「そろそろ良い作品が観たい」リトル・マーメイド ee2さんの映画レビュー(感想・評価)
そろそろ良い作品が観たい
物議を醸しているキャスティング、フランダー及びセバスチャンの外観に関しては完全に個人の好みゆえ、好きではなかったとだけ述べておく。随分と質素なトリトン王の城、生々しい色味の海の生き物たち、そして陸、どこを切り取っても映像美を感じられなかったものの、これもまた個人の好みか。しかし、子供向けに「誰もがなりたいプリンセスに」というメッセージを打ち出すのであれば、光輝く城が必要であったのではないか。
一番期待していた歌唱パート。part of your worldは、ハリー・ベイリーの歌唱力は確かに素晴らしいものの、あんなにも上がりたい地上に上がる術を持たないアリエルの切ない心情はパワフルさにかき消されてしまっていた。また、歌いながら大切な宝物をやや雑に放り投げたり、水中に飛ばしたり、叩いたりする姿は疑問。アリエルにunder the seaをハモらせるべきではないという点は、多くの方のご指摘通り。kiss the girlの歌詞の修正。確かに下世話な歌詞ではあり、作品を知らない人が聴けばギョッとすること間違いなしだが、映像や衣装にも同じくらいの熱を注いでほしい名シーンだった。
結婚式のシーン。アニメ版の時から、アリエルが自ら支払った声を力で奪い返すくだりには違和感があった。アースラがアリエルを妨害しない、声を利用しないと誓っていたのなら兎も角。この実写版では契約を交わしたアリエルが自らヴァネッサに掴みかかるため、更に疑問に感じる展開に。ヴィラン=絶対悪で、プリンセスの言動はお咎めなしか。改変するのであれば改変するで、本作ではエリック王子がアリエルに惹かれる過程をアニメ版以上に丁寧に描いたのだから、声を聞かずとも最終的にはアリエルを選ぶエリック王子ではダメだったのだろうか。
人間の暮らしに大した理解がないはずのアリエルが、上手いこと船の舵を切ってアースラにトドメを刺すシーンも疑問。そして見事に見せ場を奪われたエリック王子。母親や執事に口を出されてばかりの弱々しい姿勢も目立ったが、王子をこのように情けなく描くことが近年のディズニーの「思想」なのだなど、勝手に憶測で語るべきではないのだろう。
しかし、あまりにも「政治的」な作品であることは確かであり、ゆえにディズニーが望んだ数字が出ていないようであるが、従業員ばかりが割を食い続けるのではあまりにも理不尽ではないか。