「日本の存在感の乏しい父という存在」銀河鉄道の父 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
日本の存在感の乏しい父という存在
(ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
※本来の長いレビューを書く時間が最近ないので、短く
この映画は魅力ある人物として宮沢賢治(菅田将暉さん)、妹の宮沢トシ(森七菜さん)、出演場面は短いですが祖父の宮沢喜助(田中泯さん)の3人があげられると思われます。
そしてこの3人は、劇中でいずれも死に行く人物だと分かります。
しかし、死に対峙して生命を燃焼させた3人とは反して、この映画の主人公であるはずの父の宮沢政次郎(役所広司さん)の魅力がどうも映画の中から伝わって来ないと思われました。
父・宮沢政次郎は、実は宮沢賢治の求めに初めはことごとく反対しており、その後になし崩し的に賢治の要求を認めてしまうという繰り返しでした。
つまり、父・宮沢政次郎は、主体的には宮沢賢治を初めから助けていないのです。
もちろん他作品を参照するまでもなく、父・宮沢政次郎を演じた役所広司さんの演技は本来は凄まじいレベルであるはずです。
なので父・宮沢政次郎の魅力が伝わって来ないのは、(役者の演技の問題ではなく)父・宮沢政次郎という人物自体に魅力が欠けていたのが理由と思われました。
つまり、一般的な日本の父親という存在の薄さが、特に戦後からの解釈でここでも父・宮沢政次郎に凝縮される形で際立ってしまった、とは思われました。
あと、特に映画序盤の画角が不安定で、画質がCG合成の影響なのかかなり悪いのも気になりました。
銀河鉄道の兄妹という題材であれば傑作になったのかもとは正直思われました。
菅田将暉さん森七菜さんなどの演技の素晴らしさだけでなく、エピソードの面白さも沢山あり、優れた作品になる可能性があったと思われただけに、惜しい作品になっているなと思われました。