「映画製作という狂気。」バビロン ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
映画製作という狂気。
デイミアン・チャゼルの最高到達点と言っても過言ではない。それほどの愛と熱量を帯びた作品だった。
ララランド以降、大衆向け映画にシフトチェンジするかと思いきや全くそんなことは無かった。
それどころか、デイミアン・チャゼルの狂気はセッションよりも更に速度を増していき、本作を持って次のステージに達したと見て良いのかもしれない。
酒池肉林のオープニング。
これをあろうことかノーカット長回しで臨場感たっぷりに見せてのけた。
この狂いに狂った映像体験だけでもう満点だ。
サイレント映画の撮影シークエンスのワクワク感とヒヤヒヤ感。この興奮を1人でも多くの人に映画館で体験してほしい。
映画好きなら誰もが想像するであろう"セット裏"のマジックが脅威の映像で表現される。
そして何より素晴らしいのは、本作がサイレント映画からトーキー映画への変化。
そこで移り行く人間ドラマ。
更に現在へ続く映画史までを包括している点だろう。
これは単にエンタメ映画として消化するにはあまりに惜しい作品だ。その先にある深遠なテーマと哀愁漂うドラマに身を預けてほしい。
それともう一つ。
これまでデイミアン・チャゼル作品が嫌いだった人にこそこの作品をオススメしたい。
なぜなら、この作品にはスタンリー・キューブリックやクエンティン・タランティーノのイズムが色濃くリスペクトされているからだ。
これまでの監督の作品像を180度回転させるほどの狂気の映像体験。賛否割れるのは当然だが、好きな人はどこまでもハマってしまう。そんな中毒性の高い最高に尖った作品に仕上がっている。
映画に刺激を求めている人にはぜひオススメしたい。
ラスト10分はトリップ感すら覚えた。
愛憎入り混じった狂気の3時間を体感せよ。