんな価値観の男がどれだけいただろうか。
そんな新しい男政次郎の影響は賢治の作風にも表れているかもしれない。
宮沢賢治の作品は擬音が多い。他の人の作品と比べ少し変だと言えるだろう。言い換えるならば変人だ。
この時代に看病をする政次郎もまた変人だったのではないか。賢治が変人なのは父親譲りなのではないか。
そうかんがえると宮沢賢治という人物の構成に、妹のトシだけではなく政次郎も入っているのは間違いないだろう。少なくともこの作品の中では。
「雨ニモマケズ」のほんとうの意味
原作が未読で、どこまでが映画オリジナルのストーリーかどうかが分かりませんが、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の詩が、あの場面で、あの人があの人に語ることによって、初めてわかったような気がします。宮沢賢治の苦悩と父の深い愛が、美しい景色とともに描かれた作品です。
お父さんの苦悩と愛に心打たれた
原作本は読んでいた。レビューを見ると時代考証が甘かったり事実と異なる部分が色々あるようでそれを読むとちょっと残念な気持ちがしたが観終えた直後はものすごい余韻に浸った。特にラストの銀河鉄道の中で3人が居合わせるシーン、完全にファンタジーではあるが物語のオマージュであり私はとても好きだ。賢治は心が繊細だったのだなあ、親としての苦悩もよく分かるしそれを包み込む子供への愛は素敵だ。トシも賢治も先に逝ってしまうなんて、なんて非情な運命でしょう。ひとつだけ残念に感じたのはあのラストシーンからの主題歌がいきなり現代?ぽくてなんだかそぐわないなあと感じた。いきものがかりは好きなアーティストさんなんだけど。ごめんなさい。
宮沢賢治の父‼️
宮沢賢治の物語を父親の視点から見た伝記映画‼️家業の質屋を継ぐ、継がないで喧嘩が絶えなかったり、妹のトシが結核で亡くなってしまったり、作家活動が順調に行ったと思いきや、自らが結核になってしまったり・・・‼️どちらかと言うと家族との物語に時間が割かれ、賢治の作家としての側面はほとんど描かれない‼️ファンの方は有名な「風の又三郎」や「銀河鉄道の夜」の創作の背景をもうちょっと見たいのではないでしょうか⁉️結論としては可もなく不可もなく、あまり面白みのないフツーに感動できる宮沢賢治の物語‼️ただやはり父親役の役所広司さんの存在感は素晴らしい‼️それと役所さんと菅田将暉は父子に見えないけど、坂井真紀と森七菜は母娘に見える‼️スゴい、似てる‼️
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