「【”思いやりという小さな灯。”若年性アルツハイマー型認知症に罹患した敏腕営業マンの深い喪失感と再生していく様を描いた作品。それまでの認知症に罹患した方への誤った考えを、修正してくれた作品でもある。】」オレンジ・ランプ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”思いやりという小さな灯。”若年性アルツハイマー型認知症に罹患した敏腕営業マンの深い喪失感と再生していく様を描いた作品。それまでの認知症に罹患した方への誤った考えを、修正してくれた作品でもある。】
ー 映画で観た来たアルツハイマー型認知症者の描き方は、「ファーザー」「アリスのままで」を始めとして、悲壮感漂う事が多い。
邦画でも、高年齢者のアルツハイマー型認知症の描き方は、矢鱈にヒステリックに家族に怒鳴り散らしたり、矢張り暗いトーンで描かれている事が多い。
それが、いつの間にか(幸いにも、近くに罹患した方が居ないため、実態を知らない。)刷り込まれていた事をこの映画を観て、認識した。-
◆感想
・最初に、この映画の出演者の演技は貫地谷しほりさんを除いて、素人っぽい。(ホント、スイマセン。)敢えてなのかは分からない。只、それが却って現実味を帯びたのは確かである。
・鑑賞理由は、余り描かれて来なかった若年型認知症に罹患した方の実話ベースである事である。39歳と言えば、私よりも若い。可なりキツイシーンも多数あるだろうと思いながら、劇場へ行ったが、その予想は裏切られた。
・主人公の只野(和田正人)は、当然悲嘆にくれるのであるが、彼の妻、真央(貫地谷しほり)が心を痛めながらも、表面上は実に明るく夫に接するのである。
そして、只野も掌に”怒らない!”とペンで書くのである。
■印象的だったシーン
1.元サーファーだった夫を持つ夫人(中尾ミエ)が楽しそうにサーフィンをする夫を見て言った言葉。
”認知症の人は、感受性が高いの。だから、家に閉じこめて周りが悲壮感一杯になると、暴れだすの。”
ー これは、知らなかったな。成程。-
2.只野が、会社帰りに家に帰る道が分からなくなった時に、近くの女性に”私は認知症です”と書かれたカードを見せ、男性や若い女性の助けもあり、無事に家に着くシーン。
ー ”周りに、頼れば良い”と言う考え。年配の女性がTVで”認知症だった事が分かったら、生きていけない。”と言っている事と、真逆である。”認知症は隠してはいけないのだな”、と学ぶ。-
3.只野が勤めている、ディーラーの社員たちも皆、彼に優しい。だが、それは只野が努力している姿を見ているためである。
ー 座席を記したモノ。後輩に営業マンのノウハウを記したモノを渡すシーン。-
4.只野が久しぶりにフットサルに参加した時に、仲間達に若年性アルツハイマー型認知症に罹患したと告げるシーン。
ー 仲間が、”俺たちはお前の事を忘れない。居なくなったら世界中、探してやるよ!”と只野に声を掛けるシーン。
只野が罹患する前に、如何に仲間や会社の同僚に慕われ、好かれていたかが分かるシーンでもある。人間関係の構築は、病に罹らなくても、とても大切なことなのであるなあ。-
5.真央が娘二人に、只野が若年性アルツハイマー型認知症に罹患した事を告げるシーンからの、居なくなった只野(実は家に居た。)を真央が必死に探すシーン。そして、娘達もやって来て・・。
ー そして、只野と真央が二人になった際に、二人で口を揃えて言う只野のプロポーズの言葉。”何があっても、ずっと傍に居て下さい。”
”覚えて居てくれたの。”と言って泣き崩れる真央の姿。-
<今作は、私のそれまでの認知症の概念を変えてくれた作品である。
そして、2025年には5人に一人が認知症になると言われている高年齢化社会の中で、私達がやるべきは、認知症に関わらず、”困っている人には声を掛ける”という当たり前の事を地道に、愚直に実践する事なのだと、改めて思わせてくれた作品でもある。>