「映画好きのための作品」バビロン ぞのさんの映画レビュー(感想・評価)
映画好きのための作品
監督の映画愛が爆発したような作品。
見終わった後、何とも言えない違和感があり悶々と考えていましたが、
作中のストーリー性からくる映画観と作品とは無関係な監督の個人的な映画観が入り混じって、2層になっているせいかなと思いました。
作品自体は盛者必衰、スターの転落を描いたものでストーリーの大筋はありきたりですが、演出が素晴らしく、終始熱狂を伴った破茶滅茶感が当時の熱に浮かされた時代背景を想像させます(かなり下品なシーンが多いのが難点ですが...)。特に作中の音楽は素晴らしかったです。冒頭のパーティーシーンからタイトルまでで既に満足感があり(むしろそこがピークとも言える)、中盤2時間くらいでちょっと飽きてしまいましたが、要所要所に印象的なシーンがありそれだけでもこの作品を見る価値があります。
ジャックやネリーのような夢の中で生きる(夢の中でしか生きられない)人の煌めきはとても眩く儚いなと、だからこそのスターなのかなと思いました。終盤のジャックの「それでも進歩は止めてはいけない」というセリフが、自身はその進歩によって取り残されていく一方でそれでも映画制作に対する思いもあり、何とも切なかったです。
こういう人達のおかげで私は映画を通して束の間の夢を見られるのだな、とも思いました。