「一応、見たいものは見せてくれる」ウィッシュ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
一応、見たいものは見せてくれる
予告から受けた印象は可もなく不可もなくといったこところですが、ディズニー創立100周年記念と銘打った本作ですから、きっと期待以上に楽しませてくれるだろうと、公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、人々から差し出された夢を、魔法を使って叶えるマグニフィコ王の治めるロサス王国で、祖父の夢を叶えてもらおうと王の従者に志願したアーシャが、王の本心を聞き、多くの夢が叶えてもらえないことを知り、人々の願いを救いたいと夜空に祈った彼女の元に舞い降りた、不思議な力をもつスターとともに、マグニフィコ王から人々の夢を取り戻す姿を描くというもの。
わかりやすい王道展開のストーリーなので、小さな子どもでも楽しめる作品に仕上がっています。お得意のミュージカル要素も随所にあり、テーマ曲を歌い上げるアーシャはとても魅力的に映ります。ラストで、人々の胸に希望や夢が宿り、王の呪縛に負けずに一人一人が立ち上がるシーンは、心が熱くなります。また、表情豊かにいきいきと動き回るキャラクターには、ディズニーらしさを感じます。一応、見たいものを見せてもらえたという満足感はそれなりにあります。
でも、何か物足りなく感じます。あまりにも予定調和な展開で、子どもなら楽しめますが、大人にはやや退屈というか、もう少し内面を掘り下げてほしかったと感じます。本作では、アーシャvs王という構図に周辺人物が絡むのですが、この中心となる二人のキャラがなんだか薄いのです。特にアーシャはヒロインであるにもかかわらず、ストーリーを通してなんら変容も成長もしていないように感じます。他力本願だった彼女が、仲間との絆を感じ、自身の内面を見つめ直して、自らの力で願いを実現させる決意をするというような変容や成長を、映像からもっと感じさせてほしかったです。
またマグニフィコ王も、もともとは国民に慕われる良き王だったのに、権威や欲望に溺れ、葛藤の中で闇堕ちしてしまったが、アーシャとの対決を経て改心するとか、もう少し人間らしい変容を見せてほしかったです。この二人に周囲の人物も含めて、総じてキャラの掘り下げが足らず、内面に魅力を感じないのが残念です。そのため、共感も感情移入もしづらかったです。唯一、共感できたのは、王に願いを託す国民の姿が年末ジャンボを買う自分に重なり、もっと他にやるべきことがあるだろと思わされたことぐらいです。
「ディズニーにハズレなし」とはよく聞きます。確かに本作もハズレだとは思いません。でも、本作も含めて最近はアタリも少ないような気がします。赤点を恐れてポリコレに配慮しまくり、過去作のいいとこ取りをして、良くも悪くも80点の及第点を狙ったような印象の作品ばかりです。仮にも100周年記念と銘打った本作ならば、ディズニーのこれからの100年を占うようなチャレンジングな姿勢を観せてほしかったです。これまでの100年を振り返るのは、最初の短編「ワンス・アポン・ア・スタジオ」(このレビューはそちらのページに上げています)だけで十分です。
みんなディズニーが大好きで、常に新たな夢を見せてほしいと願っています。そんなファンの掲げる高いハードルをいつも超えてくることを、これからもディズニーには期待したいです。
キャストは、アリアナ・デボーズ、クリス・パイン、アラン・テュディックら。英語に疎いので演技の良し悪しはわかりませんが、歌声はどれも素敵でした。
共感ありがとうございます。
正直ありきたりなお話でした。生田絵梨花の歌目当てで吹替版にしたんですが、“The wish”は耳に残る良曲、3度位歌いましたかね、〜ない!という訳詞にした人は凄いです。
麻布豆ゴハンさん、共感&コメントありがとうございます。レビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
おっしゃる通り「普通にいつもの定番の子供向け水準品」でした。これで100周年記念というには、ちょっと物足りないですよね。「本国でも酷評の上に大コケ」というのは知りませんでしたが、やはり観客の期待に応えられていないということなのでしょうね。でも、ディズニーならこれを機に奮起してくれるはず!次作を期待して待ちたいと思います。
本当にその通りかと思いまする。100年の集大成と軌跡なら「ONES UPON A STUDIO」だけで十二分に完結しています。
その上で、これからのディズニー100年の発展を予感させる様なテーマ性やワクワク感や革新性は残念ですが本編のどこにも感じられ無かったです。年末年始に子連れファミリー層が普通に楽しむ、普通にいつもの定番の子供向け水準品でしか無かった。
実際に本国でも酷評の上に大コケ、他方でヒューマンストーリーを掘り下げた「GODZILLA-1.0」や「THE BOY AND THE HERON」が子供向けエンタメジャンルなのに大人の鑑賞にも値する作品として非常に高い評価となってるのが象徴的でするね。
こちらの期待値も高すぎたのかも知れませんが、100年100年言うなら呼び込みキャッチフレーズで終わるのじゃ無く「ファンタジア」の様な時代の限界を飛び越えた様な衝撃的な創作品を生み出して欲しかったでするね。
rokuroさん、コメントありがとうございます。本作のレビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
私の拙いレビューをお褒めいただき、ありがとうございます。うまくまとめられず、ダラダラとした長文レビューとなることが多いのですが、何かしらのご参考になったのならうれしい限りです。これからもよろしくお願いします。☺️