「刹那的にしか生きられない人々の物語」バビロン Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
刹那的にしか生きられない人々の物語
「汚いラ・ラ・ランド」との前評判を聞いていたのである程度覚悟して見に行った。
一部のエログロ、というかエロゲロ描写は確かにきついものの、それを差し引いてもこの映像美は映画館で観てよかったと思える迫力。そして音楽が良い。
RRRとは別ベクトルで3時間ジェットコースター。刹那的にしか生きられない人々の人生を火花のようなきらめきで魅せてくれる。
-------以下ネタバレ-------
「ラ・ラ・ランド」のラストを見て「恋人と別れただけで結局夢もかなえてるじゃないか、そんな切ない顔してるんじゃないよ」という気持ちだったので、今回の作中でジャックが告げられる、「あなたの時代は終わったが、映画が映写機にかけられれば誰もがあなたを身近に感じる」という言葉の通り「映画の世界で輝けたんだから、たとえのたれ死んでも幸運だろ!」と殴ってくるバビロンのほうが好みだった。
銀幕の世界で一度は生きたいと切望し、それがかなわない人がどれだけいるか。彼らはそれができただけ幸運なのだ、たとえ悲惨な最期を遂げたとしても。
「人生は最高!」とつぶやいて夜道に消えるネリーもそれをよくわかっていた。
映画の前半、人の死が「喜劇的に」軽く扱われるシーンが相次ぐが、結局はネリーやジャックの死も当人以外には喜劇と変わりないのだろうと思う。よく「役者は親の死に目に会えない」とは言われるが、それは映画も同じで、人の死すら二の次に扱ってしまう狂気の世界に彼らは身を置いているのだ。