劇場公開日 2023年6月9日

「実写も好きになりたかった…(追記あり)」リトル・マーメイド 1番レジ~さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0実写も好きになりたかった…(追記あり)

2023年6月15日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

字幕で見ました。
前評判と酷評は知っていたけど、楽しみにしてました。
アニメ版も大好きですが、100%再現ではなくアニメ版との違いも色々あるだろうと思って行きました。
ポリコレ云々のクチコミも知っていたので、あえてあまりツッコミを入れずに見ようと思った訳ですが…

エリックと母の肌の色、違いますよね?
別に違うなら違うでどうでも良かったです。
最初からポリコレが~と言われているので、親子間の人種の違いは当たり前のようにストーリーは進むんだと思ってたんです。だからこっちも深く考えず、触れないように観てたんです。
なのにエリック、あんた何て言った?
「僕は本当の息子じゃないんだ…」
そっちから触れてくるんかい!
それならどういういきさつなのか気になるじゃん!
そしたらエリック、あんた続けて何て言った?
「いや…いいんだ。おやすみ」
おや!すみ!かい!切り上げた!
どういうことよ!匂わせるなら全部嗅がせろよ!
なんか、ポリコレを紛らわせるために「ハイこれで辻褄が合いましたっと」みたいな扱いだなぁと感じました。雑じゃない?どうしたの?

アリエルのハリーはとても良かったです。
海の中で揺らぐ髪、身のこなし、そして歌声。
とても美しい。撮影は大変だったろうなと思います。私は再現100%を希望したわけではないから笑顔が可愛くて歌声が素晴らしいハリーがこの作品のアリエルだと思って観ることができました。
フランダーもセバスチャンも、リアルな生物らしさが不評のようですが実写化なんだからそりゃ生物になるだろうよと思います。
海の中は本当に潜っているかのようにリアルで美しく、人魚もアースラも上半身はリアルな人間ですから、そこへみんなが愛着のある魚とカニだけアニメ版のままだったら、せっかくのCGの世界が中途半端な仕上がりではないかと。
私はアニメ版のフランダーもセバスチャンも好きだけど、実写のカニとイシダイもありでした。

アニメ版にはなかった、初めて人間になってワクワクする一方、人魚の時にはなかった初めての不安と恐怖という心の浮き沈みが歌で描かれるのはとても良かったです。
アニメ版ではアリエルははしゃぎっぱなしでしたが、実写のアリエルはふと我に返ってどうしよう…という気持ちになっており、大切なものを全て差し出してきたことの大きさと恐ろしさ、後戻りのできないプレッシャーを感じる描写は新しいアリエルとして、とても良かった。

注意喚起がされている点滅のシーンはクライマックスのアースラが巨大化したシーンのことかな?絶対ここだった!と言い切れないくらい、終始気にならなかったです。
それよりも、巨大化したアースラの顔が全然見えないことが気になりました。
アースラってモノトーンのキャラじゃないですか。
荒れた空の暗さでアースラの顔がアップになっても紛れてしまって、かと思えば雷がカッ!!と光った時はアースラは引きの全体像で。そんで雷だから光もすぐ消える。引いたまま暗くなる。
画面が暗いとアースラのアップ・雷が光るとアースラの引き。暗すぎて見えない!遠すぎて見えない!私の中の渡辺謙が叫びながら書類を撒き散らしそうでした。
スクリーンの性能でしょうか?それとも何だかんだ点滅を目に食らってる?
ちゃんと暴れ狂う時の表情が見えないまま、とうとうアースラは海に沈んでいきました。
メリッサマッカーシーのアースラがとても素晴らしいので、アースラ一番の見せ場である巨大化した姿もちゃんと見たかったのに残念です。

諸々落ち着いて、トリトンは寂しさをこらえてアリエルを人間にしてあげましたが、ここまでにあった素晴らしい点を吹っ飛ばすラストでした。

まず、エリックとアリエルは新天地を見つける航海に出ることになったようです。
エリックは新しい土地を見つけよう~いつまでも二人で新しい城で~と歌っていましたが、エリック!ちょっとお待ち!
そもそもエリックは今の城にいちゃいけないの?
実の親子じゃないから?でも今あんた王子でしょ?今の生活をより良くするために航海してるってあんた前に言ったよね?実の親子じゃないことはラストをこんなふうにさせるの?
ほら言ったじゃん、もっと詳しく親子関係を説明せいと。
エリックとアリエルが城を出ていく理由について納得できないなか、トリトンが「私達はいつもアリエルの味方だ」と言って映し出されたのは人種も年齢も様々な人魚の一味の姿でした。
姉さん達だけじゃないです。ラストなのに今まで一度も登場しなかった人魚が味方と称して突然の初登場。突然たくさんの人魚が出てきて味方だと言われても、アリエルが多くの人魚から特段慕われていた描写がなかった上での味方宣言なので、アリエルは嬉しそうでしたがこっちは「人魚こんなにいたんだ」という驚きばかりが先行してしまいました。
私は感動の沸点が人より低い自覚があり、「うそでしょこのシーンで泣くの!?」と言われることが多いのですが、そんな私の涙腺ですらポカーンでした。
集結した人魚もまた人種のるつぼでしたが、ここまででそういう説明は一切なかったことと尺もないことを感じていたので、もう深く考えるのはやめました。

アニメ版ではトリトンが二人の門出を祝って虹をかけましたよね。
あのシーンは本当に感動して泣きました。
実写のトリトンのお祝いは、沖に停めた帆船へ乗り込むためにアリエルとエリックが乗ったボートを押す、波でした。
波に押されて船首を若干上げながらフルスピードで進むボートに、手を繋ぐでもなくキスをするでもなく、エリックとアリエルは適度な距離を保って本当にただ乗っている。そんな二人が映し出されて映画は終了。
電動ボートという悪口を目にしていましたが、言われても仕方ないと思いました。
アニメの再現100%を望まないとは言いましたが、リトルマーメイドが素晴らしかった!と言えるための集大成はラストにおけるトリトンの愛娘の送り出し方だと思うんです。
まるっきし同じ虹ラストじゃなくてもいいから、もっと何かこう、祝福っぽい何か、なかったでしょうか。欲しかったー、祝福。

アリエルもアースラも、トリトンもフランダーもセバスチャンもみんな嫌いじゃなかった。
アニメ版とかけ離れたアリエルでも私は好きでしたし、アニメ版より歌は増えていたけどもっとアリエルの歌声を聴きたいと思うくらい良かった。

これはキャストのせいじゃない。
全部脚本とカメラワークが悪い。
素晴らしいキャストを揃えておいて美しいCGを駆使しておいて、観客置いてけぼり!ラストはこれかーい!と、なりました。
アニメ版と違うなら違うで説明を入れるなどの納得できるストーリー展開にしてほしかったし、人魚から本当に人間になったアリエルを祝うラストの重みを大切にしてほしかった。
観てる途中はワクワクするのに、観終わった後は残念がのし掛かってくる作品。
海がとても美しかったのでアニメ版より好きになるかと思ったけど、ストーリーのまとまりは本当に大事ですね…。
星はセバスチャンとフランダーとスカットルの分、海の中の美しさの分、アリエルの歌声の分だけの星3つです。
【追記】
今ふと思い出したんですけど、スカットルって実写だとカツオドリですよね?
長い時間潜水して魚を食べる、実際に存在するカツオドリ。
だから海の中で「アリエル~やっほー元気してる~?」と言える設定は別に良いんですけど、そんなスカットルだからこその矛盾に気づいてしまいました。
アリエルはFor the first timeの曲中で
「海の生き物って、人間の世界ではただの食料でしかないの…?」という絶望にも似た不安を歌っていましたが、
アリエル、それからセバスチャンとフランダー!
あんたらもちょっとお待ち!

スカットルめっちゃ魚食うてたやんか!
スカットルも魚は食料やぞ!
ええのんか!友人が食うとるぞ魚を!

For the first timeはとても良い曲だと思うんです。
何度も書くけど、理想と現実の差にショックを受ける描写はとても良いし、アリエルの歌声と歌における表現力は最高です。これは名曲。
歌詞を書いたのはアフリカンアメリカンな点が物議を醸しているハリーではありません。
スカットルにカツオドリをキャスティングして魚を捕食するシーンを作ったのは、ポリコレではありません。

アニメ版との乖離や差別思想に不満を抱くより、生物の生態とキャラクターの心情の辻褄を合わせないせいで、フラットな気持ちの観客までも納得できなかったという製作陣の詰めの甘さにこそ目を向けるべきです。エリックと母のこともそう。
もうみんなさ、アニメ版との違いや人種における不満なんて忘れちゃおうよ。
今作の良くない点はそこじゃないんだよ。
私はアニメ版に忠実なキャスティングだったとしてもストーリー展開がこれだったら、感想は同じです。
設定の矛盾に気づかないまま完成だなんて、海の世界をわかってない。
そんな製作陣は結局「人間」なんだなって思った次第です。
人魚もカツオドリも悪くない。
アリエルやCGが素晴らしいだけにこういう点でほころびがあるのは悔しいです。

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1番レジ~