劇場公開日 2023年2月10日

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「ロマンチストな監督が稚気大開放にして描くハリウッド混沌期」バビロン 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ロマンチストな監督が稚気大開放にして描くハリウッド混沌期

2023年2月28日
PCから投稿

まだまだ有象無象がひしめくカオスだった1920年代のハリウッドから、清廉潔白を表看板にした大資本の時代へ。その劇的な変化を、サイレントからトーキーへの過渡期と重ね合わせるのがこの映画の趣向。乱痴気騒ぎに過ぎない序盤のパーティーシーンには面白みを感じられなかったが、映画の撮影シーンの混乱から作品が生まれるエネルギーには惹きつけられる。ただ、ケネス・アンガーの「ハリウッド・バビロン」を手本にした、かなり露悪的にカリカチュアされたハリウッドという印象ではあり、歴史の再現というよりも一種のダークファンタジーだと思って観た。良くも悪くも人生観や世界観が未成熟く思えるのはこれまでのチャゼル(どうやら発音はシャゼルが正しい)と変わらないし、それが個性でもあり、物足りなさでもあるのだが、チャゼルが一貫して極度のロマンチストであることは浴びるほど伝わってきたので、やっぱり嫌いになれない。糞尿ネタで嬉しがってんじゃねえよと眉をひそめつつも、どこかしら可愛いんだよな。

村山章