「数年後も鑑賞に耐えうる作り。素晴らしい」リトル・マーメイド まきもどしさんの映画レビュー(感想・評価)
数年後も鑑賞に耐えうる作り。素晴らしい
単純に主演を黒人にした、というだけではない。本当に色々な人がいて、現代の縮図のようでした。
感触としてはブリジャートン家の開けたフラットな役者の配置と、エブエブで描かれた親との置かれた文化的な相違、理想の押し付けからの和解の物語が融合したような、まさに今の時代だからこその作品でした。
舞台設定こそ昔を借りているものの、語っている内容は未来。こういうものを子供の頃から観られるのはとても幸運だな、と思うとともに、それこそが大人の役目だな、と。肌の色や言語が違うというだけで憎しみ合ったり戦争になったり、そういうものを大人が煽ることより罪深いことはないです。実際に争い事が無くならないとしても、子供には先入観なく「隣人を愛せよ」の気持ちでいてほしい。
あまりディズニーは好きではなかったのですが、この作品でディズニーが世界的企業である、という自負を持ってこれを提示してきたことには感服しました。
今回、王子が養子(というか語り口から見るに難破船の生き残り。つまり孤児である)という設定があったことで「両親が揃っていて何不自由無い」という立場の人間がおらず、皆が皆、自分の人生とは、ともに生きる相手とは、という問いを抱えているところも良かったです。
本当に、誰も孤独にしないなと思いました。
俳優陣は皆良かったですが、個人的に特に好きなのはど迫力のアースラと飄々としてその実王子にとって真に大事なことはなにかさり気なく教えてくれるグリムズビーが良かったです。敵味方、どちらもイギリスアクセントなのも良かったです。
アリエルは王子に惹かれつつも人間界への興味がまさって自由に振る舞っているところがかわいかったですね。
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