「賢治の幸運」銀河鉄道の父 humさんの映画レビュー(感想・評価)
賢治の幸運
二世代で商売を成功させてきた財力が、賢治にもたらした影響は多大だったに違いない。
しかし一番の賢治の人生の幸運は政次郎の息子であったことなのだろう。
わがままで奔放な息子・賢治の傍らで、父・政次郎は長男として厳しく躾けていこうとするも、側からダダ漏れしてしまうような愛情深さを覗かせる。
そんな姿に、あらあらと思う一方でクスリとしてしまったのは何故か。
それは、政次郎が賢治の生涯のどんなときも見放すことなく人間くさい愛で彼に寄り添い通した点に答えがあるのだと思う。
政次郎を見ていると、父として自分とは違う生き方を突き進んでいく息子を、自分の人生いう宇宙の中に何度もあらわれる珍しく魅力的な流れ星でも眺めるようにおもしろがっていたようなところに気がつく。
そうか…彼はその先のいつの日かにある賢治だけの個性で放つ瞬きを誰よりも信じ、悩む部分さえも眩しいほどのたのしみのひとつに変えていけれる人だったんだと。
しかも、そのひたむきな思いは押しつけることなく実に自然だったからこそ、息子の究極の〝支え〟になっていたのがわかるのだ。
ノスタルジックな映像に方言の独特な趣きが加味され綴られる物語は、静かで地味で興奮する刺激はない。
しかし、たしかに沁みてくるのは、誰かの子として、また、親として生きるかけがえのないひとときとその儚さを照らしそっと心に触れる力があるからなのだ思う。
政次郎が乗り込んだ美しい銀河鉄道はこの世に生まれて死ぬ生命のつながりに思いを馳せさせるシーンだった。
そこには、時代のなかで斬新すぎた父親像を裏表なく貫いた笑顔が誇らしさと共にあり、再会した2人への心の奥から湧くような言葉とトーンは、後に賢治を世に送り出すことになった政次郎の人柄そのものだった。
大切な人との別れのすべてを終えるとき、言葉をひとつ伝えるなら私もきっと「ありがとう」を選ぶだろう。
享受できた運命への感謝をあらわすこれ以上やさしさに満ちた響きがあるのだろうか。
追記
菅田さんの役者としての真摯な熱量にまた敬意を抱きました。
役所さんは言うまでもありませんね。
コメントありがとうございます〜。
はい、私もおおいに期待していた作品だけに、かえって辛口気味になってしまいました。
フィクション部分が賢治を奇天烈に脚色し過ぎているのがなんともやりきれず・・・。
おそらく本作を鑑賞なさった方の大多数はこれを「史実」
賢治は「こういう人物だったのだ」と信じると思いますし。
感動を生む事には成功していますし、映画としても悪くはないと思うのですが「宮沢賢治」という人物に対する誤解を助長してしまう点にだけは苦々しさを禁じ得ないのでした。
みかずきです。
humさん宛てのコメントを誤って、私のレビューのコメント欄に記入してしまいました。
私のレビューのコメント欄を御覧頂ければ幸いです。
では、また共感作で。
ー以上-
humさん
こんにちは
共感いただきありがとうございます。
また素敵なコメントまでいただき、大変恐縮しております。
とても嬉しく思います。
ありがとうございました。
賢治さんは、政次郎さんの息子に生まれてきてよかったですね。
本当に幸運でしたね。共感させていただきます。