劇場公開日 2023年2月10日

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「なんでも。」バビロン Shouhei Okuyamaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0なんでも。

2023年2月19日
iPhoneアプリから投稿

酒池肉林。

狂喜乱舞。

栄枯盛衰。

圧巻の189分。

1920年代のハリウッド。サイレントからトーキーへ移り変わっていく映画の歴史の中で栄枯盛衰を現す圧倒的なラプソディ。
きらびやかな映画産業を支える為にたくさんの欲と贄と魂によって成り立っていた。

正しく"なんでも"見せてくれる。

綺麗な魔法の様なセレブの世界からどうしょうもない酒池肉林、汚い闇の穴の更に奥のところまで。ジュディやシーセッドでも業界のセクハラ問題を扱っていたがそれの起源というか源流がまさしくバビロンに通じるもの。

権力と消費。

時代が変わっても普遍的な問題はいつまでも続いていく。そして繋がっている。何かを得るためには何かを犠牲にしなければならない。バビロンというタイトルもエスプリが効いていてかっこいい。このバビロンのストーリーはかなり史実に基づきリサーチをしたとパンフレットインタビューに書いてあり驚いた。ハリウッドの当時の自殺率や、死亡事故。闇に葬ってきたモノ。もちろん脚色や演出も大いに盛り込まれているのだが、細やかなストーリーに実はモデルになった事件があったことなどが書かれていて面白かったし、消化できなかった事が消化できた。

4人の主人公に、4つのストーリーの絡み合い。狂喜乱舞、素晴らしい演技の数々だった。現代版イントレランスとでも言うべきか。イントレランスをまたみたくなった。
ブラッドピット、マーゴットロビーの異なるタイプのスターの人生と行末は目が離せなかったし、ディエゴガルバとジョバンアデポという新しいスターの存在感。そして演技を盛り上げる色とりどりの粋なJAZZ。
IMAXという"最新"の映画環境の体感は五臓六腑に染み渡った。

しかしいろんな方々が挙げていたラストの賛否両論は頷けたなと。
これは好みが分かれる。
最近の作品では映画制作を扱うものが増えてきている。映画に対しての尊敬、畏怖、憧れ、原点を表現する事が多いのはやはりコロナや配信システムから影響があるのか。配信で見るのと映画は別物だけれど、それもまた映画の進化に通じるはず。そういったことも受け止めて、巻き込んでいって映画の栄光はまた新たなスターと新しいステージを追い求めていくし、映画の歴史は続いていく。
その流れを感じられる時代に生まれてきた事を幸運だとバビロンのおかげで思える様になりました。

ただ個人的に欲を言えば違ったラストが見たかったなと思ってしまった。ネタバレになりそうなので詳しく書かないけれどデイミアンチャゼル監督の別のラストがあるともっとすごい作品だったとすんなり受け入れられた気がするのです。それも端っこの奥の奥の方にいるちっぽけな欲深い映画好きの性なのかもしれません。

監督の新しい次回作が更に楽しみになったのは言うまでも無い!!

しょうへい