「人間性が見えない」ウィッシュ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
人間性が見えない
「ディズニー100周年の集大成」と銘打ってキャンペーンをした割に、アメリカの興収はかなり寂しいとのウワサで日本でも評価は賛否ある様子。
で、上映スタート。
映画冒頭に、今回のヴィランてあるマグニフィコ王の紹介と、彼の興した「ロサス王国」の成り立ちや、国民はそれぞれ18歳になったら自分の「願い」を国王に納める(決して叶うワケではない)という「しきたり」が説明される。
国王はその召し上げられた願いを見て「善良」で「国のためになる」と判断したものはその魔法の力で叶えるが、それ以外の人々は自分の願いを忘れてしまうらしい。
ん?
そして、主人公たち国民が登場。
それなりに幸せそうに暮らしていて、冒頭から楽しげな音楽とダンス(インド映画っぽい)が繰り広げられる。
ん?
ロサスの国民は、国王の言葉に対して特に大きな疑念を抱くことなく歓声を上げる。
ん?
そもそもの設定がどう考えても「デストピア」のソレなワケだし、国民は魔法で操られている、というワケでもないらしい。
おまけに願いを納めると、当分の間は腑抜けになってしまう。
でもなんかみんなルールを守って、国王を支持してる。そんなことある?
「願いの中には良くないものもあるし、叶わない願いに苦しむくらいなら、最初から願いなんてない方がいい」
そのロジックはファンタジーとして分からなくもない。じゃあ、アーシャに個人的に打ち明けるのではなく、この世界においてこれが「正論」として受け入れられていることをもう少しちゃんと見せてくれないと。
私にとってはどうにも飲み込めないスタートが切られてしまった。
ただ、お話は一本道。
歌の力・魔法の力・仲間の力・周りのみんなの力を結集して最後はヴィランを倒し、みんなの「願い」を取り戻すという流れは非常にシンプル。
「願うこと」は大事。
うん、メッセージは分かった。
でもさ。
やっぱりコレは映画としてどーなの?
登場人物について、主人公のアーシャでさえ、ほとんど「このコは何者なのか」、どんな経緯でここまで来て、それこそどんな「願い」を彼女が持っているのかなど、しっかり描かれていない。
物語としては、100年を迎えたディズニーがこれまで大事にしてきたものを、「叶わないなら、いっそ願う事をやめればいい」「願う事そのものに意味がある」という立場で対立させて、あらためてその大事さを訴えるってことなんだろうけど、主人公もヴィランも周りの友だちや可愛らしいキャラクターに至るまで、人間性が見えない、というか登場人物たちが皆ただその「物語を進めるためのコマ」としての機能しかない様に感じてしまった。
極端に言えば、主人公はアーシャじゃなく他の誰かでも多分遜色はなかったのでは?
ちりばめられた「ディズニー的なアレコレ」を探すのは楽しいのかも知れないけど、ディズニー100年の集大成って、もしかしてそういう「ディズニー小ネタ集」ができたってこと?と勘ぐってしまうほど、私は映画としての面白さを感じなかった。
歌は結構いいのに。