銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価
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久々の森七菜の着物姿が良かった
質屋を営む宮沢政次郎の息子・賢治は長男で家業を継ぐ立場なのに中学に進学を希望し、中学校卒業後は農業高校(今の岩手大学農学部)へ進学したり、卒業後は人工宝石の製造販売をしようと考えたり、浄土真宗の家なのに日蓮宗へ傾倒したり、とマイペースで自由気ままに過ごしていた。そんな賢治に対し、父政次郎は新しい父親像を目指し、賢治の希望を叶えてやろうと甘やかしてしまっていた。やがて、妹のトシが結核にかかり、賢治はトシの希望で物語を書くようになり・・・そんな賢治を見守る父は・・・という話。
宮澤賢治の事をほとんど知らずに観に行ったので、彼がそんなに優秀だった訳でもなく、若い時から文学青年でも無かったのだと初めて知った。宮澤賢治に興味が無かったので、銀河鉄道の夜も風の又三郎も読んだかもしれないが内容はほとんどおぼえていない。
そんな宮澤賢治の両親が素晴らしく、当時の長男に対する押し付けも無く、愛に包まれた家庭を作ってたのが素晴らしかった。役所広司と菅田将暉はさすがで、良い味出してた。
久々に観た妹・トシ役の森七菜は着物が似合ってて存在感が有った。
坂井真紀、田中泯、も良かった。
学校で習ったくらいな知識でした
役所さんが息子誕生から亡くなるまでの年月を演じられてた若々しさも老年も違和感全く無いのはさすがだなぁと。
森七菜の綺麗に死ねの啖呵はとても迫真のある良いシーンでした。
ストーリーがいつの間にかこうなってる的に切り取られた感じがしてどうしてこうなったんだろか?的に思ってしまった面あり
期待しすぎたのもあって。。。
『宮澤政次郎』一家!!
本作の主人公はそのタイトル通り
『宮沢賢治』の父親の『宮澤政次郎(役所広司:演)』。
『賢治』原作の映画化やアニメ化は数多くあれど、
稀代の有名人である作家本人にスポットを当てた作品は少ないと記憶。
直近のノンフィクション、
『今野勉』による〔宮沢賢治の真実-修羅を生きた詩人(2020年)〕のような著作を底本に
妹の『トシ』を含めて劇的な映像化もできたとは思うが。
にもかかわらず敢えてその父親を描こうとのモチベーションは
原作者の『門井慶喜』からして頗るユニークな視点。
とは言え、こうして主人公としての父親の生涯を俯瞰すると、
時代を越えた感慨を持つのも事実。
授かった長男を溺愛するあまり入院に付き添い、
却って病を感染されてしまうなどはその好例。
イマで言うところのイクメンの嚆矢か?
いやその親バカぶりは膏肓に入っているとの表現があてはまる。
時として悩み、時として反発し、しかし
傍から見れば思わずくすりと笑ってしまう
愛したばかりに弱みを見せる父親の可笑しさ。
二男三女に恵まれはするものの、
上二人の男女を共に結核で亡くすのは痛恨の極み。
結核についていえば、
当時の特効薬ストレプトマイシンが世間に出回るのは1950年以降のこと。
栄養が十分に足りている家の人間でも罹ってしまうのは
死病と恐れられることの背景。
また、次男が元々の生業である質屋を
機械等を扱う「商会」に業態変更するなどの変転も体験。
が、やはり、『政次郎』の一番の心配のタネは
長男だったろう。
そのエキセントリックな性格や突飛な行動は、
今の基準で見ても甚だ異端。
三十七歳で亡くなるまで独身を貫き、
(ただ本作では『保阪嘉内』との関係性による懊悩は
すっぽり抜け落ちているが)、
家を重視する当時の社会規範から見れば
(いくら最愛の息子とはいえ)それなりに手を焼いたことだろう。
『トシ』についても女学校時代にはスキャンダルに見舞われ辛酸をなめ、
家族も辛い思いをしているハズだが、
そのあたりのエピソードもすっぽり外しているのは、
やはり長男との関係性を強く前面に出したいがためかとも納得はする。
準主演の『菅田将暉』は
奇矯な行動と、相反する温和さも併せ持ち、
最後は諦念の境地に至る『賢治』を
鬼気迫ると評しても良いほどの渾身で演じる。
観ていて鳥肌が立ってしまうほどの。
父の深い愛 〜 俺は修羅になる
人生に悩む息子宮沢賢治を心配しながらも寄り添い穏やかな眼差しで見守り続けた父政次郎を、役所広司さんが時にコミカルに魅力的に演じる。
苦悩しながらも活き活きと瞳を輝かせ実直に生きた宮沢賢治を菅田将暉さんが熱演。日本アカデミー賞助演男優賞なるか…。
賢治の妹トシを演じた森七菜さん( 未だ21歳とは驚き! 👀 )の熱演に涙。
田中泯さんの存在感、坂井真紀さんの柔らかな物腰に魅せられた。
ひたむきで実直な言葉で綴られた数々の作品の誕生は、宮沢賢治の生き方を尊重した父親と温かく見守り続けた家族の支え故なのですね。
美しく穏やかなラストシーンは、宮沢賢治の世界観そのものでした。
是非映画館で。
映画館での鑑賞
宮沢家という一つの家族の物語
初日舞台挨拶付きの回を鑑賞。
方言に苦戦したと言ってたが、東北人ではない自分には違和感なし。監督が、本来は「賢治」は方言的な発音で「けんず」になる為、映画の中で「けんず」にするか「けんじ」にするか、かなり悩んだそうな。
教科書に出てきたいくつかの作品に触れたことしかなかった宮沢賢治。こんな人物、こんな人生だったとは知らなかった。
2時で少々詰め込んだ感はあるが、父親目線でまとめていると思えば許容範囲。
雨ニモマケズは学校で暗記したので今でもほぼ暗唱出来るくらいだが、映画を見る前と後で感じるものが全く変わる。
宮沢賢治の作品を読みたくなった。
余韻に浸りたいのに、ラストシーン後に流れ出した女性ボーカルの曲でさめてしまいそこが少々残念。
親バカ政次郎の愛と家族の絆に涙する
宮沢賢治の父・政次郎にスポットを当てた小説「銀河鉄道の父」の映画化作品。原作未読ですが、予告の雰囲気に惹かれて鑑賞してきました。
ストーリーは、その誕生を喜んで大切に育てた長男・賢治が、勉学、人工宝石製造、宗教とさまざまなものに傾倒して一向に家業の質屋を継ごうとしないことに頭を痛める父・宮沢政次郎が、そんな奔放な息子を決して見捨てることなく、病に伏せるそばにも寄り添い続ける姿を通して、強く結ばれた家族の交流と絆を描くというもの。
宮沢賢治については、学校の勉強で習った程度の知識しかありません。それでも、質屋の跡取りとして不自由なく暮らしていたこと、妹のトシを結核で亡くしたこと、家業を継がなかったこと、農民のために人生を捧げたこと、志半ばで肺炎で亡くなったことぐらいは知っていました。もちろんこれらのことは作中でも描かれているのですが、家族の絆を強く感じさせる描き方がされていて、どのシーンも強く心を揺さぶられます。
どのあたりがフィクションとして脚色されているのか知りませんが、賢治が後世に名を残す作家となったのは、彼の熱烈な読者であった妹や精神面と金銭面で支え続けた父、その関係を温かく見守り続けた母や家族の存在が大きかったのだろうと思います。中でも妹・トシは、賢治のよき理解者であり、賢治の人生に大きな影響与えた人物として描かれています。
そんなトシと賢治に大きな愛を注ぎ、そばで寄り添い続けながらも、二人を相次いで亡くした政次郎の悲しみは、言葉では言い表せないほど深かったことでしょう。ラストは、政次郎の深い愛に報いるような素敵な演出で、胸が震えます。まさに「銀河鉄道の父」であったのだと感じます。
ずいぶん前に花巻の資料館や羅須地人協会などを訪れたことがあり、本作でも登場して懐かしく思い出されました。惜しむらくは、そこから眺める景色がかなり幻想的に描かれていたことです。できれば、ありのままの岩手の自然や当時の花巻の街並みをもっと観たかったです。あと、もう少しテンポよく描いてもよかったのではないかとも感じました。
主演は役所広司さんで、深い愛で子どもたちを包み込む親バカ政次郎を好演しています。賢治役は菅田将暉くんで、今までの賢治像を塗り替えるような演技が印象的でした。トシ役の森七菜さんも、存在感のある素敵な演技でした。
原作は気にならない
原作が好きで何度も読み返していたので、とても楽しみだった。父親像と役所広司さんは、私のイメージとピッタリ。小学校に上がったばかりの賢治の入院のときに政次郎がかけつけるところから、親の愛はこれ程かと泣けた。役所さんはさすがの演技力だった。田中みんさんも貫禄がある。だが、当時の家父長制度の描きかたが弱いので、当主が病人の世話はしない、とか進学も含めてすべて当主の許しのもとに決まる、名家でも商家では小学校どまりの学歴だというところがわかりにくいだろう。食事のときの座り順などは、もっと原作に忠実なほうが、というか時代的な厳格ざがあるほうがよかった。喜助の晩年の老醜をトシがいさめるところは、原作のように祖父をたてた描きかたをしたほうがよかったのではないかと思う。祖父をビンタするのはやり過ぎだし、綺麗に死ねは、直に言ってしまっては台無しだ。賢治が傾倒する国柱会は、日蓮宗系の新興宗教だ、そこをちゃんと描かないと日蓮宗がヤバイ宗教になってしまう。監督も、それはほど若いわけではないから、時代と地域の研究と解釈がたりないのかと思う。
菅田将暉さんの演技力と役所広司さんの演技力の織り成す作品はすばらしいものがある。全体に言えば、原作と違うディテールもさほど気にならない。これはこれでよい映画だと思う。役所広司さんがじつによいキャスティングだ。
まっこと、ありがとがんした。
雨にも負けず
物語としてはもっと良くなる可能性はあるかもしれないけれど、菅田将暉の宮沢賢治は素晴らしい。やっぱり彼は演技が最高だ。
で、「雨にも負けず」がここで使われるか!って感じ。
劇場で泣けて泣けてしかたが無かった。
原作読もう
宮沢賢治が好きなので観た。原作小説は読んでない。
非常に良かった。賢治がどういう人だったのか、今まではぼんやり聖人(せいじん)みたいな、あるいは朴念仁みたいな浮世離れしたイメージだったのだが、この映画で地に足のついた人物として想像できるようになった。
立派な偉人というよりは、純粋で理想主義者だけど現実が見えてなくて家族を振り回してしまう困った人って感じ。
お金持ちの家に生まれたこと、妹のトシとの関係、本が全然売れなかったこと、日蓮宗に傾倒したこと、農民に土壌改良の講義をしていたことなど、バラバラに知っていた賢治についてのエピソードが全部つながって理解できたのが気持ち良い。
少しだけひっかかったのは、日蓮信仰の描き方。この映画だと賢治は単なるヤバイ宗教にはまったみたいな感じに見えてしまうけど、ちょっと扱いが雑じゃないか。
映画だとどうしてもドラマチックに演出しなければならないので、リアリティを損ねてしまうところがあると思うし、ディティールが省かれたところも多いと思う。
たぶん、原作は映画の10倍は面白いんじゃないかと思う。
原作読もう…。
あと、エンドロールのいきものがかりの歌は映画に全然あってなくて、ええ~、って思った。「ジョバンニの島」で「星めぐりの歌」のアレンジバージョンがエンドロールで流れていたけど、ああいう感じになってたら良かったな。
役所広司の父親像
今月、花巻に行く計画で良いタイミングだった。
この作品、評価は役所広司の好き嫌いかな。最近の役所さん、どうも重い感じで苦手。この作品は割りとあっさりして頷いていたけど、クライマックスでやってくれましたね。臨終間際で「雨にも負けず」は、感動的だけどやや引く感じも。お題の通り、主役は父親だし、温かく賢治を見守る姿は共感もあるけどね。
菅田将暉は良いねえ。この作品で賢治役の立ち位置を分かって、一歩引いたやや控え目な演技が光る。裕福な家庭に生まれ、だからこそ贅沢にも葛藤し続ける賢治の苦悩かなあ。
実は父親だけでなく、賢治を中心にした家族の物語。祖父、両親、弟妹たち宮沢家の歴史。核家族で失った家族の温もりが羨ましいところも。見終わると優しくなれる気がする。
お父さんがかわいい!
純粋で夢想家の賢治と大正時代の強権的なイメージとはちょっと違う父親の関係が面白い。
何より父親が賢治(家族)のことが好きすぎでしょ!ってぐらい愛情深い。そこがかわいい。めちゃくちゃかわいい。
偉人の話は本人視点より家族視点のほうがリアルに感じるところがあると思うし、本作もそれが成功していると思う。
役所広司が父親役をかなり長い年齢幅を演じているけど、全然気にならないし、菅田将暉もやっぱりうまい。周りの演者もみんないいです。
ちょっと長いけど、家族ものとして鉄板な作りだし、万人にオススメできます。
菅田賢治
個人的な話ですが、若い頃、ずっと宮沢賢治が苦手でした。大学時代は周りにも賢治ファンが多くいて、後にわが子を賢治と命名した友人もいました。苦手な理由は単純で、何となく綺麗事のように感じていたせいですが、よく知らなかったということもあります。もう20年ほど前ですが、家族で岩手を旅行して宮沢賢治記念館に立ち寄ったとき、「雨ニモマケズ」の実物を見て、驚きました。粗末な手帳に走り書きのように書かれた筆跡をみて、その場で泣き崩れそうなほどの衝撃を受けました。この映画もまた、宮沢賢治という人をありのまま描いているように感じられて、何度も嗚咽が止まりませんでした。菅田将暉さんが命を吹き込んだ賢治、そしてわが子を思う父の熱情を役所広司さんが見事に演じきり、改めて命の尊さ、家族の絆を感じました。賢治が亡くなるシーンは成島監督も悩まれたようです。一歩間違えれば逆に興醒めしそうな脚色でしたが、強く心を揺さぶられました。
生命の力強さと儚さ
父親に命を繋いでもらった賢治。結核の妹を励ますために物語を紡ぎ出す賢治。宮沢賢治の作品に流れる生命賛歌の源流を感じる。
『銀河鉄道の夜』で感じる命の儚さも同じ原体験から来ていることも、この映像を見れば疑いようがない。
一心不乱に題目を唱える賢治。日蓮への帰依が自分の宿命と感じているか、生きる証と思っていたのか、自分にはわからない。菅田将暉の命を削るような演技を見ていると、賢治本人もきっとそうであったに違いない。
宮沢賢治については、初めて知ることが多く、賢治の思想の変遷を深く知りたくなった。
宮沢賢治の一番の読者は誰か
予告でコミカル路線の映画と思いきや、シリアスに描いていました。
宮沢賢治の生涯の物語で、何度か涙がこぼれそうな場面がありました。
スローモーションを上手く活用しており、胸に迫ってくるものがありました。
ラストの場面もエピローグを上手く締めており、個人的には好きです。
少し長く感じるかもしれません。
成島出監督と相性がいいのか、今回の作品も力作と感じ、充実した気分になりました。
納得感大。命の儚さ 求めてる観客の期待に応えている。そうだよなぁ、お父さん居たから世に出たのだなぁ!
連休、残日数2日 時点で
マリオ でも無く コナン でも無く 東京MER でも マーベル でも無く
本作観に来た人は 知的レベルが高い。
9割型の大入なのに 予告編段階でシーンとしてた。コレは予想してた。
しかし両隣の人含め、男の 瞬間すすり泣き が多いのは意外だった。
そもそも、連休中に本作観に映画館来る人は
皆、宮沢賢治 の概要、人生の概要知ってる人だから、兄妹の夭折、早逝は知ってるはず。
しかし、オーソドックスな直球ど真ん中に、かえって涙のツボなのだろう。
役所広司が安定の演技。
菅田将暉もチコっと青臭いが、げっそり痩せて俳優根性を見せた。
【有料パンフあるある】
2つの臨終場面、トシ妹は史実に忠実だが 宮沢賢治自体は 立会人が違う模様・・これ以上はやめときます
思い起こすに、
宮沢賢治 作品よりも その人生について 学校で学んだ気がする。
人生生き様先行の稀有の作家。
盛岡の農学校、羅須地人協会、人造宝石、誰でも馴染みなはず。
あと、教科書に載ってたのは 永訣の朝 の詩 ね
注文の多い料理店 は夏休みの読書感想文 が多くて教科書には無かった【地域によると思う】
銀河鉄道の夜は 意外に マイナー で最近亡くなられた松本零士さんには悪いけど
明らかに 銀河鉄道999のモチーフ 生と死 男の友達→メーテルに変更
ということで、生きてるうちは 自主出版売れず2冊のみの宮沢賢治さん
世に出たのはやっぱり父親の尽力が大きいよね。ウイキペディアでは草野心平が尽力とか書いてるけど
そこまで持って行ったのは親子ならではの チカラ技 だろう と本作を観て気づき、納得しました。
チコっと宗教は引きましたが、元祖自由人、元祖子供思いの父のストーリーに引き込まれました。
ユーモアもありますが、基本 永訣の朝のトーンで行く作品、ユーモアたくさんではありますが
観客の期待に応える、コレ映画娯楽の基本 に忠実な わかりやすくダレ場もなくワシの目も一瞬に過ぎないが潤んだ
【でも、一瞬だけね、鉄面皮だから】
結果オーライ
宮沢賢治の生涯と彼を見守った父親政次郎の話。
原作は知らずに観賞したけれど…長男の誕生を喜び出先から家路を急ぐ父親に始まり、あっという間に来年は小学生、そして今度は中学卒業!?その後も何度かはいつの出来事か表示されるけれど、シーン間で時間が飛びまくりで状況把握に一苦労。
賢治について深掘りをせず、その間賢治は何してた?な感じも満載だし…まああくまでも主人公は「銀河鉄道の父」だから、これで良いっちゃあ良いのだろうけど。
宮沢賢治は苦労知らずの金持ちのボンボンだからこそこうなったという風にしか…まあ正味その通りなんだろうけれど、父親過ぎる政次郎より、なんなら1番の功績は長女の様な。
この時代にこれを見守り続けたって意味では凄いのかな…。
映画として面白さはあったけれど「銀河鉄道の父」として引っ掛かるものは特段なかった。
父と息子だけでなく、妹と母のエピソードも活きている
宮沢賢治とその父親の話なのだが、物語の前半の見どころを「持っていく」のは、賢治の妹のトシである。
聡明で、芯が強くて、それでいて愛情深いトシを演じる森七菜は、初めて「当たり役」に恵まれたのではないだろうか?
トシが倒れることが、迷走する賢治を文筆家の道へと導くので仕方がないのだが、できれば、もう少しトシの活躍を見ていたかったと思ってしまった。
後半は、売れない賢治を一番の読者として支える父親の話が中心となるが、それでも、ラストに強い印象を残すのは、賢治の母親である。
それまで、ほとんど存在感のなかった坂井真紀演じる母親が、最後に賢治の体を拭くシーンからは、母親の愛情をひしひしと感じる取ることができた。
そして、賢治の死ぬ間際に父親が暗唱する「雨ニモマケズ」の詩を聞いたときには、思わず涙がこらえられなくなった。
それは、この詩が、賢治の生き様そのものだったからなのだが、それだけでなく、これこそが日本人の美徳であると、改めて実感したからでもある。
そこには、令和の時代にも色褪せない価値観が、確かにあると思えたのである。
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