「【”「Woman's sadness」と思いきや「眠り姫」””カレと彼女と元カノ”の関係性の変遷を予想の左斜め上を行くストーリー展開で魅せる作品。城定監督の引き出しの多さに驚いた作品でもある。】」恋のいばら NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”「Woman's sadness」と思いきや「眠り姫」””カレと彼女と元カノ”の関係性の変遷を予想の左斜め上を行くストーリー展開で魅せる作品。城定監督の引き出しの多さに驚いた作品でもある。】
ー 今作はエンドロールでも流れるが、香港映画の「ビヨンド・アワ・ケン カレと彼女と元カノと」のリメイクである。
だが、この作品は脚本も務めた城定監督の観る側の予想を次々に覆す、優れた仕掛けと、ストーリー展開に驚かされた城定オリジナル作品である。-
◆感想
・冒頭の羽毛が舞うシーンから、観る側は城定監督の巧妙な物語に取り込まれて行く。
・最初は、カメラマン健太郎(渡邊圭祐)の元カノの桃(松本穂香)が、今カノの莉子(玉城ティナ)の居場所をSNSで見つけ出し、桃の拡散したくない健太郎が撮った写真をパソコンから削除して欲しい・・、という頼みに、莉子が渋々と応じるシーンに、観る側は”コロッと”ヤラレテいる。
ー 莉子が健太郎の部屋に有った、絶版写真集「Woman's sadness」を入れ替え、ゴミステーションに捨てるシーンが映されるが、鋭い方はここで気付くかもしれない。
私は、城定トリックに気付かなかったよ・・。-
・その後も、桃と莉子の関係性が、映し出されて行く訳だが、ここでも様々な仕掛けが用意されている。
ー だが、私は依然として気付かない・・。-
・桃と莉子がいつの間にか、関係性を深め、愚かしき健太郎の部屋に何とか忍び込んだ時にパソコンや、数々の女性癖の悪さに気付いた二人。
ー だが、私は依然として気付かない・・。
桃と、莉子が健太郎の女癖が悪い事を知っていた事に。-
■今作の特に、秀逸な点
・桃が喫茶店で健太郎に振られたと思った時の”俺たち、付き合っていたっけ?”と言う言葉を最終版、自宅に戻った健太郎が桃と莉子が切り裂いた布団の羽毛が舞う中、莉子に対し怒りの電話を掛けるシーンで莉子が言った言葉。
”私たち、付き合っていたっけ?”
ー 作品の構成が見事である。-
・酔っ払った桃が健太郎の部屋に合いカギを使って乱入し、絶版写真集「Woman's sadness」を渡していた時にベッドの下に隠れていた女性は誰であったか・・。
ー ここで、私は漸く気付いたと思ったら、更にもう一捻りあった・・。-
・莉子が健太郎の部屋に有った、絶版写真集「Woman's sadness」を入れ替え、ゴミステーションに捨てるシーンが再現されるが、そこに健太郎の家を見張っていた桃が現れ、「Woman's sadness」を手に取るシーン。写真集に挟み込まれていた莉子の寝顔の写真。そして、その無垢な莉子の寝顔を見る桃の表情。
ー 実に巧みな構成である。-
<今作は、観る側の予想を次々にひっくり返して行く、巧妙に仕掛けられた、ストーリーテリングに唸った作品である。
「恋の”いばら”」と言うタイトルも、観終わると、”秀逸だなあ”と思った作品でもある。>