劇場公開日 2023年2月10日

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「美醜と狂騒のステップと、それを上回る創造性の爆発と。」バビロン 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0美醜と狂騒のステップと、それを上回る創造性の爆発と。

2023年2月25日
PCから投稿

本作はキメラのように幾つもの要素を持つ。一つは美醜の混濁した狂騒劇としてのイメージ。とりわけ冒頭パーティーで高鳴る音楽に乗せて夥しい数の人々がステップを加速させていく描写は圧倒的だ。が、かと言ってチャゼル監督がこの序盤30分のうちに巧く各キャラを印象付けられたかというと疑問が残るし、しつこいほど繰り返されるビザールな描写に(汚物が垂れ流されたり)嫌気が差す人もいるかもしれない。その一方で、本作はハリウッド黄金時代の空気感と、『ジャズ・シンガー』による業界の大激震を刻んだ秀逸な”映画史の教科書”のようなところがあり、時代の裂け目に堕ちていく人々の悲哀とサスペンスと『ラ・ラ・ランド』にも似た悲恋と郷愁をも併せ持つ。正直、長すぎるしまとまりに欠けるものの、ラストの創造性の爆発には驚嘆したし、本作に強く惹かれる自分がいるのも確かだ。少なくとも燃える野心と実験精神を持った怪作であることは間違いない。

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牛津厚信